2016年から県内で明らかになりはじめた、アメリカ軍基地由来とみられる水汚染。
この水汚染が広がるのは、沖縄だけではないことがわかってきた。汚染は首都東京でも確認されていて、血液検査がすでに実施され、健康への影響を解明するよう求める声が高まっている。

国の指針値の46倍…米軍基地周辺で検出されたPFOS

沖縄の水に起きてきた異変、汚染の原因はPFOSと呼ばれる有機フッ素化合物。発がん性などが指摘され、国際条約で使用が禁止されている汚染物質が、県内の米軍基地周辺で検出されている。

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アメリカ軍基地周辺で実施された調査の結果、7割を超える地点で国の指針値を超え、最も高かったのは嘉手納基地周辺の井戸で、2300ナノグラムと指針値の46倍だった。

原因は、長年 アメリカ軍基地で使用されてきた泡消火剤だと考えられている。
しかし、県が2016年から求めている嘉手納基地への立ち入り調査も、6年経った2022年もなお実現せず、汚染源は特定されていない。

東京でもPFOS検出…情報公開請求で"汚染”明らかに

こうした沖縄の現状を知ったひとりのジャーナリストが、首都・東京にある横田基地周辺でも同様の汚染が起きていたことを突き止めた。

「消された水汚染」の著者、朝日新聞特別報道部元記者の諸永裕司さん。東京都などへの情報公開請求を重ね、公表されてこなかった汚染の事実を明らかにした。

「消された水汚染」著者 諸永裕司さん:
東京の横田基地でも同じことが起きてるんじゃないか、アメリカでは既に多くの基地でそういう被害が出ていると聞いたもので、東京の現状を調べてみたいと、そう思って取材を始めました

「消された水汚染」著者 諸永裕司さん:
米軍が認めている範囲で言うと、2016年まではPFOSを含んだ泡消火剤を使って、消火訓練をしていたと。
取材を重ねていく中で、この横田基地の近くにある立川市というところの一角にある井戸で、極めて高い濃度のPFOSが検出されていたというのがわかりました

最も高いところで、現在 国が暫定の指針値としている50ナノグラムの約27倍、1340ナノグラムが検出されていたというのがわかった。

人体に蓄積される有害物質…募る住民の不安

横田基地周辺で暮らす 高橋美枝子さん:
訓練しているこの飛行機を燃やして、それで消火しているというのが、こちらの方の写真なんです。横田基地近くの井戸水が、すごい汚染されているということで、こりゃ大変だと水汚染を考える会みたいなのは始まっているんですけどね

沖縄と同様に、アメリカ軍は汚染の原因が基地内であるとは認めていない。PFOSは人体に蓄積され、腎臓がんや甲状腺疾患、胎児への悪影響などが指摘されている。基地周辺で暮らす人たちの体にどれだけ蓄積されているのか、不安が募っている。

根木山幸夫さん:
水の場合はどんどん流れてくるということもあるけども、やっぱり血液については一定程度長い期間、今沖縄の方でも痕跡が残るということで。血液検査をやってほしいという声があるし、横田、沖縄でもやると、そうするともっとPFOSによる水汚染というのがどういう問題なのかってことが、より非常に科学的に明らかにできるのではないかなと

東京都の多摩地区にある府中市と国分寺市にある浄水所では、2011年から2018年度まで基準値の最大3倍を超える汚染が確認されていた。

東京府中市に住む 浅田多津子さん:
東京都はその数字をずっと以前から調べていた。にも関わらず、それは知らされてなかった。とても美味しい水を飲んできたというふうに思っていましたが、そうではなかったと、後で知らされたことについて、すごい怒りというか

浄水所から供給される水を、40年にわたって口にしてきた浅田多津子さん。環境問題について、国に政策提言を行うNPO団体が住民の健康調査のための血液検査を実施することになり、同じ府中市に住む友人二人と参加した。

東京府中市に住む 矢島千里さん:
うちも子どもがいて、近所でその話はみんなにはしますけど、じゃあどうしたらいいのっていう

東京府中市に住む 浜田優子さん:
私が息子の家族と住んでいますので、これからは少しでも、孫たちに綺麗なお水を飲ませたいと思うのですけど…

米軍基地の立ち入り調査できず…事実は解明されないまま

日本国内には血中濃度の基準はないが、ドイツでは1ミリリットルあたり20ナノグラムを超えると、「健康に影響があると考えられるレベル」であり、「緊急にばく露軽減策をとる必要がある値」と指針を示している。

参加した22人のうち、5人の血液中のPFOSの濃度がその値を超えていた。浅田さんは、最も高い27グラムという結果を突きつけられた。

東京府中市に住む 浅田多津子さん:
27という数字をもらったときに、本当に身震いをしましたし、体の中にそれだけ溜まっているということが自分自身わかった。でも、それが健康被害にどれだけ及ぶのかっていうことまでが、今の国の状況では追及もされないまま来ています

東京では、周辺に工業地帯があり、アメリカ軍基地以外に工場などが汚染の原因とも指摘されるなど、汚染源の特定は容易ではない。
ただ沖縄と同様に、汚染源の可能性のひとつとされるアメリカ軍基地内への立ち入り調査が実現せず、事実は解明されないまま…

おなじく、アメリカ軍が大規模に駐留する韓国やベルギー、ホンジュラスなどではアメリカ軍はPFASの使用を認め、調査結果を公表している。
しかし、報告書に日本の基地は記されていない。

2018年 米国防総省 報告書
2018年 米国防総省 報告書

私たちの命を支える水に何が起きてきたのか…その解明を求める声が、日増しに高まっている。

(沖縄テレビ)

沖縄テレビ
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