岡山市は、パンの購入量が全国トップクラス。そんな「パンのまち」岡山の味を全国に広げる1人のパン職人の思いに迫る。

「パンのまち」岡山を代表する職人…こだわりのパンを提供

今や定番の1つとなったカレーパンに、上品な甘みが特長のクリームパンなど、約70種類のパンが並ぶ岡山市北区の「おかやま工房 リエゾン」。できあがるとすぐに売り切れる人気ぶり。

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客A:
近所だからよく来る。子ども用のパンがあるので、つい来てしまう

客B:
種類が多く、季節に合わせて商品が出ているのが良い

大人気のパンだが、実は岡山市は、その消費量が全国トップクラス。
全国の県庁所在地と政令市を対象にした1世帯が1年間に買うパンの量のランキング。岡山市は56.4kgで1位となっている。

そんな「パンのまち」岡山を代表する職人の1人、おかやま工房の河上祐隆代表。

河上さんは18歳で職人の道に入り、22歳の時に約1,400万円の借金をして、小さな店をオープンさせた。今では1日に訪れるお客さんは約1,500人、県内でも有数の繁盛店に育て上げた。

そんな河上さんのこだわりは、100%国産の小麦を使ったパンづくり。長年の研究で、安全安心でおいしいパンを生み出した。

おかやま工房・河上祐隆代表:
(パン作りで)唯一手作りはどこかというと、作業台で生地に触れること。ここでパンの味は変わる。生物化学を勉強していたので、どのように生地に触れるとパンがふわっとおいしく焼きあがるか、理論で理解している

もうひとつのこだわりは、「焼きたて」。一度にたくさん作るのではなく、小出しにすることで、焼きたてのパンを提供している。

おかやま工房・河上祐隆代表:
小売業のように商品を並べてしまうと、どんどん劣化老化してしまうので、パン屋は棚を埋めるのではなく、どちらかというとチャンスロスを作ってでも、おいしい焼きたてのパンを提供することが大事

「リエゾン・プロジェクト」…パン屋を開きたい人にノウハウ伝授

おかやま工房の直営店は、県内に2店、海外に2店。
しかし、河上さんの味は全国に広がっている。その理由は…

おかやま工房・河上祐隆代表:
地域の人に、地域の人のためのパン屋を作ってもらう、それがパン屋成功の秘訣(ひけつ)。開業の手伝い、支援をするというリエゾン・プロジェクトを立ち上げた

河上さんが立ち上げた、リエゾン・プロジェクト。
経験、未経験を問わず、パン屋を開きたい人を募り、パンの作り方から陳列の仕方、接客といったノウハウを伝授する。

フランチャイズではなく、目指すのは独立開業。その研修期間は、たった5日間。

おかやま工房・河上祐隆代表:
5日間で経験がない商売がすぐできるのはあり得ない。パン業界でも先輩たちから、「うさんくさいことをしている。お前も3年修業したのに、なんで5日間でパン屋ができるのか」「訳がわからない」(と言われた)。誰も理解できない

誰もが不可能だと思っていたことを実現させたのは、河上さんが独自にまとめたマニュアルだった。
長年の経験で培った職人技や感覚的な部分を、未経験者でもできるように数値化したこのマニュアルが、たった5日間で誰でも河上さんのパンづくりを習得できる研修を生み出した。

受講者(主婦):
もう少し年を取ってからやることがあったら良いなと思ったのと、パン作りが好きなので参加した。メロンパンやシナモンロールを焼くのが好きで、今回習って、全然作り方が違うことがわかった

受講者(会社員):
できれば自分の住んでいる地域に店を出せれば良い。近所の人においしいと言ってもらえる店ができたらという夢を、この5日間で強く感じた

受講者の夢をかなえるこのプロジェクトでは、これまでに全国で300以上の店が開業した。

「安全でおいしいパンを1人でも多くの人に」コロナ禍でさらに注目も

最近では、コロナ禍で打撃を受けた飲食店などの業態の転換先として人気が高まっているというパンづくりの世界。
河上さんのプロジェクトが、コロナ禍をきっかけに、さらに注目を集めるかもしれない。

おかやま工房・河上祐隆代表:
安全でおいしいパンを1人でも多くの人に提供したい。届けたいという思いが、直営店ではなく、開業支援という形に。人生は100年時代、仕事を辞めて定年してからも、人生が長い。第2の人生で何か、世のため人のためになるようなことが1つ、パン屋で提案できれば

安全でおいしいパンを1人でも多くの人に…
「パンのまち」岡山で生まれた河上さんの思いは、受講者の夢とともに広がり続けている。

(岡山放送)

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