スキー場と家族の物語。今シーズン、長野・王滝村のスキー場が新たな指定管理者の下、再スタートを切った。支配人は地元の女性。祖父と父が深く関わったスキー場に再びにぎわいを、と奮闘している。
支配人に今シーズン就任
この記事の画像(17枚)さっそうとゲレンデを滑るスキーヤー。
愛知から:
標高が高くて柔らかい雪で滑りやすい
滋賀から:
雪が最高です
ここは王滝村の御嶽スキー場。この日はあいにくの天気だったが、晴れた日には雄大な御嶽山が望める。
スキー客に対応する家高里加子さん(35)。今シーズンから支配人を務めている。
御嶽スキー場支配人・家高里加子さん:
安全第一なので、それを考えて一日を過ごしている。とても責任が重いですね
開業から60年目の今シーズン、スキー場は新たなスタートを切った。
スキー場を所有する村は、業務報告書の提出が遅れたなどとして指定管理者を都内の業者からカレー店などを手掛ける地元の会社「シシ」に変更。
これに合わせて、名称も「おんたけ2240」から、かつてと同じ「御嶽スキー場」に戻した。
指定管理者「シシ」・岩堀翔太社長:
スキー場は村にとってはかけがえのない施設であり、冬の木曽を支える基幹産業。御嶽スキー場を活性化させることが、王滝村、木曽の発展につながる
祖父と父が愛したスキー場
節目のシーズンに支配人を任された家高さん。実は、スキー場に特別な思い入れがある。
御嶽スキー場支配人・家高里加子さん:
祖父が御嶽スキー場を開設しまして、父が御嶽スキー学校長として務めていた。私にとってスキー場は大切な場所
祖父の卓郎さんは元村長。1961年のスキー場開業を推し進めた一人で、家高さんは幼いころ、よくスキーに連れてきてもらったそうだ。
麓で旅館「たかの湯」を営んでいた父・弘文さんは一時、スキー学校の校長を務めていた。
スキー場は旅館にとっても大事な施設。2014年の御嶽山の噴火災害で一時、営業ができずにいたが、入山規制の緩和で再開が決まった時、弘文さんも安堵した様子だった。
父・弘文さん(当時):
ようやくこの日が来たかなという気持ちでいっぱい。安心しました
御嶽スキー場支配人・家高里加子さん:
2人とも御嶽スキー場が大好き。駐車場がいっぱいになって、王滝村の冬場遊ぶ場所は、ここという感じでした
長く伊那市のバス会社で働いていた家高さん。2016年に転機を迎えた。父・弘文さんが亡くなったのだ。
客足はピークの1割以下…「立ち直らせたい」
家高さんは村に戻り、噴火災害にコロナ禍と窮地の続く旅館を支えてきた。
御嶽スキー場支配人・家高里加子さん:
(噴火以来)お客さんが減っているなと感じて、少しでも地元の人や観光で来る人に、王滝村っていいところだなと感じてもらえる場所を提供したいと
その一方で、冬場はスキー場でアルバイト。自身が楽しんだ頃とすっかり変わってしまったスキー場を見つめてきた。
御嶽スキー場支配人・家高里加子さん:
平日のお客さんがこれだけしかいないのかと、びっくりした。昔のにぎわいが全くないのを感じまして
スキー人口の減少に加え、噴火災害の影響もあり、30年前に66万人あった入り込みは、近年は4万人前後まで落ち込んでいる。
祖父も、父も、そして自身も通ったスキー場ににぎわいを取り戻したい…。その思いから、家高さんは指定管理者の「シシ」に入社し、支配人に立候補したのだ。
御嶽スキー場支配人・家高里加子さん:
ここで何とかしないと前には進めない。自分が先立って王滝村の皆さんと一緒に、御嶽スキー場を立ち直らせたい
「お客に感謝」 60年目のシーズン
2021年12月29日のシーズン初日。
御嶽スキー場支配人・家高里加子さん:
お客さまの前では必ずあいさつと笑顔。遠くまで来ていただいていますので、おもてなしの心を持って接客をしてほしい
「家高支配人」の挑戦が始まった。
御嶽スキー場支配人・家高里加子さん:
御嶽山もくっきり見えますね
中京圏や関西圏に根強いファンを持つ御嶽スキー場。指定管理の引継ぎに手間取り、オープンは10日ほど遅れたが、初日は360人が訪れた。
名古屋から:
すごく御嶽スキー場が好きで、オープンを待ちわびて、きょうは頑張るぞって意気込みで
御嶽スキー場支配人・家高里加子さん:
カラマツペアリフト、8時35分スタートにします
午前8時半過ぎオープン。
御嶽スキー場支配人・家高里加子さん:
たくさんのお客さんに来ていただいて、無事に60周年迎えたことをうれしく思います。お客さんには感謝しかない…思うと涙が出てきそう
雪質の良さと雄大な眺望はスキー場の自慢。そこに、新たな魅力が加わった。
御嶽スキー場支配人・家高里加子さん:
バイクのウエアを作っている「クシタニ」というブランドなんですけど、ウインターシーズンに初デビューということで
バイクウエアの人気ブランドのウインターグッズを扱うショップが国内初出店。夏場もツーリストを呼び込もうと、通年営業する予定だ。
レストランも、てこ入れ。麓のカレー店「ララカレー」の本場、スリランカカレーを提供している。
カレーを食べた客:
スパイシーです。王滝村の赤カブ(の漬物)と一緒なのがいい
新たな一歩を踏み出した「御嶽スキー場」。まだ利用客は思うように伸びていないが、前を向く家高支配人に迷いはない。
御嶽スキー場支配人・家高里加子さん:
ここでしか味わえない雪質、景色。ここに来ないと、この景色は見られないことを皆さんに感じてもらいたい。お客さんをいっぱい呼びたい
(長野放送)