2022年3月31日に退職を迎えた人の中に、30年以上に渡って消防の第一線に従事した男性がいた。
常に危険と隣り合わせの現場で男性が経験したもの。そして、後輩たちへ託した思いを取材した。

的確な指示で隊員を率いるビックボス

上地さん同僚との会話:
あっという間だな。本当、あっという間だったね

那覇市消防局 西消防署に所属する上地晃さんは、火事や災害の現場で隊員を率いて、活動の指揮を執る指揮隊長に就いている。

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西消防署 上地晃さん:
この33年の消防人生、これだけ多くの仲間に囲まれて全う出来たんだろうなと

1988年に那覇市消防局に入庁し、現場だけではなく消防の活動計画をまとめる警防課や119番通報の窓口となる指令情報課などを歴任した。

百戦錬磨で人望も厚い上地さんに、同僚や後輩は全幅の信頼を寄せる。

西消防署 警防隊 松田裕史さん:
災害現場での諦めない気持ちですとか、隊員の安全管理をしっかり見ている

西消防署・救急隊 中村広康さん:
頼れる上司ですね。的確な指示があったりとか、責任を伴う事はきちんと全て決断していただいて、僕らにとっては「ビックボス」です

西消防署 上地晃さん:
いつもより良く言ってくれているのかなって…良い後輩もって幸せですね

「心が憔悴した」一時退避を初めて命じた火災現場

33年あまりの消防人生を歩んできた上地さんが、最も記憶に刻まれた現場がある。

西消防署 上地晃さん:
焼け跡を目の当たりにしたときは、十何時間という活動でしたけど、体の疲れと言うよりかは、心が憔悴したのを覚えていますね

「2019年10月31日 首里城火災」

その日、上地さんは現場で隊員達の活動を指揮した。

西消防署 上地晃さん:
首里城の正殿の中で、地獄のような暑さの中で隊員達が炎と闘っている。最悪の事態ですね。これまでに経験したことない火災でした

現場では、1000度にも達する熾烈な輻射熱や火災旋風。さらに正殿を囲う城壁など、隊員達の前にいくつもの障壁が立ちはだかった。
容赦なく迫る炎に、上地さんは決断した。

西消防署 上地晃さん:
これ以上継続した場合に、隊員達に被害が出ないだろうか。一時退避を下命した

活動の継続を困難と判断した上地さん。
一時退避を命じたのは、消防士となって初めての経験だった。

西消防署 上地晃さん:
我々が二次災害で負傷するというのを、安全を第一に考えた戦術であれば避けるべきなんですね。しかし、諦めるわけにはいかない。一旦は下がりますけど、我々が諦めることは出来ないという事ですよね

結果的に、首里城火災では正殿を含む6棟が全焼し、隊員1人が熱中症で運ばれたものの、他の隊員や市民にけが人を出すことなく、周辺住宅への延焼も食い止めた。

西消防署 上地晃さん:
無くなって初めて気付くんですけど、我々沖縄県民の誇りを二度と失ってはいけない。そして、忘れてはならない火災でした

後輩に伝えたい思い「どんなに過酷な現場でも諦めない」

消防士となって33年と7か月
上地さんは2022年3月31日、退職の日を迎えた。

西消防署 上地晃さん:
正直言って、ホッしています。肩の荷が下りたような感じですね。いろんな現場があったから、苦しんだり悲しい現場だったり、いろいろ経験しました。どんなに過酷な現場であっても、最後まで諦めない…首里城火災を経験しての事ですけど、これが必要だなと強く思っています

歴史に残る火災に立ち向かった1人の消防士が、後輩たちへバトンを託し、現場を退いた。

(沖縄テレビ)