新型コロナの「全数把握見直し」。当初は都道府県の判断とされたが一転、岸田首相は9月6日、26日から全国一律で見直す考えを明らかにした。
現場はこの「全数把握見直し」をどう捉えているのか?

感染者が連日1000人超の金沢市 保健所が考えるメリット・デメリット

対応に追われる金沢市保健所
対応に追われる金沢市保健所
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連日、1000人を超える感染者が確認されている金沢市(2022年8月26日時点)。対応に追われる金沢市保健所は、今回の政府の方針をどう受け止めているのか。越田理恵(こしだ・りえ)所長に聞いた。

金沢市保健所・越田理恵 所長:
保健所としても業務の負担が軽くなるので、いいことだと思っている

金沢市保健所は、届いた発生届の個人情報をもとに電話連絡をしていたが、当日中に連絡できないことも多かったという。もし全数把握が見直されれば、高齢者など重症化リスクが高い人だけに限定されるため、医療機関や保健所の負担は軽くなる。

その一方で、こんな不安も…。

金沢市保健所・越田理恵 所長:
当初は心配ないだろうと思っておられた方が、自宅療養している間とか、施設にいらっしゃる間に具合が悪くなったとき、我々が相談窓口としてきちんと対応する必要があるかと

全数把握されなければ、クラスターが見過ごされたり、自宅療養者が重症化しても気づかれなかったりする心配もある。
そのため金沢市保健所は、万が一症状が重くなった時にも、医療機関が対応できる体制を整える重要性を訴えている。

診察・検査・連絡・入力… 深夜まで追われるクリニックは?

一方で、新型コロナの患者を診察する地域のクリニックはどう思っているのか。
訪ねたのは、金沢市の小川医院。

午後9時半ごろ。診察終了から4時間たっても、事務所には明かりが煌々とついていた。

小川医院・小川滋彦 院長:
PCRの結果が出たんですけど、陽性でした。コロナ出ました

この時間から、陽性とわかった患者に検査結果を伝えるのが、小川院長の日課だ。午後9時過ぎにならないと、検査を委託している会社から結果が届かないためだ。

小川医院・小川滋彦 院長:
ちゃんと電話出てくれればいいんですけど、普通はこんな夜遅くに電話出てくれませんから…。時々、「バカヤロー」とか言われますけど…。
もしもし、もしもし…、あ、留守電か

この日は、午前の検査で陽性だった10人に連絡した。

その後、国の感染者管理システム「HER-SYS(ハーシス)」へ情報を入力する。

しかし、この入力作業の煩雑さが、今、問題となっている。

お盆の8月15日に診察していた小川医院には患者が殺到
お盆の8月15日に診察していた小川医院には患者が殺到

8月15日、お盆の真っただ中にも診察を行っていた小川医院。患者が殺到し、ハーシスへの情報入力が間に合わない状態になっていた。

小川医院 スタッフ:
入力しなきゃいけないものが、まだまだあります。院長が明け方ぐらいまで入れて、いま、私が補助で入れているんですけど、全然間に合わないです

診療とは別に発生するこの事務作業が、地域の小さな医療機関にとって、大きな負担となっていた。

全数把握が見直されると、この作業が減ることになる。小川院長にとっても歓迎されるかと思いきや、院長は、こんな心配を口にした。

小川医院・小川滋彦 院長:
HER-SYSのショートメールで「何日から何日までが療養期間です」と来るんです。それが証拠になるので、職場に診断書を出さなくていいんです。
でも、今度もしショートメールが行かなくなったら、今度は「診断書を全部書いてくれ」という作業になってくると思うんです

新たな作業が発生すると考えられ、負担の軽減にはつながらないというのだ。

午後11時すぎ…

小川医院・小川滋彦 院長:
いま、FAXが入ってきました。何だろう…、今頃?あ!検査データだ

届いたのは、検査会社からの結果を知らせるFAXだった。

小川医院・小川滋彦 院長:
この患者さん、腎臓が悪いかと思ったけど、そうでもなかった。良かった…。
検査センターも、この時間まで仕事しているんですよね。
見ず知らずの人が困って飛び込んで来て、何とかしてあげたいって。「医者の原点」を思い出して、やりがいを感じています。大変だけど

最後の入力を終えると、時刻は午後11時半になっていた。

小川医院・小川滋彦 院長:
はい。きょうの分は終わりました!
いつもより早いやん。早い早い

24時間走り続ける医療現場。日本の医療を支えているのは、医療従事者たちの「命を救いたい」という純粋な思いだ。

(石川テレビ)