安倍元首相の銃撃事件をきっかけに、宗教法人世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の様々な問題が注目されている。
着工は40年前 佐賀・長崎に残る掘削の痕
かつて九州には壮大な構想があった。
取材班が佐賀県唐津市の山間部を進んでいくと、発見したのは「日韓トンネル唐津調査斜坑」の文字。看板の下には大きな穴も確認できる。
この記事の画像(14枚)日韓トンネルは、九州と韓国の間を約230kmの海底トンネルで結ぶというもの。国際ハイウェイ財団という団体が40年近く前に工事を始めた。
この国際ハイウェイ財団こそが、旧統一教会の関連団体なのだ。2016年には世界平和統一家庭連合の韓鶴子(ハン・ハクチャ)総裁が唐津市内のトンネルを視察に訪れている。
国際ハイウェイ財団によると、地質調査を目的に掘られたトンネルの長さは540m。トンネルの先端部分が所有する敷地の境界線に達していることから、2007年からは掘削工事は行われていないという。
日韓トンネルの工事現場は、佐賀県唐津市だけではない。
長崎県対馬市。空港から車で西に約20分。途中、現場と分かる表示も特にないため、地元の人に聞いてみると…。
地元の男性:
トンネルの工事現場言うたら、そっちやない?
ーーいや、日韓トンネルです
地元の男性:
日韓トンネルは分からん。そんなことは聞いたことない
ーー工事をしている?
地元の男性:
日韓トンネルが掘げるって?そりゃ聞いたことがない
最近の大雨の影響で多くの落石がある山あいの道を何回も往復。日韓トンネルの現場へ繋がるとみられる道路は、舗装が途切れたところで厳重にチェーンで施錠されていて、これ以上近づくことはできない状態となっている。
しかし上空から見ると、その場所を見つけることが出来た。
そこにあったのはアーチ状の構造物。トンネルの入り口とみられ、財団によると2014年に調査用として建設されたものだという。現場整備や調査工事も少しずつ行われている。
当初の計画では、この場所に1300メートルのトンネルを掘る予定だった。
建設採択に関わった市議 旧統一教会との繋がり「知らない」
2013年3月、対馬市議会で採択された日韓トンネルの早期建設を求める意見書が残されている。
当時、長崎市の任意団体「日韓トンネル推進長崎県民会議」から請願を受け、全会一致で可決された。質疑や異議はなかった。この翌年には調査用トンネル着工の式典が行われている。
早期建設の意見書を採択した時の対馬市議会議長で、現職の作元義文市議が取材に応じてくれた。
ーー大きなプロジェクトが対馬であれば、地域活性化の起爆剤になると?
対馬市議会 作元義文市議:
そりゃもちろん。みんな思っていたでしょう
ーー作元市議は?
対馬市議会 作元義文市議:
私もそう思ってたよ。(対馬市の)議員のところに、国際ハイウェイ財団のプロジェクトの人たちが回ったり、説明をしたりしてたよ。私のところにも何回も来たけどね
国際ハイウェイ財団の関係者と面会したと明言する作元市議。当時、財団と旧統一教会との繋がりについては…。
ーー旧統一教会と繋がりがある財団と知っていた?
対馬市議会 作元義文市議:
おそらく、知っていない
ーー作元市議自身は?
対馬市議会 作元義文市議:
全然、そういうことは知らんもん。いま話が出てきた旧統一教会、財団、あれは繋がっとると?へぇ、そう。そりゃ、(採択を)せにゃ良かったね
総工費10兆円ともされる日韓トンネル構想。作元市議は、規模の大きさからも実現は難しいのではないかとも感じていたという。
対馬市議会 作元義文市議:
できる問題じゃないもん、現実に。考えてみんね。どこに10兆円お金が使える?
前衆院議員の原田義昭氏「優れた構想だと思ったので支持」
実現に懐疑的な声もある中、2015年には「日韓トンネル実現九州連絡協議会」が設立された。
テレビ西日本の取材では、2020年に福岡県内で開かれた5回目の総会に、当時の国会議員や福岡県の県議会議員、財界関係者、九州大学など大学関係者らが出席していたことが分かっている。
出席者の1人、福岡5区の前衆院議員・原田義昭氏を直撃した。旧統一教会が関連していることは把握していたのか?
前衆院議員 原田義昭氏:
私も子どもではないから、そういうところ(旧統一教会関係)が一生懸命やっているのは分かっているけれど、入信して文鮮明(旧統一教会の教祖)にこだわっているわけではない
その上で原田氏は「日韓トンネルが優れた構想だと思ったので支持した」と説明。さらに、佐賀県唐津市の現場も視察したと話す。
前衆院議員 原田義昭氏:
人をかどわかして、そんな生やさしいものではないことは、見に行くとみんな分かる
ーー実現の可能性はどう感じる?
前衆院議員 原田義昭氏:
なかなか時間はかかる。ただ必ず実現する。100年かかるかもしれないけど
すでに100億円以上投じているという空前のプロジェクト。その行く末は見えないままだ。
(テレビ西日本)