異例の水際対策は一転、撤回に

成田空港を12月2日午後、取材すると、「オミクロン株」により外国人の入国が禁止されている中、到着客の姿はほとんどなかった。

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政府は11月29日、航空各社に対し日本に到着する全国際線の新規予約の停止を要請。

日本航空や全日空の国際線の予約ができない状況となり、SNS上に「令和の鎖国」との投稿も相次いだ。

しかし異例の水際対策は2日になり一転した。

岸田文雄首相:
一部の方に“混乱”を招いてしまった。私の方から国土交通省の方に邦人の帰国需要について十分に配慮するよう指示をした

岸田首相は国際線新規予約の停止要請を撤回した。

いきなりの方針変更に多くの日系企業が進出し、約7万6000人の日本人が暮らすタイではさまざまな声があがった。

タイ・バンコクに暮らす日本人:
(状況が)コロコロ変わったりするので。(帰国便の)チケットも取っていいのか予定が組めない部分もありますよね

タイ・バンコクに暮らす日本人:
正直しょうがないのかなと思います。それよりも“臨機応援”に対応していく方が大切かなと…

海外でも報じられた政府の迷走。一方で要請の撤回は仕方ないという声も聞かれた。

岸田首相も“寝耳に水”だった

実はこの混乱の裏には、国土交通省の“勇み足”とも取れる行動があった。

12月1日に知ることとなった今回の日本到着便の新規予約停止。これは国交省が航空各社に要請したものだったが、実は3日も前の11月29日に行われていたことがわかった。

しかも国交省から松野官房長官に報告があったのは、1日の報道があった後のこと。午後4時半から官邸で行われたタスクフォースの席上だった。

さらに岸田首相に至っては1日夜になって報告されたということだ。つまり岸田総理も“寝耳に水”の事後報告だった。

松野官房長官も“ちぐはぐ”な回答に

このため1日午後4時過ぎの松野官房長官の会見では、記者から国際線の新規予約停止についての質問が飛ぶと、ちぐはぐな回答があった。

――国際線の新規予約停止について?

松野官房長官:
本日の具体的な議題に関して現在私、手元に資料がございませんので、改めて事務方から報告させていただきます

この時、松野官房長官は何も知らされていなかったのだ。

そして夜になって報告を受けた岸田首相は、日本人が帰国できるよう対応を国交省に指示したのだった。

今週月曜日11月29日の時点では、12の国や地域にとどまっていたオミクロン株の感染者。3日後の12月2日には日本を含む28の国や地域に拡大し、アメリカでも初めて確認された。

去年も感染が急拡大した年末年始。今年の年の瀬も警戒が必要だ。

政府内の意思疎通は十分だったか

イット!のスタジオでは、コメンテーターでジャーナリストの柳澤秀夫さんに話を聞いた。

加藤綾子キャスター:
岸田首相も知らずに重要な対策が決まっていたということに驚きなのですが、柳澤さん、こういったことはあるのですか?

ジャーナリスト・柳澤秀夫氏:
あんまりないと思うんですけどね。これだけ重大なことが官邸に丁寧に説明されずに、なぜ起きてしまったかは徹底的に検証すべきでしょうね。本来国は国民を守るのが一番の役割で、海外から自国民が帰国する時に帰国できなくなるようなことが認められてしまうということ、そんな由々しきことを官邸あるいは総理大臣が知らない間に決まっていたとすれば、国民の国に対する信頼が大きく揺らいでしまいますから

加藤綾子キャスター:
臨機応変に対応すること良いことだと思うのですが、政府内の意思疎通が十分に行われているのかというところは気になります

(「イット!」12月2日放送より)