私がお伝えしたいのは中国ゼロコロナにかかる驚きのコストです。北京や上海では毎日、ほぼすべての市民を対象にウイルス検査が続き、感染者のあぶり出しに必死です。ある証券会社の分析では、こうした検査が続いた場合、その費用は最大で年間34兆円、中国GDPの1.3%にもなると試算されています。ポイントはこちら、それでも守りたい習主席のメンツ?注目です。

【注目ポイント・記者解説】

このところ連日50人程度の市中感染が確認されている北京では、2000万人を超えるほぼすべての市民に毎日のPCR検査を義務づけ、感染者や濃厚接触者を徹底的に隔離しています。同時に、公共の施設の入場などに48時間以内(場所により一週間以内)の陰性証明を必要とする規制も導入していて、仮に現在の感染の抑えこみにいったん成功したとしても、当面は定期的なPCR検査が日常生活に欠かせない、新たな「ゼロコロナの日常」が続くとみられます。

中国の東呉証券研究所のアナリストは、こうした2日に一度の「北京並み」の検査が他の大都市も含めた人口5億人規模に広がった場合、その費用は年間で最大1兆7000億元、日本円で34兆円になると試算しました。極端だと思いたい想定ですが、中国のGDPの1.3%、税収の7.2%にあたるという莫大なコストは割に合うのでしょうか?習近平指導部は、中国のコロナの抑えこみを大きな成果として誇ってきて、2021年まで他の国に比べ死者・感染者は少なく、経済への悪影響も小さかったのは事実といえます。集中的・短期間の対策でゼロコロナが達成できるのであれば、中国政府が主張するように「コスパがいい」と言う余地があるかもしれません。ただ感染力の高いオミクロン株にはこれまでの成功体験が通じないようで、北京では感染者数がなかなか減らず、集中的な検査は「あと3日」、その後「さらに3日」と、上海同様、泥縄式に延長され、コストは膨らむばかりです。習主席は5月5日の重要会議で「国の防疫政策を疑い、否定するあらゆる言動と断固戦う」と述べ、ゼロコロナの方針転換はあり得ないことを強調しましたが、まさに正念場と言えます。

(国際取材部・岩佐雄人)

岩佐 雄人
岩佐 雄人

FNN北京支局特派員。東海テレビ報道部で行政担当(名古屋市・愛知県)、経済担当(トヨタ自動車など)、岐阜支局駐在。2019年8月~現職。