愛媛の高校生が養殖した立派なマダイ。大切に育てたマダイを無駄にせず、おいしく食べてもらい“タイ”。そんな思いで、高校生たちが新たな缶詰レシピの開発に挑戦した。
売り物にならないタイをおいしく調理
愛媛県立宇和島水産高校。漁業について専門的に学ぶ愛媛唯一の水産高校で、このうち「水産増殖科」では、実習でマダイやヒラメなどを卵からふ化させて、水槽で陸上養殖する。

養殖されたマダイは文化祭などで販売されるが、実はこの2割が、傷ついたり変形したりして売り物にならないという。

せっかく育てたマダイをおいしく食べてほしい。水産加工について学ぶ、水産食品科の3年生・石丸陽菜さんと増田愛来さんが立ち上がった。

宇和島水産高・石丸陽菜さん:
マダイを全部使ってもおいしくなる料理って考えたら、カレーかなって
宇和島水産高校では、これまでにも双海町産のハモを使って簡単にハモ飯を作ることができる缶詰や、愛媛県内で多く捕れる小型のサバを有効活用しようと、大手回転ずしチェーンとコラボしたサバ缶などを開発してきた実績がある。
素材を余すところなく活用…カレーの缶詰に
2人は、タイの身をふんだんに使ったキーマカレーの缶詰開発に挑んだ。その名も「鯛スパキーマカレー」。

宇和島水産高・石丸陽菜さん:
(マダイは)ほぼ全部使ってます。タイの身と「酒盗」っていう内臓を使ったやつと、だしでタイのあら。骨とか頭が、この中に入ってます。9割ぐらいは使ってると思います

(Q.こんなに使うのは?)
宇和島水産高・石丸陽菜さん:
珍しいと思います
ミンチ状にした切り身だけでなく、骨や内臓までタイを余すところなく活用する。

独自に配合した9種類のスパイスを使うなど、香りやスパイシーさにもこだわった。
まずは、あめ色になるまで丁寧にタマネギを炒めたあと、ニンニクやミンチ状にしたタイを加え、さらに炒める。そこにトマトやだしなどを加え、次はひたすら煮込み続ける。

宇和島水産高・増田愛来さん:
きょうは量が多いので、時間がいつもよりかかってます
(Q.どれぐらいかかる?)
宇和島水産高・増田愛来さん:
缶詰15缶分くらい。熱いです

調理開始から2時間、仕上げにオリジナルのスパイスを入れて完成だ。
宇和島水産高・増田愛来さん:
(普段はスパイスを)途中途中入れていくんですけど、きょうは缶詰なので、最後に全部入れました。缶詰って、高温で加熱殺菌するんですけど、スパイスの香りが飛ばないように最後に入れています

普段の料理と違う、缶詰作り特有の技だ。
宇和島水産高校特製の「鯛スパキーマカレー」。その気になる出来栄えは…

宇和島水産高・石丸陽菜さん:
タイの味もしっかりして、おいしいです
宇和島水産高・増田愛来さん:
(スパイスも)辛すぎず、ちょっと辛いみたいな感じでおいしいです

カレーは校内の工場に運び、缶詰に加工する。生徒たちの思いがこもった缶詰の完成だ。
国際的な見本市に出展 プロの反応も上々
8月24日から東京ビックサイトで行われた「ジャパン・インターナショナル・シーフードショー」。日本を代表する水産見本市に、宇和島水産高校もブースを出展した。生徒たちが丹精込めて開発した、あの缶詰が並ぶ。

ブースを訪れた人:
どのくらいに売れるようになるんですか
宇和島水産高校のブースには、全国の水産関係者が次々と訪れ、商品化に興味津々だった。

ブースを訪れた人:
素晴らしいなと思いました。育てているお魚を無駄なく、捨ててしまわずに、何かに使える。しかも、市場に出してお金になる。SDGsにもつながりますよね。しかもおいしいもの。高校生が作るのは素晴らしいなと思います

ブースを訪れた人:
商品としても非常に面白いもので、いいと思います。いろんな味のバリエーションを増やしていただければ、もっと商品として広がるんじゃないかと思うので
プロの水産関係者の反応も上々。今後、商品化を進め、2022年11月の販売を目指している。
宇和島水産高・石丸陽菜さん:
生産者の方の思いとか、マダイのおいしさをたくさんの人に知ってもらえたらいいなって思っています

宇和島水産高・増田愛来さん:
自分らで最初から考えて作るっていうのを、後輩の子たちもやってもらいたい。やって、魚のおいしさを知ってもらえたらなって思います
(テレビ愛媛)