人気No.1の自治体に何が?

「2021年住み続けたい街ランキング(関東)」1位。(※出典:リクルートによる調査)
自然豊かな井の頭公園や若者たちが集まる吉祥寺を有する東京・武蔵野市が今、揺れている。

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11月中旬の週末、駅前では道を隔てて複数の市民団体が拡声器でそれぞれの主張を叫び合い、騒然としていた。騒動の原因となっているのは、地方公共団体の特定の事項について地域の住民が投票により意思表示する「住民投票」について、武蔵野市の松下市長が施政方針演説で触れた提案だ。

武蔵野市・松下玲子市長:
市民参加を進めるため、常設型の住民投票制度の確立を目指します。

施政方針演説を行う松下玲子・武蔵野市長

武蔵野市はその住民投票に関し、「18歳以上で3カ月以上武蔵野市に居住すれば外国人でも投票権を認める」という条例の制定を目指すとしている。

施政方針演説の後、取材に応じた松下市長は――。

武蔵野市・松下玲子市長:
私たちは市政を運営していく上で、市民参加を進め市民自治を進めていく上での市政の課題については、国籍にかかわらずそこは一緒に考えていきたいと考えています
基礎自治体にとって住民というのは、その地域にお住まいの方、住民登録されている方という認識を持っていますので、様々な事柄で市政の課題について市民が協力して行っていかなければならない中で、改めて住民投票制度を設けるにあたっての、住民の定義、年齢とか国籍について議論をする中で外国籍の方を排除するということが、それは違うんじゃないかという考えを示してきたものです。

“外国人の住民投票”に市民の反応は?

市政の重要課題について意思表示を行う住民投票を、国籍の区別なく外国人も同様に行えることにするという条例案に対し、武蔵野市民の反応は様々だ。

賛成派:
武蔵野市もお店が沢山あって多種多様化されている。いろんな方の意見を聞いて武蔵野市が良くなるならその方がいい。

反対派:
外国人が大勢来て武蔵野市を乗っ取られるような気がする。ちょっと想像しただけですごく怖い。

武蔵野市に20年以上住み、吉祥寺駅近くでネパール料理店を営むセレスト・アルナさんは、日本人との違いを常に感じていたという。条例には賛成の意見だ。

セレスト・アルナさん:
(過去に)仲間が「投票に行こう」と言ってきたけど「私たちは外国人だから行けないよ」と断ったことある。一緒に行けなくて寂しかったので(住民)投票があった方がいい。

武蔵野市に20年以上住むセレスト・アルナさん

また他の自治体に住む外国人からは、「投票できるなら武蔵野市に引っ越したい」という意見も出ている。

「外国人参政権」につながる?懸念の声も

さらに反対派の中には、実質的な「外国人参政権」につながるのでは、という懸念を持つ人もいる。こうした声に対して、武蔵野市の松下市長は取材陣にこう答えた。

武蔵野市・松下玲子市長:
住民投票は結果を決して拘束するものではない。意見を表明して頂いたものを市長や議会は「尊重する」とされているので決選挙権とは全く異なる。

外国人の住民投票の是非…スタジオでの議論は?

この問題を取り上げるにあたり、番組では松下武蔵野市長に出演をオファーしたが公務多忙ということで実現しなかった。
今回は、番組コメンテーターの橋下徹氏に加えて、新藤義孝・自民党政調会長代理、移民政策や人口社会学を専門にする国士舘大学の鈴木江理子教授がスタジオに出演した。三者三様の主張がぶつかり合った。

元総務相の新藤氏は、地域住民だけでなく近隣から働きに来る外国人なども含め、コミュニティのための対話は欠かせないとしながらも、「重要な意思決定機関に外国籍の方を入れるというのは筋が違うのではないかと私は思っています。極めて慎重に扱わなければいけない。今、どんどん国の権限は地方に渡しているわけです。ですから地方分権の流れが強まれば強まるほどかつて国が行使していた権限を地方が行うことになる、国と地方の統治の方向がどんどん近づいているわけです。その意味においてこの流れは、逆だと思っています。」と、武蔵野市の住民投票条例案には慎重な姿勢を見せた。

一方、鈴木教授は「同じ地域社会に暮らす住民であるということに、国籍や在留資格という違いはないというのが大前提であると思っています。例えば、会社であるとか大学で『あなたは外国人であるから意見を聞かないよ』ということはないと思うんですよね。社会の変化に応じて、ということ」と武蔵野市の条例案に賛同。
新藤氏の意見に対しては「国民主権というのが国家枠組みであることは理解できます。でも地域社会であれば住民主権というふうに考えることもできる」と主張した。

そして橋下徹氏は、「僕は地方分権推進論者ですけれども、安全保障問題で基地の問題を沖縄県の住民投票でやるというのは僕は大反対です。あれは政府の仕事なんですから。政府の仕事、国家の仕事、選挙権とか被選挙権とかに関わることは、これはやっぱり参加は認められない。日本国籍ある人だけ。」「ただし、住民投票で条件付きというのは地域のコミュニティのルールというのがあるわけですよ。ただ、そこも地域の住民といっても、何でもかんでも外国人がOKということではなくて、ここにはいろんな条件設定があると思います。僕はやはり、納税してコミュニティに貢献してもらっている以上は、それに相対応するようなゴミ出しのルールとか公園のルール、こういうところの法的拘束力がない形での住民投票には、参加を否定する理由はない。」と自らの意見を中間的としながら、こんな懸念も示した。
「地域の実情があって、例えば国境なんかで非常に激しく、対馬にしても何にしても、国境問題があるようなところに、これから中国人も韓国人もどんどん自由に移動ができる時代になってきた時には、やっぱり国家に関わることに関しては、(住民投票に)法的拘束力がなくてもそこに意思表明をするというのは問題があるんじゃないか。

市議会でも意見は対立

これから市議会で本格的な審議が始まる武蔵野市の住民投票条例案。市議の中でも意見が対立している。

賛成派の山本ひとみ市議は――。

山本ひとみ市議:
元になった自治基本条例で、市民の定義は「外国籍を排除しない」となっている。外国籍の方も武蔵野市の市民である以上、意見を反映するのは大切だ。

山本市議はさらに、住民自治の進化という点では、市民アンケートや意見交換会と同様に外国人も住民投票に入れることは当然だと主張した。

山本ひとみ市議

一方で、反対意見を持つ小美濃安弘市議は、今回の条例案には市民の声が十分に反映されていないと主張しつつ、「国民主権」の観点から問題があると指摘する。

小美濃安弘市議:
住民投票というのは意思決定機関に対して住民が直接意思を表明する。これが意思決定に影響を与えるわけなので、国民主権の考え方からすると、この(住民投票の)投票権は当然国民であるべきだ。

小美濃安弘市議

「住み続けたい街」として人気を集める武蔵野市を二分している住民投票条例案。
はたして、その行方は?