東北楽天ゴールデンイーグルスに所属していた元プロ野球選手の則本佳樹さん(27)が、社会人野球チームに復帰した。プロの世界では高い壁に阻まれたものの、もう一度野球ができる舞台を与えてくれた古巣へ。恩返しの思いを胸に、仕事に野球に活躍を誓う。

育成ドラフト2位指名で楽天へ

静岡県島田市の社会人野球チーム「山岸ロジスターズ」。2022年、1人の投手がプロの世界から復帰した。元東北楽天ゴールデンイーグルスの則本佳樹さんだ。

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則本佳樹さん:
ここでもう一回、野球ができるというのは僕の中で喜びですし、感謝でしかないと思っています

滋賀県出身で、近畿大学から2017年に山岸ロジスターズに加入した則本さん。4歳年上の兄は、パ・リーグで最多奪三振のタイトルを5年連続獲得した楽天の則本昂大投手(31)だ。

剛腕で打者を圧倒する兄とは対照的に、7種類の変化球を巧みに使い分ける技巧派の弟である則本さんも2018年、育成ドラフト2位で楽天に指名された。

則本佳樹さん(2018年の会見):
もちろん兄を超えることは目標なんですけど、まずは支配下登録を目指して、一生懸命、一軍になれるように努力していきたい

無念の戦力外通告 「投げ足りないなら…」と古巣の社長

しかしプロの壁は厚く、ケガにも泣かされ苦しい日々を過ごす。在籍した3年間の2軍戦で1勝も挙げることができず、1軍登板の機会がないまま2021年10月、戦力外通告を受けた。

則本佳樹さん:
正直、もう野球はいいかなと思う方が、7割8割くらい強かったんですけど…。野球自体も引退して、アパレルの会社を作ろうかなと悩んでいたんです

野球への自信を失い、先の見えない日々。しかし、戦力外通告の報告に訪れた古巣は、則本さんの野球への未練を見抜いていた。

山岸運送・山岸一弥社長:
彼の眼を見た時に野球への思いが、まだまだ情熱があるなと見抜けたので、投げ足りないのならもう一度投げてみればいいじゃないかと

チームの社長は則本さんに、元プロとして、チーム最年長選手として、後輩を指導する面で期待を寄せていた。

則本佳樹さん:
みんなきょう俺のこといじっても、なんもされへんからいいよ

後輩:
きょうは優しいですね(笑)

練習前に後輩と話す則本さん
練習前に後輩と話す則本さん

背中を押した兄の言葉 仕事にも情熱注ぐ

もう一度、野球ができる。古巣への復帰を決断するのに時間はかからなかった。

当時、大卒で行き場のなかった自分を受け入れてくれたチームに「恩を返し切れていない」という思いもあった。さらに目標とする兄からの言葉も則本さんの背中を押してくれた。

幼いころの則本兄弟
幼いころの則本兄弟

則本佳樹さん:
兄に憧れて野球を始めたので。兄からも「そういう風に声をかけてもらえるなら、やれるとこまで野球続けたらどうだ」と。「実力があってこそ(プロに)入れたから、やれるところまでやるのはいいと思うよ」と言ってもらえたので

兄の言葉に古巣への復帰を決断した則本佳樹さん
兄の言葉に古巣への復帰を決断した則本佳樹さん

会社としても則本さんの加入は大歓迎だった。チームを運営する運送会社は2022年、事業を拡大。新たに立ち上げたTシャツやアクセサリーのデザインを手掛けるアパレル部門は、則本さんが引退したらやりたいと考えていた仕事でもあった。

アパレル部門の仕事も則本さんの希望だった
アパレル部門の仕事も則本さんの希望だった

則本佳樹さん:
自社ブランドを作れれば一番いいんですけど、どんどん利益を上げて。僕の”佳樹ブランド”じゃないですけど、そんなんができれば一番嬉しいですね

則本さんに再び託されたのはエースナンバーの「18」。仕事で、そして野球で。新たな道を示してくれた古巣への恩返しの思いを胸に、エースとしてチームを高みに導く覚悟だ。

古巣への恩返しを誓う
古巣への恩返しを誓う

則本佳樹さん:
また野球でプレーできる舞台と、僕のやりたい仕事をさせて頂けるという、この環境を頂いたことにはすごい感謝している。妥協せずにやれることをしっかりやって、結果を残したいと思ってます

(テレビ静岡)

テレビ静岡
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