マンガや雑誌の影響で、数年前から温浴施設などにあるサウナがブームとなっている。そんな中、注目されているのが、他とは一味違った個性的な施設だ。
「サウナのためなら、遠方からでも足を運ぶ」というファンの心を掴む、富山県内の施設を取材した。

路線バスで「ととのう」…中に入るとサウナ室が

羽根大祐 記者:
少し時代を感じさせるこちらの路線バス。ある改造によって、全国から引っ張りだこの人気施設に生まれ変わりました

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一見、少しレトロな普通のバスだが、中に入ってみると、奥にあるのは「サウナ室」。2021年まで兵庫県内を走っていた路線バスを改造したものだ。

サウナのバスを手掛けた松原安理佐さんは、もともと、バス会社の新規事業を考えるような部署にいたという。

サウナのバスを手掛けた松原安理佐さん:
バスとサウナという普通結びつかないものが一緒になってるのが面白いと感じて(事業化した)。予想外ですね。問い合わせをずっと頂いてるので、バス会社もびっくりしている

このサウナ付きのバス、その名も「サバス」は、2022年3月から、依頼のあった各地の施設やイベントに出向いている。

そして6月4日(土)と5日(日)、北信越では初めてとなる富山県高岡市に来た。温浴施設がサバスを呼び、サウナのイベントを開いたのだ。入浴料は、1人5000円。取材班もその様子を見せてもらうことに。

記念撮影をする参加者。行き先表示も特徴的だ
記念撮影をする参加者。行き先表示も特徴的だ

サウナ室には、バスのように座席が並んでいた。参加者らが腰を下ろしたら、始まりだ。

車内アナウンス:
次はサウナ、サウナです。今日のサウナを見つけよう。サウナに入った記録は、人生の記録。次はロウリュ、ロウリュ、今ストーブ前に座っているお客様、「蒸気降ります」ボタンを押してみてください
(ロウリュ=サウナストーンに水をかけ、蒸気をおこすこと)

その後は水風呂や外気浴なども楽しむ。サウナブームと言われて2、3年。サウナ、水風呂、休憩のサイクルで気持ちよさが得られると、多くの人に知れ渡った。

参加した男性に話を聞くと…

石川県から来た男性:
たまりませんね。普段使っているような路線バスに乗れるというのは、なおさら非日常感が高まるじゃないですか。楽しみにして調べたんで、あの椅子かとか、降車ボタンとか、このストーブがとか、いろいろ調べました。堪能します

ほかにも参加者からは、「楽しい」「写真も撮らせてもらった。若者はたくさん写真撮って、SNS映えすると思う」との声があがった。

乗車人数(訪れた人)は、土日の2日間で75人。京都や新潟、石川など県外から来た人も多かったという。

今回、サバスを誘致した「陽だまりの湯」の水越勇人さんも、「サウナ愛好家に楽しんでもらえるイベントって、どんなのあるのかと考えていて。サバスを見つけてようやく実現できた」と満足した様子だ。

1人1泊2万円から…宿泊できる高級サウナ 半地下から楽しむ景色

ファンが増えたいま、施設は多様化している。
美容と健康をテーマにした富山県立山町の複合施設の中には、6月1日、宿泊できるサウナホテル「The Hive」がオープンした。

1棟貸し切り、素泊まりで1人1泊2万円からという高級路線だが、県外からの予約が絶えないほど人気で、7月末まではほぼ予約でいっぱいだという(6月上旬時点)。こだわりのサウナ室は100度近くの高温の部屋と、およそ80度のゆったりと過ごせる部屋の2種類が用意されている。

建物自体も、ミツバチの巣をイメージした独特な形で、外の世界から離れたプライベート空間を楽しめるよう、半地下の構造になっている。

手掛けたのは、サウナで社員同士のコミュニケーションを図る「サウナ部」を全国の企業に広めた、コクヨ“サウナ部”の川田直樹さんだ。

コクヨ 経営企画本部・川田直樹 部長:
われわれはコクヨという働き方を提案している会社なので、お客さまの働き方を調べていると、(コロナ禍で)リモートワーク比率は半分以上だった。(自宅での仕事で)自分の心や体のコンディショニングがうまくできなくなる。サウナに入ると、スマートフォンやパソコンは持ち込めない。デジタルデトックスをしながら、自分自身と向き合って、自分を切り替える

東京から訪れたカップルは、休日に全国のサウナを巡るのが趣味だと話す。訪れたサウナ施設の写真や感想を、SNSに載せるのも楽しみの1つだ。1棟貸し切りなので、気兼ねなく写真が撮れる。

東京から来た男性:
都内では、こういう自然が眺められるサウナはない

ブームで全国の施設の情報がネットで飛び交うようになり、個性的なサウナを旅の目的地にする人は増えているという。

東京から訪れた女性客:
その土地でしか味わえない楽しさ、その施設ならではのものだったり、景色を見たりするのが楽しい
東京から訪れた男性客:
サウナ好きの中では、「あそこに行った?ここに行った?」と盛り上がるので、(人気施設は)1度は行きたいとなる。それこそ、ここも1度は行きたいとなる場所だと思う

コクヨサウナ部の川田さんは、地域の持ち味を生かした個性的なサウナ施設の需要は、今後さらに高まるとみている。

コクヨ 経営企画本部・川田直樹 部長:
多様化はもっと加速すると思う。サウナと餃子という施設も京都にあるが、食やエンターテイメント、景色など、掛け算の個性を際立たせることができれば、もっと豊かになる。そういう形がもっとできてくるのが、より加速すると思う

(富山テレビ)

富山テレビ
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