日本医師会は新型コロナの感染拡大が第8波に入ったとの認識を示した。厚生労働省が新型コロナの飲み薬を緊急承認するなど、新たな動きが続く。BSフジLIVE「プライムニュース」では加藤厚労相を迎え、第8波対策について伺った。

スピード承認された飲み薬 現場での活用には課題も

この記事の画像(13枚)

長野美郷キャスター:
11月22日、厚生労働省の専門部会は塩野義製薬が開発した新型コロナの飲み薬を緊急承認。今回承認されたゾコーバは軽症から中等症の患者が対象で、体内のウイルス量を減らす効能がある。スピード承認に至った決め手は。

加藤勝信 厚労相:
緊急承認制度が作られ第1号の承認となる。従来の2つの飲み薬は重症化因子を持つ方が対象だったが、今回のものはそうでない方にも症状の改善が見られる。治療の選択肢が広がっている。

阿南英明 神奈川県医療危機対策統括官 藤沢市民病院副院長:
実際に現場で使う上では戸惑いがあるのは事実。選択肢が増えたのはいいが、薬が行き渡るために流通などの整備が必要。第7波のときから感染した若い方が外来に殺到しないように取り組んでいるが、薬が欲しければ医療機関に行かなければいけない。だが、日本が薬やワクチンを自ら作る壁を越えていく意味はある。将来新たな疾患が出てきても、自国でしっかり創薬・生産し国民に提供する。国も新しい制度を考えており、今劇的に日本は変わっている。

医療ジャーナリスト 鳥集徹氏:
大量に購入して備蓄している飲み薬の8割程度がまだ残っており、使用期限が到来し廃棄される可能性がある。町の発熱外来ではコロナの薬を使う場面はないと聞く。製薬会社の救済のため買ってあげているんじゃないか。日本には多くの人を集めて臨床試験できる体制がない。日本の製薬をきちんとやるなら、そこにお金をかけないと。

コロナによる致命率の下がった今、「日常医療への落とし込み」を

長野美郷キャスター:
政府の第8波への対応について。新規感染者数の推移を見ると全体的には増えているフェーズ。第8波の特徴をどう捉えるか。

加藤勝信 厚労相:
急激なスピードで増えていくのではと見られていたが、今回は前週比で1.1〜1.2倍のスピードになっている。だが第6波ではBA.1からBA.2に、第7波ではBA.5にと変わってきた。慎重に見ていく必要がある。

加藤勝信 厚労相
加藤勝信 厚労相

反町理キャスター:
ピークアウトの見極めはまだだと。

阿南英明 神奈川県医療危機対策統括官 藤沢市民病院副院長:
ピークアウトしたと思っても、もう一度増える可能性も指摘されており、そこは結果で見るしかない。

反町理キャスター:
神奈川県でも、第8波の山は第7波を超えるかも、という構えをまだ取っている?

阿南英明 神奈川県医療危機対策統括官 藤沢市民病院副院長
阿南英明 神奈川県医療危機対策統括官 藤沢市民病院副院長

阿南英明 神奈川県医療危機対策統括官 藤沢市民病院副院長:
変えてきている。第5波までは若い方の致命率も高かったが、第6波以降致命率は徐々に下がり、第7波でも重症化し命を落とす例は非常に少ない。同じ仕組みでいくのは疑問。日常医療の中に落とし込み、もっと大きな受け皿で受けられるようにという視点を持って神奈川では動いている。

加藤勝信 厚労相:
日常生活をできるだけ戻していただきながら、その中でどう感染を管理していくか。また今大事なのは発熱外来。ここをいかに強化するか。各都道府県にもお願いし、さらにインフルエンザとの同時流行も想定されるので、その体制を敷いていただく。

2類から5類への切り替えは? これからのコロナとの付き合い方

長野美郷キャスター:
政府は11月18日、新型コロナ第8波に向けた対応策を発表。今夏と同程度ならば行動制限はしない。また医療のひっ迫や機能不全が懸念される場合は、都道府県が外出自粛やイベントの延期などを要請する。鳥集さん、どうご覧に。

医療ジャーナリスト 鳥集徹氏:
2021年はコロナ以外の死因も全て含め、日本全体で亡くなった方が143万人と過去最多。今年はこれより7万人多くなるペース。なぜか。高齢者施設でクラスターが発生するとコロナ病床が埋まっていく。高齢者施設でできたリハビリや散歩などもできない。コロナから守っているつもりが弱らせている。本当に日本人が幸せになっているのか。

阿南英明 神奈川県医療危機対策統括官 藤沢市民病院副院長:
コロナに対する仕組みとして隔離を強め、対応する医療機関としない医療機関が二極化してしまった。初期はよかったが、ここを融合させていかなければ。感染していない人と分けることは重要だが、閉じ込めることが正しいのか。日常のサービスは提供し続ける形を模索していかなければ。

加藤勝信 厚労相:
コロナとして扱いながらも、単に感染が消えるまで隔離するのではなく、その後機能を上げていくケアができる病院や施設に入っていただき、しっかり回復してもらう。そういう連携が今は求められている。

