最愛の息子を奪ったボート事故

「毎日のことなので、日々慣れてはきますけど…。そんな長い距離は歩けないです」そう話すのは、事故で両足を失った母親。両親は最愛の息子が眠る墓へ向かった。

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母親:
その時の天気を「今日暑いね」とか「雨降ってるね」とか。「何してる?」みたいな感じで話しかけるようにしてますね

スノーボードが大好きでヒマワリのように明るく元気な男の子、豊田瑛大くん(8)。2020年9月、家族と遊びに来ていた福島県会津若松市・猪苗代湖の中田浜でボートに巻き込まれ亡くなった。

2020年9月、家族と遊びに来ていた猪苗代湖でボートに巻き込まれ亡くなった
2020年9月、家族と遊びに来ていた猪苗代湖でボートに巻き込まれ亡くなった

母親:
もう2年経つんだとか、まだ2年なんだとかそういう感覚はなくて。やっぱり今でも信じられないというか。未だに、やっぱり瑛大の写真とかは一切見られないんですけど。毎日毎日、精一杯過ごしている感じですかね

脳裏に焼き付いた瑛大くんの最期の姿は、消えることはない。

父親:
亡くなったあとの、想像を絶するような絵を思い出しちゃうんで。あの子があんなふうになってしまったのは、すごく辛いんですよね

ブログに届いた多くの励まし 募る被告への怒り

それでも、この1年で動き始めたこともある。「自分の声で発信したい」「かけがえのない息子の思い出を多くの人に知ってもらいたい」と、2021年にブログを開設。たくさんの励ましのメッセージが寄せられた。

母親:
やっぱりすごく感謝の気持ちが大きくて。今の自分がこうあるのって、それまで関わってくれた人たちのおかげだと思っているので。瑛大のためはもちろんだし、そのためにも前を向くというか

事故を起こしたボートを操縦していた被告の男は、事故から約1年後に逮捕され、業務上過失致死傷の罪で起訴された。「被害者が浮いているのは全く見えませんでした」と起訴内容を否認した2021年12月の初公判から9カ月経ち、2022年9月15日に裁判が再開する。

父親:
見ていなかったのと運転が乱暴。その2つが起きなければ、こういうことにはなっていないので。簡単なことなのに(裁判の期間が)長いというのは、こっちにはその分どんどん怒りや恨みが増える一方で

事故の原因は、被告の不注意とルールの不徹底

一方、国の運輸安全委員会は8月25日に事故調査報告書を公表。被告が目視を怠り加速した際に船首が上がり、死角ができたことで事故が起きた可能性があると指摘した。

父親:
船は加速すれば上がる。じゃあ上がる前に(周囲の状況を)見ておくのが当たり前のこと

報告書では、ルールの周知と徹底がなされてなかったことも指摘している。

父親:
2日くらい前に、あらかじめ(地図を)見ておいたんです。真ん中、湾の中が危ないんだなと思ったんだけど。実際はこれじゃなく、違うゾーニングがあったというのであれば、この事故はもしかしたら起きなかったんじゃないかなとは思いますね

事故が起きた場所は、現在は利用禁止区域とされたが、当時公開されていた地図にその表記はなかった。

父親は「船舶航行区域」とあった湾の真ん中を避け、外側の方で安全に遊ぼうとしたが、地図が間違っているとは疑いもしなかったという。

中田浜周辺には2022年、船舶航行区域と利用禁止区域を示す看板が新たに3カ所に設置された。

しかし、8月には事故現場付近で遊んでいた男性が水上オートバイに接触してケガをするなど、2022年に猪苗代湖では6件の事故が発生。具体的な対策は遅れを取っている。

湖で相次ぐ事故「裁判の結果は人々の意識を変えるはず」

母親:
1人死んだだけじゃ、何も変わらないんだという感じですよね

報告書では湖を管理する福島県に対して、必要な法整備を進め再発防止の周知・指導を行うよう求めている。

福島県 内堀雅雄知事:
内容を精査の上、県としての対応を検討してまいります。事故の再発防止に取り組みながら、正確な情報発信にも努めてまいります

事故が絶えない湖の現状に触れるほど、裁判で事故の責任と罪の重さを明らかにしてほしいという気持ちが強まる。

母親:
罪次第で、今後に繋がっていくとは思うんですよね。少なからず意識が変わる人も増えるだろうし

父親:
海には、川には、湖にはあんな危ない奴がいるから、最近、水上バイクとか(ニュースが)出るけど気を付けてくださいってことですよね。それを促すためにも裁判官にもちゃんとわかってほしい

「いつかまた…」と刻まれた瑛大くんの墓石は、たくさんのヒマワリで囲まれている。

母親:
またみんな一緒になるときが来るから待っててね、という思いも含めて「いつかまた会えるからね」という意味合いで

父親:
本当申し訳ない、ごめんなって。あんなところに連れて行ったりして悪かったな。その罪滅ぼしで早く行って、一緒にまた遊びとか早く連れて行ってあげたいなと思いますね

事故から2年。悲しみと怒り、そして後悔…。入り混じる感情を受け止めながら、両親は瑛大くんを思い、生きている。

(福島テレビ)