金沢市民の憩いの場として、初夏と秋に色とりどりの花を咲かせるバラ園。
しかし、公園を管理する市役所が今、頭を抱えている問題がある。
花が切られ枝折られ…相次ぐバラ泥棒
金沢市の金沢南総合運動公園にあるバラ園。1984年に整備されて以降、初夏と秋の年2回、147品種、約1800株の色とりどりのバラが美しい花を咲かせている。

公園なので誰でも自由に入ることができ、見ごろを迎える時期になれば、辺りは華やかな香りに包まれる。まさに市民の憩いの場所だ。
しかし、ある問題が…

バラ園を管理する磯野敏子さん:
これこれこれ!これを見てください。こんな風に切っていくんです。ここが常に狙われていて

造園業「進樹園」の代表・磯野敏子さんは、約30年前からこのバラ園の管理を行い、バラを丹精して育ててきた。相次ぐ被害の実態をこう訴える。

バラ園を管理する磯野敏子さん:
手でちぎろうとしてもなかなかちぎれないので、こういう風に切られてしまう。もうここは枝がほとんど切られました。これではバラは育ちません

バラ園を少し歩けば、枝ごとちぎろうとしてうまくいかず、そのまま放置されたものや、枝を切り取られ、ちぎった跡が残るものなど、無残な姿が次々と目に入ってくる。

バラ園を管理する磯野敏子さん:
本当に自分のことしか考えていない利己主義者だと思う。勝手に花を持っていくのは犯罪だから、やめてもらいたい。

「たかがバラの花」では済まされず…10年以下の懲役も
「花はたくさんあるんだから、一つくらい良いじゃないか」バラ泥棒はそんな軽い気持ちなのかもしれない。
しかし、その代償は高くつく可能性がある。

堀口・犬塚法律事務所 犬塚雅文弁護士:
バラの花を盗むのは、刑法でいう窃盗罪になる可能性があります。また、単に嫌がらせする目的で切ったり捨てたりしたということであれば、器物損壊罪に問われる可能性があります

窃盗罪の法定刑は「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」。器物損壊罪の場合は「3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料」だ。
決して「軽い気持ち」で済まされる問題ではない。
毎日4回パトロール…金沢市が対策実施も効果なし
公園を所有している金沢市も手をこまねいているわけではない。まずは、園内に花の持ち帰り禁止を呼び掛ける警告看板を6カ所設置した。
しかし、看板のすぐ目の前にあるバラでさえも切り取られる被害が続いた。

金沢市緑と花の課 中谷裕一郎担当課長:
どなたでも来ていただいて、見ていただけるのがバラ園の魅力。今のところ、過剰な規制は考えていないが、マナーを守って頂きたい

金沢市は見ごろを迎える今の時期は、毎日4回職員がパトロールを実施している。それでも被害を食い止めることにはつながっていない。看過できないレベルになれば、規制強化という声も上がるかもしれない。

青空が広がり、お花見日和となったこの日。平日にも関わらず多くの市民が訪れ、多種多様なバラの花を愛でる光景が広がっていた。誰もが笑顔で幸せな空間。
しかし、バラ園を管理する磯野さんはふいに足を止めた。そこに花はなく、あるのは力なくぶらさがる枝だけだった。
(石川テレビ)