コロナ禍の影響もあり、ここ数年のアウトドアブーム。中でも人気急上昇中なのが燻製料理。
「冷燻」ってなんだ?
今回、注目するのは調理温度が30℃程度で食材を長時間かけて燻らしていく「冷燻」。スモークサーモンなどは代表的な「冷燻」です。
熱による食材への影響を抑えられるため、アイスクリームやバターなど熱に弱い食材も燻製することができるといいます。
How to本などによく掲載され私たちにも身近な手法は、調理温度が70℃程度のいわゆる「温燻」。多くの人は燻製=温燻というイメージなのではないでしょうか?
そこで、一般社団法人日本冷燻協会の輿水治比古代表理事に冷燻の魅力と可能性を聞きました。

輿水治比古代表理事:
そもそも燻製とは、冷蔵庫などがない時代に食料を保存するための先人たちの知恵で生まれた保存法です。
風で干す、塩で漬け込む、そして煙で燻すなどの方法が使われていました。
その中でも冷燻はアラスカや北欧など寒さが厳しい地方で生まれました。外気が低いこともあり燻製すると自然に「冷燻」となっていたのです。

――冷燻の特徴は?
輿水治比古代表理事:
煙は物が不完全燃焼して発生するもので、熱が生じます。「冷燻」は煙の温度を上げずに長時間燻す手法です。
燻らすことで、初めて殺菌効果や素材のうまみを引き出すといった本来の燻製ならではのメリットが生まれます。

さらに特徴的なのは、醤油やオリーブオイルなどの液体の他、塩やこしょう、胡麻などの調味料も味や効果、役割を損なうことなく燻製することが可能だということです。
それにも増して素材の持つうま味を引き出すことができるという素晴らしい効果も期待できます。

うま味が増すという特徴で考えると、日本の食文化では鰹節が顕著な例です。
鰹節は日本では基本材料として大きな位置にありますよね?実は鰹節は日本の代表的な燻製品なのです。
――今後の「冷燻」の可能性は?
輿水治比古代表理事:
「冷燻」は他の燻製方法に比べると、少々、面倒かもしれません。しかし、限りない可能性を秘めています。
これまでの燻製はそれ自体を食して、おいしさを感じたり、燻製することを楽しんだりすることが大半の目的と楽しみ方だったのではないでしょうか?
「冷燻」は先ほどのお話ししたとおり、調味料のうま味を引き出すために燻製することも可能なのです。

「冷燻」した調味料を使用して各分野の料理人がさらなる食材と組み合わせ、新たな料理を生み出すといった大きな可能性を秘めた調理法のひとつだといえるのではないでしょうか?

取材を終えて…
秋本番。自慢の燻製の一品で、家族や仲間の「美味しい笑顔」に囲まれている皆さん。今シーズンは直接的な燻製ともう一品、燻製した調味料などを作って、「うん?何これ?美味しい!」と言われるような、これまでよりも少しだけ、燻製の世界の奥に足を踏み入れてみてはいかがでしょうか?
「食欲の秋」をお楽しみください。
【執筆:フジテレビ 解説委員 小泉陽一】