優れた企業広報を実践している企業や個人に贈られる「第38回企業広報賞」の表彰式が行われた。大賞は、子育て支援に取り組む企業理念を広く浸透させた小田急電鉄が受賞した。
「企業広報大賞」に選ばれた小田急電鉄は、コロナ禍での鉄道需要の回復と少子高齢化への対応という観点から、効果的な情報発信を通じ、子育てしやすい沿線を目指す理念を広く浸透させたことが評価された。
子育てにかかわる社員の意見を反映させた指針を「子育て応援ポリシー」として発信し、共感した地域の自治体などと共同での育児支援策に結びつけ、子育て支援に取り組む企業姿勢や社会課題を解決しようとする経営ビジョンが全国的に広まったことが高評価を得た。

社内外にわたり、優秀なトップ広報を実践した経営者を対象にした「企業広報経営者賞」には、荏原製作所の浅見正男取締役代表執行役社長と、資生堂の魚谷雅彦代表取締役社長CEOが選ばれた。
自らを広告塔と位置づけ、タイムリーで活発なメディアへの露出を通じて自社の技術がいかに社会に貢献しているかを自身の言葉で発信している浅見氏は、ポンプの老舗企業ながら、近年は半導体産業に欠かせない製造装置メーカーとして世界市場で成長している姿を広く浸透させることに尽力した。

魚谷氏は、「PEOPLE FIRST」を最も重要な経営理念として掲げ、事業は「人」が全てで、社員の活力があってこそステークホルダーの利益につながるとの考えのもと、社員が力を発揮できる環境づくりに力を尽くすとともに、女性活躍支援の取り組みを推進するなど、ダイバーシティやインクルージョンの重要性を社員に伝え、マスコミや投資家などに対しても積極的に情報発信していることが評価された。

「企業広報功労賞・奨励賞」は、広報活動に携わり企業広報の発展に功労が大きかったり、独創的な企業広報を実践している個人やチームが対象となる。
受賞したのは、大和ハウス工業の上席執行役員総務部長兼広報企画部長の中尾剛文氏と、日立製作所のグローバルブランドコミュニケーション本部コーポレート広報部だ。
大和ハウス工業の中尾氏は、23年にわたる広報活動により「会社の顔が見える」広報を実現するなど、同社の広報体制やブランド力を築いてきたほか、事業規模が拡大する中、社員の一体感醸成のためにグループ広報に注力した点も評価された。

日立製作所のコーポレート広報部は、メディアごとの担当者の配置や記者向けメールマガジンの発行、環境や働き方などの分野ごとのレクチャー実施など、取材するメディア側の立場に立った情報発信を行い、きめ細かい対応や部全体でチームとして広報を実施してきた姿勢が高い評価を得た。

8日には、主催する経済広報センターの会長を務める十倉雅和経団連会長が出席して表彰式が行われた。
大賞を受賞した小田急電鉄の星野晃司取締役社長が「子育てしやすい沿線づくりに一層取り組んでいきたい」と挨拶し、時宜を得た情報発信の大切さを強調するなど、経営ビジョンや企業姿勢についての的確なコミュニケーションを通じて、ブランド力を向上させる広報活動の重要性が改めて共有される場となった。