2014年に新潟・新発田市で、当時20歳の女性を殺害した罪などで起訴されている喜納尚吾被告。その初公判が10月17日、新潟地方裁判所で開かれた。
別の事件で無期懲役の判決が確定している喜納被告。今回の事件は「全く身に覚えがない」と、起訴内容を否認した。裁判のポイントをまとめた。
事件発生から6年後に喜納被告を逮捕･起訴
8年以上が経った今も花が手向けられている、新発田市の事件現場。
2014年4月、ここで一部白骨化した当時20歳の女性の遺体が見つかった。遺体が見つかる3カ月前に行方不明になっていた女性。
事件発生から6年が経った2020年2月。警察は別の事件で無期懲役の判決が確定していた喜納尚吾受刑者を、殺人･強制わいせつ致傷などの罪で逮捕･起訴した。
大竹保和 刑事部長（当時）：
困難な事件だったと思う。ただ、そうした中で捜査に携わった多くの捜査員が緻密に捜査を重ねてきて、その結果6年かかった
起訴状によると、喜納被告は2014年1月、通勤中の被害者の女性が運転する車に乗り込んで連れ去り、わいせつな行為をしたうえで殺害した罪に問われている。
殺害現場を目撃した人はおらず、直接証拠がなかったため、逮捕まで6年がかかった今回の事件。
初公判で起訴内容を否認「全く身に覚えがありません」
10月17日に新潟地裁で開かれた初公判。グレーの作業服に身をまとい、うつむきながら入廷した喜納尚吾被告（39）。証言台に立った喜納被告は裁判長から起訴内容について問われると…
喜納尚吾 被告：
全く身に覚えがありません
喜納被告は起訴内容を全面的に否認した。
この裁判で争われるのは、そもそも女性が何者かに殺害されたのかの事件性と、喜納被告の犯行なのかという犯人性だ。
検察：
何者かに拉致され、わいせつな行為をされ、殺害された。事故でも自殺でもない
冒頭陳述で検察側は、事故や自殺の可能性を否定。また、犯人性についても喜納被告の行動歴などから「被告人が犯人と考えている」と主張した。防犯カメラや自白などの直接証拠がないため、状況証拠を重ね、立証する考えを示した。
それに対し、弁護側は…
弁護側：
きょう分かっていることは、ほとんど何もない
明らかになっているのは、被害者の車と遺体が見つかったことだけだと主張。被害者は元交際相手との関係に悩み、自殺した可能性も捨てきれないと指摘した。
検察側が示す被害者が死亡した経緯などについては「推測や想像に過ぎない」と、検察側と全面的に争う姿勢を示した。
終始うつむきながら検察・弁護側の冒頭陳述を聞いていた喜納被告。
喜納被告の犯行は立証されるのか… 専門家「非常に難しい事件」
堀田伸吾 弁護士：
今回の起訴内容･公訴事実だが、犯行の場所や暴行の態様方法。こういった部分が、かなり曖昧な形で特定されていない部分が何カ所か見受けられる
こう話すのは、刑事裁判に詳しい堀田伸吾弁護士。起訴状に殺害場所や方法について明記されていない点が、今回の事件の立証の難しさを物語っていると話す。
堀田伸吾 弁護士：
事件発生から相当な時間が経過している中での起訴となるので、検察側に被告人の有罪を証明するだけの確たる証拠があるのかどうか。ここがもし、確たる証拠が無い中で様々な事実を積み上げてというふうになってくると、なかなか立証が厳しい部分があるのかもしれない
直接証拠がない中で、喜納被告の犯行をどう立証するのか。仮に殺人罪が認められた場合…
堀田伸吾 弁護士：
裁判員としては、また無期懲役なのか、死刑なのか含めての判断になってくる。非常に難しい事件になってくる可能性がある
一方で…
堀田伸吾 弁護士：
被告人の争い方によっては、無罪の判断が出る可能性があるかなと思う
別の事件で無期懲役が確定…今回の裁判への影響は？
喜納被告は強姦致死罪など別の事件で、すでに無期懲役判決が確定している。今回の裁判では、この無期懲役判決がどう影響してくるのか。堀田弁護士は…
堀田伸吾 弁護士：
被告人を二重に処罰することはできないため、それぞれの事件は別で考える必要がある
そのうえで、「情状の部分で、前回の事件が考慮される可能性がある」と話す。
そもそも今回の事件は事件だったのか。そして、喜納被告が犯人なのか。仮に喜納被告の犯行だった時に、量刑はどうなるのか…
14回にわたって行われる裁判。裁判員にとっては負担が大きく、判断が難しい裁判となりそうだ。
（NST新潟総合テレビ）
