ロシアのウクライナ侵攻から半年。ロシアの世界三大バレエ学校に留学したものの帰国を余儀なくされた、三重県出身の16歳のバレリーナが平和を祈り、夢を追う姿を取材した。
「ロシアでしか学べないことがある」苦渋の帰国
舞台の上で華やかに舞う若きバレリーナ、清水理央さん(16)。
この記事の画像(12枚)清水理央さん:
2021年9月からワガノワ・バレエ・アカデミーで学んでいます。戦争が始まって帰国する形になりました
理央さんは2022年3月にバレエの留学先であるロシアから一時帰国。地元の三重県四日市市に戻り、現地のレッスン動画を見て自主練習を続けてきた。
2021年8月、世界3大バレエ学校の1つ、サンクトペテルブルクの名門バレエ学校「国立ワガノワ・バレエ・アカデミー」の入学試験に合格。
しかし、留学して半年余りでロシアのウクライナへの軍事侵攻が始まった。
清水理央さん:
国境がしまってしまう、そうしたら2~3年ロシアから出られないって噂が流れて。みんなやっぱりずっと帰りたくないって言っていて、最後は先生たちとも泣いてお別れして
日本政府が3月にロシア全域の危険情報を渡航中止勧告に引き上げ、やむを得ず一時帰国を決めた。
清水理央さん:
ロシアでしか学べないものが多いので、ワガノワ・バレエ・アカデミーに戻ること、戻れるという希望を持って頑張っています。とにかく戦争が終わって、平和になってほしいというのが一番ですね
先輩ダンサーと初共演 世界の平和を願う
帰国から半年。理央さんが今回舞台に立つのは地元・四日市市の発表会。そのプログラムの1曲を一緒に踊る相手は…。
清水理央さん:
中野拓馬くんです。ワガノワで一緒に勉強していました
愛知県豊橋市出身のバレエダンサー・中野拓馬さん(22)。2年前から理央さんと同じロシアの名門バレエ学校に留学していて、7月に卒業し帰国した。
中野拓馬さん:
みんなが帰るとなった時も絶対諦められなくて。最終学年で結構就職に響く年なので、大事にしたくて
戦争の影響で多くの留学生が帰国する中、将来への強い想いからひとり現地に残った。9月からはロシアのバレエ団への就職が決まっている。
ロシアで一緒に学んだ2人だが、共演するのは今回が初めて。本番直前まで何度も細かい振りを確認し調整した。
清水理央さん:
「くるみ割り人形」はワガノワの代名詞の作品となっているので、ロシアバレエの美しさとかを魅せられたらと思います。3幕で私が踊るものは平和の踊りともいわれているので、平和を願って踊りたいと思います
様々な想いを抱えて迎えた本番。演目はロシアの作曲家・チャイコフスキーの「くるみ割り人形」。ロシアの名門で学んだ2人にとって憧れの作品だ。
クリスマスの夜、少女クララがくるみ割り人形から変身した王子と踊る幻想的な一場面を演じた。
第3部でも主役を演じた理央さん。平和への祈りのメッセージを込めて、最後まで踊りきった。
清水理央さん:
本番が一番良かったのでほっとしています。早く世界が平和になるように、願いを込めて踊りました
理央さんは夢の実現に向けて、9月から再びロシアの学校に戻ることを決めている。
清水理央さん:
楽しみという方が強いですけど、戦争が激化しないかがちょっと心配ではあります。安心して学べる環境が早く整うといいなと思っています。憧れのロシアでバレエ団に就職できることが、やっぱり一番の目標です
(東海テレビ)