北九州市で客引き禁止条例―。福岡県内で初めて飲食店に対する罰則付きの条例ができたのだが、それはなぜなのか。現状を取材した。

北九州市で全面施行へ…客引き行為に街の声は

11月11日、夜。北九州市の小倉駅近くを歩いていると…。

客引き:
1軒目、どうですか?

すれ違いざまに、声をかけてくる男性がいた。

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客引き:
おいしいっすよ。きょう何軒、行かれる予定ですか?

飲食店などに客を呼び込む「客引き」だ。

客引き:
お願いします。マジお願いします

断っても断っても、つきまとって来る。北九州市民は、こうした客引き行為をどう思っているのか?

60代女性:
(このあたりは)シーズンによっては、立っている人が多い

30代女性:
わーっと来られたら怖いです、勢いが。走って逃げるしかない

60代男性:
声かけだけじゃなくて、手を引っ張られるときもある

60代男性:
(客引きが)続くと、よくないイメージを持たれますよね、外から来られた人とかですね。そういう目に遭うと、この街は(強引な客引きが多い)というイメージを持つ

違反者には過料5万円 悪質な場合は店名公表も

客引きに対する苦情が相次いでいる北九州市では、12月16日から、罰則を盛り込んだ客引き行為を禁止する条例が全面施行される。客引きの禁止エリアは、小倉駅南側の繁華街の一部だ。

客引きの禁止は、これまで風俗店などを対象にした福岡県の迷惑行為防止条例などがあるが、飲食店も含む全ての客引き行為を禁じるのは、福岡県では北九州市の条例が初めてだ。違反者には5万円の過料が科せられるほか、悪質な場合は店名も公表される。

この条例の周知期間として、10月からは小倉駅周辺で市の職員たちによるパトロール活動が続いていた。

条例の全面施行まであと1カ月。記者が小倉駅周辺を歩いてみると…。

客引き:
決まってますか? お兄さん

記者:
すみません

客引き:
いくらだったら来てくれますか? 下げれるだけ、下げます

記者は何度も誘いを断るが…。

記者:
いったん探します。いったん大丈夫です

客引き:
ガチ、お願いします

記者:
申し訳ないです

客引き:
ワンチャンス! ワンチャンス!

“うまみのある”客引きの現状 専門で働く人も

条例の周知期間になっているにも関わらず、小倉駅前付近で客引きが減る様子は、一向になかった。
客引きが減らない理由はなぜなのか。関係者は、新型コロナの影響を受け、売り上げが回復しない店側も、客引きに頼らざるを得ない事情があると話す。

一方、店側だけでなく、客引きをする側も、やめるにやめられない事情がある。客引きの男性に話を聞いた。

客引き男性:
(禁止になるのは)知ってます

ーー空気感としてはどんな感じ?

客引き男性:
続けるって言ってましたね。警察が来たら止めるみたいな

この男性は、飲食店内での仕事と客引きを兼任し、時給のアルバイトとして働いてるが、客引き専門で働く友人も多いと話す。

客引き男性:
多い時は、10万円くらいいく時があると聞きました

ーー1日で?

客引き男性:
そうですね

小倉駅周辺の客引き数人に話を聞くと、自分が呼び込んだ客で、店が得た売り上げの15%~20%が、給料として支払われる仕組みだという。多い時は、1日で収入が20万円にもなるそうだ。

しかし、条例が本格施行すれば、5万円の過料が科せられる。この罰則について客引きの男性は次のように話す。

客引き男性:
(過料じゃ)やめないと思いますね

ーー悪質なのだけ残る?

客引き男性:
残ると思います

罰金を支払っても、なお収入の方が多いという客引きの現状。

また、客引きは学生などの若者が多く、コロナでアルバイトなどの収入が減る中、短時間で高収入が得られるため、やめる人は少ないという。

こうした中で、北九州市が5万円の過料よりも、効果があるのではないかと見ている、もう1つの罰則規定がある。それが、悪質な客引きの氏名や住所などの公表だ。これは客引きをさせた店側も、客引きをした本人も対象となる。店舗名、氏名はもちろん、住所も細かいところまで公表される。

北九州市に聞くと「多くの客引きが大学生や専門学校生で、氏名などが公表されると、就職活動に影響が出るという怖さがあるのでは」と話していた。

悪質な客引きは、福岡市などでも問題視されている。罰則付きの条例が撲滅につながるのか。県内で初めての取り組みが注目される。

(テレビ西日本)

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