「まだまだやっぱり信じられない気持ちと、ただ、どこかではこれが現実なんだという、複雑な気持ちが交錯しているような状態ですね」

そう語るのは、7月24日、ホテルのプールで溺れて亡くなった、福岡県の女子大学生・山田絢子さんの両親です。

事故が起きたのは、鹿児島県指宿市にある老舗のホテル。

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絢子さんは、このホテル内のプールで、溺れかけた中学生の妹を助けようとして、亡くなりました。

絢子さんの父親:
今、夏の季節でお子さんもプールに行かれることが多いと思うのですけれども、二度とこういったことが起こらないように

娘を失った悲しみの中、自分たちと同じ思いをする家族が増えないようにと、私たちの取材に答えてくれました。

一瞬の出来事…楽しいはずの温泉旅行が一変

絢子さんと妹、母親の3人は、仕事があった父を福岡に残し、福岡県にある自宅から鹿児島県へ帰省していました。

絢子さんの母親:
当初は別の地域を考えていたのですけれども、絢子本人が砂蒸し(温泉)に入りたいって言ったので、予定を変えて指宿の方に。絢子は砂蒸し(温泉)が(午後)4時からだから、その前に妹とプールに行くって言って別れたのが最後です

チェックインの直後、絢子さんは妹と2人でプールへ。

しかし、そのわずか20分後…

絢子さんの母親:
ホテルの方が呼びに来られて、お連れ様が溺れています。救急車を呼んでありますって…

妹が溺れかけたため、助けに向かった絢子さん。妹は何とか自力でプールサイドに上がったものの、絢子さんは溺れてしまいました。

両親は、絢子さんが最後に身につけていた水着を見せてくれました。救助の際の処置により切られています。

絢子さんの母親:
(プールに着いた時には)絢子はもう意識なく、処置をされているところでした。救急隊員の方が囲まれてですね

絢子さんは病院に運ばれましたが、約2時間後に、死亡が確認されました。

絢子さんの父親:
なんとか回復して欲しいという気持ちと、その期待をもっておりましたね。ただ(福岡の)家を出て20分後くらいにはダメだったという話が…

絢子さんの母親:
妹は泣きじゃくって、私にごめんなさい、ごめんなさいって。私が先に溺れたから、姉ちゃんが助けてくれてっていうのを一生懸命言っていました

年が離れた妹を可愛がっていたという絢子さん。

絢子さんの母親:
年が7歳離れているので、ケンカしたりとかはもう全然なくて。事故の2日前が妹の誕生日でしたので、妹に服を買ってきてくれて、妹もすごくそれを気に入って、今回の旅行にも着ていっていました。妹を助けたい一心で、自分がどうなろうと、(助けに)行こうっていう気持ちがあったからこそ、こうなったんだなと思います

絢子さんの父親:
(助けたのは)絢子にとってはおそらく自然な行動だったんだろうなと思いますし、そこにきっと葛藤はなかったんだろうなと思います

泳ぎはできた姉妹…それでも助からなかった命

両親によると、泳ぎはできたという姉妹。

しかし、2人の身長が150cm台後半だったのに対して、現場となったプールの深さは、片側は約1メートルですが、反対側は深くなり、約2メートルになっていました。

その水深2メートルの辺りで妹が溺れかけたため、絢子さんは助けに向かいました。

事故当時、プールには姉妹以外、監視員などはいませんでした。

両親は、監視員の配置などについて法的な決まりがなく、ホテルごとの判断によるという現実に疑問を投げかけます。

絢子さんの父親:
義務が法的にも無いと言うことを知りませんでした。絢子の死が無駄にならないように、しっかりと原因を究明して、監視カメラを置くとか何か次善の策を講じていく必要が、やはりあるんではないかなと思います。でなければ、私たちのような悲しい思いをする家族というのが増えていくんだろうなというふうに思います

絢子さんの母親:
21歳になったばかりでしたけれども、プールとかやっぱりお友達同士で行ったりとかもしますし。その中で命を落とすことがあるんだなっていう。むなしいですね

定めはないが…「安全安心」提供のため監視員を配置するホテルも

ホテル側は今後の対応について「見回りを強化し、プールサイドに注意を呼びかける大きな看板を設置する予定」だとしています。

めざまし8が全国のプール付きホテルに「監視員を配置しているかどうか」きいたところ、12件中7件のホテルが監視員を配置していました。

その理由について「法律的にそういう定めがないとしても、安心安全を提供するためには、費用がかかっても続けている」とホテル側は答えています。

(めざまし8 8月5日放送より)