釣り人が投げ入れる疑似餌「ルアー」は、海底に残されたままだと魚が誤って食べてしまうそうだ。ポリ袋やペットボトルと同じ、環境破壊の恐れがある海洋ゴミだ。
このルアーを年間1万個も回収し、“海の掃除屋”と呼ばれている男性がいる。ルアーをリメイクして販売した利益で、清掃活動を続けている。

“掃除屋”の誇り「自分が動けば海はきれいに」

静岡・焼津市の石津浜海岸で、ダイビングの機材を準備している土井佑太さん(28)。釣り人から“海の掃除屋”と呼ばれている。

土井佑太さん
きょうは海に潜って、水中のゴミ拾いをしに行きます。普通のゴミも落ちているのですけど、ここはやはり釣り人が多いので釣りのゴミ、投げて岩などに引っかかってしまったゴミを回収しに行きます

土井佑太さん
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潜ったのは海岸から50mほどの場所、水深は10m弱だ。海底にある茶色い岩に何かがくっついている。
それは、釣り糸に絡まった小魚に似せた疑似餌「ルアー」だ。魚を釣るため海に投げ込まれたものの、岩などにひっかかり外れなくなってそのまま海底に残された。

こうしたルアーを魚が誤って食べたり、糸が鳥の足にからまったりすることもある。
取材した日はわずか40分間で、約100個のルアーが回収された。

土井さんが海で拾ったルアー

富士市に住む土井さんは、趣味のダイビングをしていて海底に残されたルアーが気になり、3年ほど前から回収を始めた。主に県内の海に潜り、2021年には1万個以上のルアーを拾い集めた。

土井さん
自分が動けば動くほど目に見えて海がきれいになっていくので、そこは大きなやりがい

リメイクして清掃活動の資金源に

回収したルアーは最初は捨てていたが、2年ほど前から土井さんにあるアイデアが生まれた。リメイクして販売するというアイデアだ。

土井さん
回収したルアーをしっかり活用できれば、もっと集めるための活動資金になるんじゃないかと思って、やってみたのがリメイクルアーです

ルアーの釣り針や糸をはずす

しかし、糸がからまったルアーを外す作業は簡単ではない。釣り針がついていて慎重に作業しないとケガをする。

土井さん
この作業が一番時間がかかるし大変ですね。拾ってくるのは割とすぐなんですけど

釣り糸から外したルアーは知り合いの工房へ運ぶ。そこで汚れを落として、塗装をし直す。

土井さん
(回収したルアーは)誰のものかわからない共有の資源だと考えているので、自分の利益というより社会のために使っていくのがいいと思っている。これで生活費を稼ぐというより、回収で得た利益で(海の清掃など)もっと社会貢献していこうという考えが強いですね

土井さんはリメイクしたルアーを自身のホームページで販売し、そこから得た利益の一部を海の清掃活動などにあてている。

リメイクルアーを紹介する土井さんのHP

人気観光施設でも販売

大勢の観光客が訪れる焼津さかなセンター。ここに店を構える老舗の水産加工品店「川直」では、店頭に土井さんのリメイクしたルアーが並んでいる。
店の6代目・山口高宏さんも、土井さんと一緒に海に潜り清掃活動に参加している。

観光施設の店でも販売

川直 6代目・山口高宏さん
ルアーを販売した利益で、また新たな活動費にしていく。商売に組み込んでいく事が、清掃を続けていく、環境を守っていく一番の方法だと思います。

ルアーを販売する川直・山口さん(右)と土井さん

土井さん
いろいろな人が足を運んでくれる観光地に(ルアーを)置いてもらうことはありがたい。今までどうしても僕が届けられなかった人たちにまで、商品というか(自分の)思いが届くので、すごくいいことだと思います

高校生も共感 文化祭で販売へ

5月18日、土井さんの姿は焼津市の県立焼津中央高校にあった。

土井さん
海洋ゴミを使って現金化できれば、次に海に潜るために必要なお金ができるのでまた潜れる。この一連の流れが、いわゆるSDGs、持続可能の考え方ですね

高校で清掃活動を紹介

ルアーがひっかかる“根掛かり”を防ぐことは難しい。せめて回収する人を増やして、海中に残ってしまうルアーを少しでも減らしたい。
土井さんはダイビング仲間の教師から依頼され、海のゴミ問題と自身の活動の意義について高校生に説明した。その後、高校生はルアーに色を塗ったり、目をつけたりするリメイクを体験した。

高校生もリメイクを体験

高校生
人間の出したゴミを人間の手で回収することによって、地球の環境が守れるのがいい

別の高校生
誰かがなくしたルアーを新たにリメイクすることはリサイクルで、今の時代に必要とされることなのでやりがいを感じています

高校生はリメイクしたルアーを文化祭で販売する予定だ。

全国の海をきれいに

収益の一部を清掃活動にあてる持続可能なSDGsの取り組み。最近は琵琶湖でも清掃活動を始めた。日本全国の海や湖をきれいにするため、土井さんの挑戦は続く。

海から集めたルアーを塗装する土井さん

土井佑太さん
自分も釣り人で、ゴミを作ってしまう側の人間だったので、それならば自分自身が解決策をしっかりと打ち出して、ゴミに対して責任を持って活動していく。自分がその責任を持つ第一人者になれればいいのかなと思う。
もちろん責任を持つべき人達としっかりと協力をして、一丸となって問題解決できればいいなと思っています

(テレビ静岡)

記事 589 テレビ静岡

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