92歳の妹 “命”ある限り…兄の無実を訴える

61年前に三重県で起きた「名張毒ぶどう酒事件」の10度目となる裁判のやり直し=再審を求めた異議審で、奥西勝元死刑囚について名古屋高裁は3日、再審開始を認めない決定を下した。
奥西元死刑囚の死後、請求人として裁判を引き継いだが妹の岡美代子さんは、92歳となった今、さらなる戦いを強いられることになった。

兄の遺志を引き継いだ妹の岡美代子さん。奈良県の山添村で娘と2人で暮らしている。

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岡美代子さん:
苦労、苦労の毎日で、毎日の苦労はほんまに…忘れることなしにな

事件で兄が逮捕された後、奥西家は墓の場所を移されるなど村八分に…

岡さんはすでに名張を離れていたが、名古屋に面会に向かう母・タツノさんの付き添いなどをして家族を支え続けた。

母の死後も頻繁に兄のもとへ…。体調を崩して東京の八王子医療刑務所に移送されてからも、片道5時間かけて通っていた。

そして2015年、奥西元死刑囚は帰らぬ人に。岡さんは、兄の死後は再審を引き継ぐことを決意。

岡美代子さん(当時86歳):
兄の無実が晴れるまで、これからも兄のためにまた頑張ります

この時すでに86歳。弁護団は新証拠を出し、一刻も早い再審開始を求めていた。

2021年11月、コロナ禍の中で迎えた92歳の誕生日。

岡美代子さん:
来年(2022年)もこうして来てもらえたらな、そのうちにまた事件も終わりやろうかな。命がなくなったら、かなわんと思って

命ある限り…兄の無実を訴える岡さん。山間の村でひっそりと暮らしながら、裁判所からの知らせを待ち望んでいた。
しかし、名古屋高裁は再審を認めまなかった。

岡美代子さん:
もう残念でたまりませんわ。はぁ…胸がいっぱいで。なんてことですやろなぁ、裁判所も

三重・名張市葛尾。事件現場にいた村人32人のうち、今も生きているのはわずか6人。

男性:
そりゃ当然やろと私は思ってる。(裁判所の決定は)正当やろ。葛尾の人はそう思ってる、みんな

岡美代子さん、92歳。兄の無念を晴らすため戦い続けるが、残された時間は…

岡美代子さん:
今度はうまいこといくかなと思って楽しみにしていたのに、やっぱりあかんだな。本当に悔しい…

(東海テレビ)

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