自らの実名を出して実の父親から受けた性的暴行の被害を訴える福山里帆さん。21日、里帆さんも出廷する中、被告である父親の控訴審判決が下され、名古屋高等裁判所金沢支部は一審の懲役8年の判決を支持しました。

判決後、福山里帆さんと、彼女を支え続けた夫の佳樹さん、そして代理人が会見に臨みました。被告である父親が「改悛の情が深まった」と主張した控訴審。しかし、裁判所はそれを「不合理な弁解」と一蹴しました。

「安心しました」。判決を聞いた直後の里帆さんには安堵の様子が見えたものの、ここに至るまでには壮絶な道のりがあり、夫婦は「地獄の3年」と表現しました。
「不合理な弁解に終始し、改悛の情は見られない」
会見の冒頭、代理人は控訴審判決の内容について説明しました。

被告である父親は控訴審で、被害者である里帆さんが抵抗できない状態だったとは認識していなかったという「事実誤認」と、仮に有罪だとしても懲役8年は重すぎるという「量刑不当」の2点を主張していました。
特に、学生時代に生活費として仕送りしていた金銭を「被害弁済」だと主張した点について、裁判所は「生活費であって被害弁済ではない」と一蹴。さらに、控訴趣意書の冒頭で「改悛の情が深まった」と被告が述べていながら、その主張内容は「不合理な弁解」と指摘し、「改悛の情は見られない」と断罪しました。
結果として、被告の控訴は棄却され、一審の懲役8年の判決が支持されました。
判決が下された21日、被告本人は出廷しませんでした。そのことを直前に知らされた里帆さんは、「安心して臨むことができた」といい、被害者と加害者の間に設けられる予定だった遮蔽措置もなく、里帆さんは落ち着いて判決を聞くことができたといいます。
「まだ自分の中にこれだけ怒る気持ちがあるんだなって驚いた」
判決を受けて、里帆さんはまず「前回と同じように安心しております」と、率直な気持ちを口にしました。

「控訴趣意書を読んで非常に憤りを感じていたんですが、それを裁判所側で全面的に相手方の言っていることを否定して、私の言っていたことを前回と同じように認めてくださったことで、より安心してこの場にいることができます」
一審判決後、ようやく穏やかな日々を取り戻しつつあった里帆さん。しかし、父親が控訴したという事実は、再び彼女の心を深く傷つけたといいます。とりわけ、送られてきた控訴趣意書の内容は、筆舌に尽くしがたいものだったといいます。
「『改悛の情』という一文から始まるんですが、まったく意味が分からないと思いながら読み始めました。私の中で反省しているのであれば、そもそも控訴しないんじゃないかなと。まったく届いていないんじゃないかと思いました」
さらに、生活費として受け取っていたお金を「被害弁済を終えたから」と言われたことに対し、どんどん憤りを感じたと語ります。
「それまではもう父に対して怒り尽くして、自分の中で少し感情が空っぽになっているんじゃないかなと思ってたんですけど、まだ自分の中にこれだけ怒る気持ちがあるんだなって驚いたくらいには怒って。涙しながら怒りながらその日は(控訴趣意書を)読んでいました」
「私たちの新婚生活は地獄の3年でした」
里帆さんを隣で支え続けた夫の佳樹さんは、この裁判の道のりを「地獄であった」と振り返ります。

「控訴趣意書が届いてですね、彼女が泣くんですよね。親として本来、扶養で送金されたはずのものが、被害弁済だと。こんな話をされると、彼女からすると必死で自分のキャリアを作って、仕送りを受けたものすら、自分の身を守るための保身として利用されるのかと」
「被害を受けた時点で父親を失ってるようなもんですけれども、また今回の控訴趣意書を受けて、扶養の意思すらなかったのかと。こういうふうな形で父親を失うというのは、何度も父親を失うようなもんですから」
証拠が何もない状態から始まった、刑事告訴への道。それは、夫婦にとって想像を絶する困難の連続でした。

「彼女が家族をすべて失う覚悟を持たなければならない。本当に行く場所も、帰る家も、頼れる人も、何もないという未来を受け入れるということに、私とともにどちらもがその覚悟を持たなければならなかった」
佳樹さん自身も、義理の父親を刑事告訴することへの葛藤や、「犯罪者の家族」となることへの覚悟を迫られました。心身ともに極限の状態に置かれたことで、夫婦の関係が揺らぐことも一度や二度ではなかったといいます。
「本来であれば新婚生活で楽しい時間を過ごせるはずですけども、私たちの新婚生活は地獄の3年でした。いまだに新婚旅行に連れて行ってやれてません」
「裁判をして良かったと心の底から思います」
それでも、里帆さんは「私は裁判をして良かったと思っています」と、きっぱりと言い切ります。

一審判決が出た後、少しずつ心に余裕が生まれ、未来について前向きに考えられるようになったといい、「少し温かい家庭になったかなと思います」と話しました。
「自分でなかなか過去のことと決別するっていうのは非常に難しくて。第三者、特に公的機関に認められるっていうのはとても自分の中で大きかったなと思います。自分の問題が過去のことになって、あれは誰が見ても悪いことだったと。そのように自分の体が理解して未来に向けて生活を考えていくことができる。これが裁判の大きな利点だと私は思いました」
だからこそ、裁判を望む人が、その道を選べる社会であってほしい。里帆さんは、自らの経験を踏まえ、社会全体のサポートの必要性を訴えます。
そして、今後の活動として、自らの経験を本にしたいという考えを明かしました。
「今被害に遭っている子ども、さらにはもう被害は終わっているけれど今苦しんでいる、同じように性被害に遭われた方、家庭内性被害に遭われた方に向けて何かできないかって考えたときに、本を書きたいなと思って今そのように考えています」
「頼むから私の尊厳や心を乱さないでほしい」

会見で記者から父親に対する現在の思いを問われた里帆さんは、次のように語り始めました。
「反省はしていないと私は感じています。反省をしたのであれば、自分が8年間そこに入って何が悪かったのかよく考えてほしいなと思います。もう私は2度と会うことはありません」
そして、こう続けました。
「私はもう父にできうる限りの子どもとして親への愛情を注いだと思います。あげすぎた分、私は枯渇するくらい父や母に対して我慢という形で、本来子どもとしてしなくていい責任を負ってきたと思っています」
「次は親としての背中を、これ以上親として失望させないでほしい。1人の大人として少しでも尊敬できる大人であってほしいと心の底からそれだけは願います」

最後に絞り出したのは、切実な願いでした。
「頼むから私の尊厳や心を乱さないでほしい。夫を侮辱したりして私の気持ちを逆なでしないでほしいと思っています」
(富山テレビ放送)
