1923年9月1日に発生した関東大震災からまもなく100年。

死者行方不明者は10万人以上にものぼり、中央防災会議の資料では、今後30年以内に首都直下型大規模地震が発生する確率は70%。震源域が都心南部でマグニチュード7.3の場合の被害想定は、死者およそ2万3000人(阪神・淡路大地震の3.5倍)、家屋の倒壊や焼失がおよそ61万棟(阪神・淡路大地震の5.5倍)、帰宅困難者は東京都市圏でおよそ800万人にも上ると試算されています。

防災機能を高めた公園を「防災公園」と呼んでいる
防災機能を高めた公園を「防災公園」と呼んでいる
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身近にある公園。公園は様々な使い方ができるスペースです。地震のような災害が発生した場合、公園は発災直後の避難場所になったり、救助などの拠点となったりもします。その中でも、防災機能を高めた公園を「防災公園」と呼んでいます。

どのような設備が設置されているのか実際に歩いてみました。

防災公園の設備

・首都直下地震では都区部で5割が断水、1割が下水道使用不可

停電になった場合に備え大型発電機が準備されているのは勿論、公園内にはソーラーパネルと蓄電池を備えた非常用公園灯が設置されています。

また断水で水洗トイレが使用できない場合や建物内の下水管が被害を受けた時に備え、公園内にマンホール型の防災トイレを多数設置しています。

公園に設置されているマンホール型の防災トイレ
公園に設置されているマンホール型の防災トイレ

防災トイレはマンホールの蓋を開けると汚水菅や耐震構造の便槽に直結していて、マンホールの上に便座と目隠し用のテントを設置するだけで使用することが可能です。揚水ポンプで汲みあげた水で使用後の汚物を流すこともでき衛生的です。

マンホールの上に便座と目隠し用のテントを設置するだけで使用できる
マンホールの上に便座と目隠し用のテントを設置するだけで使用できる

・ガスや電気が止まったら?

ガスや電気が止まった際に避難者が煮炊きすることができる施設として準備されているのが「かまどベンチ」です。

普段はベンチとして利用できる「かまどベンチ」
普段はベンチとして利用できる「かまどベンチ」

公園の樹木の枝を使ったりすれば、お湯を沸かしたりすることができ、食事や医療用の消毒するためのお湯なども沸かすことができます。

普段はベンチとして利用し、災害時には座る部分を外すと「かまど」として使用できます。

座る部分を外すと「かまど」に(東京都防災公園総合ハンドブックより)
座る部分を外すと「かまど」に(東京都防災公園総合ハンドブックより)

・公園の樹木の種類にも理由が

火災の火の粉や熱風から住民を守り延焼を防止するため、公園の周囲や園内にはシイノキやツバキなど水分を含んだ防火力の高い常緑広葉樹が防火樹として植えられています。

延焼を防止するため、水分を含んだ防火力の高い常緑広葉樹が植えられている
延焼を防止するため、水分を含んだ防火力の高い常緑広葉樹が植えられている

都内の街路樹にイチョウが多いのもこれが理由の1つとなっているのです。

救助の活動拠点にも

平成7年におきた阪神・淡路大震災以降、災害により大きな被害を受けた地域には、全国から自衛隊や警察、消防、医療関係の支援部隊が集結し活動にあたる広域的な体制ができています。防災公園はその活動拠点にもなっています。

公園の入り口は大型車両も通行できるように広い間口になっています。

災害復旧用の大型車両が通行できよう幅広の出入り口
災害復旧用の大型車両が通行できよう幅広の出入り口

この他にも陸上の交通手段が寸断された場合、救助活動や、消火作業、物資の輸送などに欠かせない、大型ヘリコプターが発着できるスペースなどが準備されています。

震災など大規模災害はいつ起きるか誰も分かりません。日頃から近くの防災公園の場所を確認したり、家族や知人らと安否確認の方法などを決めておくことも重要です。

日々の備えが災害から身を守るために重要で、避難所での生活を少しでも向上してくれるかもしれません。災害リスクを正しく認識し、手遅れになる前に、9月1日の「防災の日」を前に、今こそ、「減災」への取り組みを真剣に考え実行してみてはいかがでしょうか。

【執筆:フジテレビ 解説委員 小泉陽一】

小泉陽一
小泉陽一

フジテレビジョン解説委員・危機管理 1991年フジテレビジョン入社。アナウンス室、ニュースキャスター、社会部、経済部、報道番組ディレクター、NY支局、パリ支局長、秘書室、WE編集長を経て現職。メディアリテラシーや時事問題を学生や地域の人々と共に考えるのが最近のライフワーク。