コロナ禍で、自宅で過ごす時間が増え、ペット人気が高まったとも言われている。飼い始めたという人は、職場に出勤する際、ペットと離れるのが「つらい」と感じているのではないだろうか。
こうした中で富士通は7月11日、神奈川県川崎市にあるオフィス「Fujitsu Uvance Kawasaki Tower」の25階に、犬と一緒に勤務できる部屋「Dog Office」を設置した。
「個室」3部屋(各20平方メートル)と、ドッグランとして利用できる「共用スペース」(30平方メートル)を備える。一緒に勤務できるのは小型犬のみで、利用は事前予約制だ。
コロナ禍で、富士通の出社率は今、約2割だという。テレワークが基本となる中、出社が前提となる「Dog Office」を設置した理由は何なのか? また、この部屋を利用した社員からは、どのような声が届いているのか?
富士通の担当者に話を聞いた。
社員が出社したくなるような施策も進めている
――富士通は現在、基本的には出社、それともテレワーク?
テレワークとオフィスでのリアルなコミュニケーションの効果的な活用を組み合わせた「Hybrid Work(ハイブリッドワーク)」を目指しています。出社率は時期にもよりますが、約2割くらいです。
――テレワークが基本という状況の中、出社が前提となる「Dog Office」を設置した理由は?
「Hybrid Work」を目指しているため、テレワークだけではなく、社員が出社したくなるように、オフィスで様々な体験を提供する施策を進めています。
愛犬と一緒に通勤して働くことも、新しい経験の一つとして捉えているため、設置いたしました。愛犬と自宅とは違う環境で過ごすことで、癒されたり、愛犬をきっかけに社員間のコミュニケーションが活性化されたりすることを期待しています。
床は犬の足に負担の少ない仕様に
――一緒に勤務できるのは小型犬のみとのこと。この理由は?
今回は、トライアルとして「Fujitsu Uvance Kawasaki Tower」で実施しており、ビルのオーナーとの話し合いの結果、決まりました。今後、効果が実証されれば、状況を見て、他の事業所に展開する予定です。自社ビルに展開する際には、小型犬だけではなく、大型犬や他の動物についても検討します。
―――犬が快適に過ごせるように、どのような工夫がされている?
囲まれた場所が好きな犬が多いので、各部屋の中にもケージを用意しており、床も犬の足に負担の少ない仕様になっています。それ以外にも、フリーのドッグフード、ペットシート、リードなど、手ぶらで来ても、快適に過ごせるようになっています。
また、ドッググッズの販売やドッグカフェの運営を手がけ「DOG DEPT」というブランドを展開している会社に、ドッグファースト(=犬が最優先)のレイアウトやデザインを監修いただいています。
――犬が苦手な社員に対する配慮もされている?
飼い主と愛犬が個室の中で過ごすので、犬が意図しない人と接することはありません。また、犬が動ける場所も限定し、アレルギーのある人にも配慮しています。
――事前予約制で利用者は1日3人までとのことだが、このような制限を設けた理由は?
個室対応なので、スペースの関係で1日の利用人数を決めています。
「犬と一緒にミーティングをしたら、すごく和んだ」
――この部屋を利用した社員の感想は?
以下のようなポジティブなコメントいただいています。
・愛犬と家とは違う環境で過ごせて、新鮮で仕事もはかどった
・隣の部屋は知らない人だったが、すごく仲良くなった
・犬と一緒にミーティングをしたら、すごく和んだ
・上司が愛犬をかわいがる姿が新鮮で、新たな魅力を見つけた気がする
――就業時間中に犬の散歩に行く人もいる?
利用者全員の状況を把握していませんが、出社前か、お昼休みに散歩をするケースが多いです。
――仕事に良い影響をもたらしていると感じている?
利用者のアンケートでは、ほぼ全員が「良い影響があった」と回答しています。
――新たなコミュニケーションが生まれていると感じている?
新たなコミュニケーションが生まれていると感じております。
――「Dog Office」を今後、増やしていく?
効果が実証されれば、増やしていく予定です。
テレワークから出社再開へと転じる企業が出てきた今、企業側に求められるのが「社員が出社したくなる工夫」だ。富士通の「Dog Office」のように、自宅と同じような環境で仕事ができる空間を設置する動きが、今後、広がっていくのかもしれない。