阿南英明 神奈川県医療危機対策統括官 藤沢市民病院副院長:
大臣がおっしゃった内容は現実難しい。特に高齢者施設などでは人手が足りない。医療機関も院内のクラスターで職員が感染し苦しむ。どこかで折り合いをつけ許容しなければ。一回、考え方を「本当に感染しちゃいけませんか」まで振らないといけないのでは。努力はするが「1人感染者が出たらもう絶対外に移さない」ではあまりに疲弊してしまう。国民全体としてコロナとの付き合い方をどう模索していくか。大きな課題。

長野美郷キャスター:
コロナの扱いに関連し、感染症法の2類・5類の話。感染力が弱くなったことを踏まえ、感染症法による新型コロナの分類を引き下げるべきという指摘が多くある。新型コロナは現在2類相当で、入院勧告、就業制限、外出の自粛要請、無症状者への適用、医療費は公費負担がある。5類に引き下げれば全て不要となる。

加藤勝信 厚労相:
感染症法については衆議院でも附帯決議がつき、見直しに言及されている。基本的には感染性、重篤性、ウイルスの変異する可能性の3つが項目として挙げられるが、どうなれば移行できるのか。コロナと付き合い方のコンセンサスを作っていくことが必要。議論の入り口として2類・5類の議論はあり得る。

医療ジャーナリスト 鳥集徹氏
医療ジャーナリスト 鳥集徹氏

医療ジャーナリスト 鳥集徹氏:
大阪府の資料では、既にオミクロン株の段階で季節性インフルエンザの致死率よりも下回っているというデータが出ている。ここでやめましょうと言わないと。2021年のデータでは、コロナを死因として亡くなった人は全体の2%しかいない。病床がコロナ患者で埋まり、心筋梗塞や脳梗塞の患者さんを受け入れられない状況は本末転倒。

伸び悩むワクチン接種率 有料化への議論は

長野美郷キャスター:
現在のワクチン接種状況。11月23日時点で、全世代のワクチン接種率は1回目が77.69%、2回目77.21%、3回目66.80%、4回目37.33%、5回目は4.78%。11月24日時点でのオミクロン株対応ワクチンの接種率は14.9%。3回目以降のワクチンの接種率が伸び悩んでいる原因は。

加藤勝信 厚労相:
オミクロン株対応ワクチンの接種数はだんだん増え、1日あたり平日は約50万回、直近の土日で約80万回。特に11月に入ってスピードが上がってきた。メリット等を含めしっかり広報する。来年以降については、今回のワクチンの効果がどのぐらい続くか、特に重症化予防効果を含め議論が必要。

阿南英明 神奈川県医療危機対策統括官 藤沢市民病院副院長:
今回新たに認可されたオミクロン株用のものが入っている2価ワクチンは、世界的なデータを見てもかなり期待できる部分がある。ウイルスが人類に対して最もかみ合うのがオミクロン株なのかも。するとオミクロン株に対する免疫性を獲得することは期待できる部分がある。また抗体の保有期間が長くなっているというデータが出ている。

長野美郷キャスター:
ワクチンの接種は現在すべて国費負担だが、財務省は11月7日、今後は定期接種化を進め有料化を検討すべきという資料を提出。2021年度の国庫負担額は2兆3396億円、接種単価は約9600円。厚労省としての考えは。

加藤勝信 厚生労働大臣:
緊急の必要性として重篤性と感染力を考慮した判断が、現段階の全額国費負担。2類・5類の部分が変わっていけばそれに応じた対応となっていく。今、季節性インフルエンザのワクチンについても高齢者の方には自治体ごとに値段は異なるが補助している。そうしたことの議論も必要だが、今はそこまで至っていない。

欧米では外されるマスク メリハリをつけた使用を

長野美郷キャスター:
自民党の萩生田光一政調会長の講演での発言。「国際会議でマスクをしているのは日本人だけ。科学的知見に基づきコロナとの対峙の仕方を考えなければ」。

医療ジャーナリスト 鳥集徹氏:
世の中の基準が、コロナが怖い人に合わせたものになっている。社会全体をそこに合わせるのが果たして健全か。ヨーロッパやアメリカでは、健全な人間の生活を取り戻そうとしている。接触するって、人間にとって大事。

阿南英明 神奈川県医療危機対策統括官 藤沢市民病院副院長:
メリハリをつけたマスク使用が必要。冬はインフルエンザ対策としても有効なので、密な環境や室内ではつけたらよい。これから求められるのは個別性。ワクチンでも打つ・打たないという選択肢は出てくる。診療でもセルフチェックを入れている。

加藤勝信 厚生労働大臣:
必要に応じて。外では基本的にマスクを外して、と申し上げている。メリハリが大事。この3年でいろんなことを我々は勉強し、コロナ自体も変わってきた。治療に対する考え方も。流れを受け止めながら対策を打っていくことが求められる。

(BSフジLIVE「プライムニュース」11月24日放送)