原発事故による除染廃棄物を、一時保管する中間貯蔵施設。
「30年以内に県外で最終処分をする」という国との約束を信じ、自宅を取り壊すことを決めた福島・大熊町の男性は、石碑に未来への誓いを刻んだ。

生活が一変…自宅が中間貯蔵施設に

福島・大熊町の帰宅困難区域ゲートを越えて見えた景色。

赤井俊治さん:
住宅あって、畑あって、ゴルフの練習場だった。ここら辺から家がポツポツとあった。(自宅を指さし)ここなんです、ぽつんと。後ろの方(中間貯蔵施設に)なっちゃったでしょ。そういう話聞いてなかった

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そう話すのは、自宅が福島第一原子力発電所から約3km離れた、大熊町の帰還困難区域にある赤井俊治(66)さん。

赤井俊治さん:
(荒れた室内を見て)こんな状態、ガチャガチャの状態です。2人で働いて、借金しながら土地と建物を作ったわけですから。そこで生活していて、まさかこういう事故が起きて避難するということになるとは、本当に思ってなかったわけですから。
結婚して子どもをここで育てて、そのときの生活というか、子どもたちと過ごしたときのことを思い出すと、自然と涙が出てくるという感じですよね。これがなくなっちゃうというのは、やっぱりさみしいですよ

原発事故で一変した生活…。自宅のまわりには今、除染廃棄物を一時保管する中間貯蔵施設がある。

福島・佐藤雄平知事(当時):
私としてはまさに苦渋の決断ではありましたが、中間貯蔵施設の建設受け入れを容認することにしたいと思います

大熊町・渡辺利綱町長(当時):
われわれとしては、知事の考えを重く受け止める

双葉町・伊澤史朗町長(当時):
知事の判断を重く受け止める

福島県の大熊町・双葉町にまたがる、約16平方kmの中間貯蔵施設。
2015年から福島県内の除染で出た土などが運び込まれ、2022年3月末までに約1,300万立方メートルを保管。搬入作業は、ほぼ完了した。

赤井俊治さん:
(当時の)知事の「苦渋の決断」ということで、双葉・大熊町長が「重く受け止める」という言葉で、もう決まった感じで

「30年以内に県外で最終処分する」。赤井さんは悩み抜いた末、国の示した方針を信じ、2045年を期限に、自宅の土地を中間貯蔵施設に提供する契約を交わした。

赤井俊治さん:
なかなかふん切れなかったんですけど、一応契約はしましたけども、今でも「よかったのかな」というときもありますね

「ここの土地が帰ってきてほしい」

気がかりなことは、いまだ議論が進まない最終処分場の行方。

赤井俊治さん:
この除染物(の保管は)30年以内と言ってますけど、本当に30年以内に他県に持っていくのかというのが本当なのか。裏切られるんじゃないかなということも、心の中にはありますよね

赤井さんは2022年3月、自宅前に石碑を建てた。それは国との約束、そして未来への誓い。

赤井俊治さん:
ここの土地しかないもんですから、私には。ここの土地が帰ってきてほしい、帰ってくるんだということで、そういう思いをこめて設置したんですけど。本当に除染物がなくなって、人が住める状況になってくれればいいなというか、ほしいなというか。そのときこそ、本当の復興じゃないかと思うんですよ。それまでなんとかがんばって、見届けたいなって気持ちでいっぱいです

約束の日まであと23年。その日、88歳になった赤井さんの目の前に広がる景色は…。

(福島テレビ)

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