長野・岡谷市で発生した土石流災害から、8月15日で1年。妻と次男、三男を亡くした男性は「今もあの時のまま時間が止まっている」と心境を語った。男性が願うのは、原因究明と再発防止だ。
「真っ黒い炎が一気に…」

線香をあげる男性。巻渕達也さん(42)。
1年前、この場所で土石流に襲われ妻と次男、三男が犠牲となった。
巻渕達也さん:
皆さん1年と言いますけど、まだ去年の8月15日で止まっている…。振り返って(3人が)戻ってくるなら、いくらでも振り返りますけど

2021年8月15日、午前5時15分ころ、前日からの大雨により岡谷市の川岸地区で土石流が発生。お盆で帰省していた巻渕さん一家8人のいた住宅を襲った。

巻渕さんの妻・友希さん(当時41)、次男・春樹さん(当時12)、三男・尚煌さん(当時7)が亡くなった。

巻渕達也さん:
真っ黒い炎ですよ。一気に来てね。(あんな土石流)見たことない、見たことないです。一瞬過ぎて分からない。あっという間ですわ。本当に、朝のあいさつもしていない…。(去年の)8月15日のままで止まってるんです。苦しいだけなんです

止まったままの時間。辰野町の自宅では今も祭壇に遺骨を置いたままだ。
雨の降った日は動悸が止まらず、眠れない日々が続いている。
徹底した原因究明を
そして、なぜ3人が犠牲となったのか。ずっと問いかけている。

当時、岡谷市は土石流発生の45分後に「避難指示」を発令。雨量はすでに基準を超えていたが、「雨の夜の避難は危険」と判断していた。
その後、市は避難指示の発令は気象庁の危険度分図で「非常に危険となった場合」などの基準を設け、必要に応じて県や気象庁に助言を求め、夜間や未明の発令についても柔軟に対応すると見直した。

ただ、巻渕さんは今も行政への不信感はぬぐえない。
避難指示の基準を見直すだけで良いのか?崩れた土地の地盤はどうだったのか?また、市から説明がないことも納得できない。
巻渕達也さん:
検証結果出てますけど、それについての説明がなくて、ちゃんと説明してくれないのでわからない。何を岡谷市はやってるのか、僕たちはどれだけ苦しめられないといけないのか…情報を何も教えてくれない

市は遺族への説明はしているとしたうえで、「悲劇を繰り返さないために、住民自らの行動も重要だ」と話す。
岡谷市危機管理室・小林隆志室長:
最悪の事態は回避できるような取り組みを、行政ももちろんやっていきます。住民の皆さんも(気象情報などで)的確な避難行動を起こせるような準備をしてほしい

土石流が直撃した住宅は取り壊され、今は更地となった。

あの日から1年、8月15日は朝から地域住民なども訪れ、鎮魂の祈りを捧げていた。
あの悲劇を繰り返してはならない…巻渕さんは徹底した原因究明が再発防止につながると信じている。
巻渕達也さん:
もっと人の命ってどういうものなのか、自分(市)のとった行動でどれだけ救われるのか、もっと考えてもらいたい
(長野放送)