日本時間で20日、今季4勝目を挙げたパドレスのダルビッシュ有(35)。7回無失点の投球で与えた四死球はゼロ。球数は108球。まさに計算され尽くしたピッチングでマウンドを後にした。

その快投を前に、ダルビッシュ投手をパドレスの本拠地があるサンディエゴでキャッチしていたのがスポーツニュース「S-PARK」の取材で現地に入っていた藤川球児さんだ。

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目的はもちろん、2008年の北京五輪や2009年のWBCでともに日本代表として戦ったダルビッシュ有に、投手としての現在地点を聞くためだ。

いまやメジャー最高の投手とまで称されるダルビッシュ投手が、藤川さんと2人きりという贅沢な空間でピッチングについて語り尽くしたおよそ1時間。

パドレスの本拠地があるサンディエゴへ向かった藤川球児さん
パドレスの本拠地があるサンディエゴへ向かった藤川球児さん

そこにはこれまでとは違う大きな変化が起きつつあるメジャーリーグの最新投球術、そして佐々木朗希の存在もあった。

「大きい変化が打てなくなっている」

藤川:
まず、今日のピッチング練習なんですけど、球数的にはあんなものですか?

ダルビッシュ有:
今日は(球数)多かったです。今日は変化球、スライダーとカーブの練習をしたかったので。今年あまり自分の中で納得の行くような曲がり球を投げられていないので、ちょっと今日は練習したいなと。

この日のブルペンでの練習についてそう話したダルビッシュ投手は、藤川さんに「納得の行くような曲がり球」という言葉を口にした。

それは何を意味するのか?早くも4勝目を上げた今シーズン、感じていることがあるという。

ダルビッシュ有:
僕が投げているちっちゃいスライダー。僕は「カット」って言っているんですけど、そういうちっちゃい系の(変化球は)、「スラット」とか言われたりしますけど、そういう指標がすごく落ちてきている。数年前は良かったんですよ。88マイル(約142キロ)ぐらいの小さいやつが。

ただ今は(打者が)みんなそれを見ているから、それに対して合うようになってきて、逆に大きい変化がみんな打てなくなって来ている。

横の大きい変化の指標が良くなっているということで、僕のスライダーは横が20インチ(約51センチ)ぐらい曲がるので、それを左打者のバックフットに投げない手は無いだろうと言うことで、最近ちょっと。

メジャーリーグの打者に生まれつつある変化と、自らの投球内容について語り始めた。

「チームが自分に求めるのは、完全試合じゃ無い」

そして話は究極のピッチングに。大投手・ダルビッシュ投手の口から出たのは、完全試合や27球アウトといったものではなかった。

投球練習をするダルビッシュ有投手
投球練習をするダルビッシュ有投手

藤川:
究極のピッチング。ダルビッシュが考える27人のアウトの仕方は。

ダルビッシュ有:
とにかくクオリティースタート。できれば7回。2失点以内。そこは最低ラインで、何とか行きたいなっていうところまでしか今は考えられないですね。

藤川:
それができたら、アメリカに来ても、後輩たちにもそれが一番?

ダルビッシュ有:
自分の感覚はそうで、例えば大谷選手とかになれば多分完全試合を毎回狙っていると思いますし、分からないですけど、27奪三振とか、そういうふうに夢を大きく見るって言うのはすごく大事だったりするので、そういう気持ちを持ってもらいたいですけど。

藤川:
求めるのは、「究極の“求められる”ピッチング」って言うことですね。

ダルビッシュ有:
そうです。チームが自分に対して必要なのは、完全試合とかじゃ無くて、“チームを勝たせてほしい”って言うのが一番大事じゃ無いですか?

特にこっちの人って、日本よりも他人のことを全く気にしていないので、自分が完全試合しようが何しようが次の日とかちょっとしたら忘れるので。とにかく勝ってほしい。だからとにかく勝つピッチング。それに一番近いのがQS(クオリティースタート)とハイクオリティ。

佐々木朗希は「出力が高すぎる」

子供の頃から祖父と一緒に日本のナイター中継を見ていて、「有君もいつかはここに行ってね」と言われていたというダルビッシュ投手。今でも日本のプロ野球を見て、すごくいいなと思うこともあるという。

藤川:
そんな日本でやっている今の若い選手の中で、有はたくさんの選手に注目していると思うんですけど、僕この前(日本で)完全試合を見たんですよ。

ダルビッシュ有:
佐々木投手の。いやもうすごいなって。本当に出力が高すぎて、それで抑えちゃっているっていう状態じゃないですか。基本的に技術って言うのは本人も持っているしこれからも伸びていくと思うんですけど、現時点では、技術が無くて押さえられるられるぐらいの出力を持っちゃっているっていうのがすごいんですよ。

藤川:
出力に関して俺も同じように考えていて、佐々木投手(20)は、ハイパフォーマンスというか、もう持っているエンジンが違う。有だったら、どういうふうに25歳ぐらいまで持って行こうとする?

ダルビッシュ有:
自分が佐々木投手だったらですか?むずかしいですね…。

このあとも令和の怪物・佐々木朗希について語り合ったダルビッシュ有と藤川さん。

今週の「S-PARK」では、藤川さんがダルビッシュ有にぶつけた意外な質問とその答え。ダルビッシュ投手の考える変化球論とメジャーリーグで生まれつつある大きな変化などが特集される。

S-PARK 2週連続MLB特集!現地総力取材!
22日日曜:23時15分~ ダルビッシュ×藤川球児対談
(フジテレビ系列にて放送)