両党の「壁」は撤去されたが国会前の合流は“決裂”

「ウィーーーン、ががががが」
この年明け、国会議事堂の中に入るとメインフロアである2階に工事の音が響き渡っていた。衆議院の立憲民主党の部屋と国民民主党の部屋との間に築かれていた壁を取り除く工事の音だ。

しかし、去年から続いていた立憲・国民両党の合流協議は、正式な党首会談にまで持ち込まれたものの結局合意はできず、通常国会前の合流は絶望的となった。合流の方向性までは確認しながらも、なぜ事実上の決裂と言える結果になったのか…。

なぜ合流する必要があるの?

そもそも両党が合流を目指したのは、2020年内の解散総選挙が有力視される中で、野党の勢力を結集して安倍政権・自民党に対抗する狙いがあるからだ。

合流の必要性では両党とも一致しており、実際、昨年末に、両党の幹事長レベルでは次期選挙での比例代表の統一名簿をめぐる点など、合流後の具体的な確認事項でも合意している。しかし、10日に行われた枝野・玉木両代表による党首会談では合意には至らず、その後、両党は党内で議論したものの、国民民主党側では賛成と反対が拮抗し、意見をまとめることはできなかった。

両代表による党首会談・1月10日

「破談」の背景には党首会談でのちゃぶ台返し?

この党首会談に向かう前、立憲民主党の枝野代表は、福山幹事長・安住国対委員長と自身の議員会館事務所で協議していた。そして党首会談10分前、事務所から出た枝野代表は「この1週間、歌っていないなぁ」と記者団に漏らした。大好きなカラオケを我慢してまで、この合流協議に没頭していたことを物語る一言だった。

実際、私たちが取材しただけでも両代表は年明けから非公式会談を含め、10時間近く話し合いを行っていた。前日もホテルで4時間以上も非公式協議をしており、合流に向けた道筋は「大詰め」(立憲幹部)の段階のはずだった。

どんな歌を歌いたい気分か、と聞かれた枝野代表は「…答えを準備していないからわからない」と語り、合流協議については触れないまま、自信は見せながらもどこか不安げな表情で会談へ向かった。

そして国会内での正式な党首会談が始まった。当初それほど時間はかからないだろうと予想されていた会談だったが、1時間経っても2時間経っても終わらない。ついに3時間が経とうとした頃、部屋のドアが開いた。会談を終え出てきた枝野代表の目には怒りが溢れていた。

その後、両代表が並んで発表した一致事項は「この間の経緯と議論についてそれぞれの党内議論に付すこと」という形ばかりのもの。つまり合流の合意には至らなかった。この日国会を去る際の玉木代表の顔は完全に疲れ果てていた。

なぜ合意できなかったのか。焦点は政党名?

なぜ会談は事実上の“決裂”となったのか。取材から見えてきたのは立憲民主党側の「党名」に対する執着だ。立憲側は断固として「党名だけは絶対に譲らない」という姿勢だ。

そもそも旧民主党が維新の党と合流した際に党名を民進党とした時も、当時幹事長だった枝野代表は、最後まで党名の変更に反対だった。さらに希望の党からの排除問題を受け、自身が1人で立ち上げた立憲民主党において、91人の国会議員を率いる代表となった今、党名を変えて次の選挙を戦う選択肢は、枝野氏にはありえないのだ。ここにその会談で立憲民主党が国民民主党に提示した紙がある。

「これ以上は譲れない」
これが立憲民主党の限界ラインなのだ。

「何なら(合流後の)代表をやるか?」
党首会談で枝野氏は代表の座を玉木代表に譲るともとれるこんな発言をした。しかし対する玉木代表は言い返さなかったという。感じられるのは、枝野氏の、代表の座を譲ってでも守りたいほどの党名への執着心だ。

一方で、党名へのこだわりは国民民主党側にもある。“希望の党騒動”で袂を分かった政党に吸収合併される、すなわち”立憲にひれ伏す”形には、最大の支持団体「連合」の中にも強い拒否感を持つ人が多い。だからこそ、玉木代表も枝野代表の提案を簡単に丸呑みするわけにはいかなかった。

賛否両論の国民民主党の会議。なぜまとまらず?賛成派と反対派の思惑は?

国民民主党・両院議員懇談会(1月15日)

1月15日、国民民主党は衆参両院の所属議員を集めた両院議員懇談会を開いた。そこで玉木代表は、これまで明かしていなかった10日の枝野代表との党首会談の協議内容を初めて説明した。

・新しい政党名は「立憲民主党」ではなく「民主党」はどうか
・「原発ゼロ法案」は一度撤回して再協議してはどうか
・新党の綱領に「改革中道」との文言を入れてもらえないか

玉木代表は、国民民主党と立憲民主党は、あくまでも“対等な政党”だとして、立憲側に上記のような条件を提示していたと説明した。さらに、枝野代表がこれらの提案に全く応じず、その結果、協議は折り合わなかったという玉木代表の説明を受け、党内の議員たちからは大きく2つの意見が出た。

1つは「とにかく早くまとめて」「1つにならなかったら、何をやってるんだと言われる」「こじあけてでも交渉すると明言して欲しい」などの、衆院議員を中心とした“早期合流賛成派”の意見である。いつ解散選挙があるかわからない中で、国民民主党から出馬すれば、落選するかもしれないという恐れから、彼らは野党第1党の立憲民主党への合流を急いでいる。

もう1つは、「まだ、本質的な部分は詰まっていない」「丁寧に議論をして欲しい」という、参院議員を中心とした“合流慎重派”の意見である。2019年7月の参院選で、立憲民主党と熾烈な争いを繰り広げた国民民主党の参院側には、立憲への拒否感が根強く、未だ両党の参院は雪解け出来ていない。

先の臨時国会でも国民民主党は、立憲民主党と衆参両院で合同の「会派」を組んだが、一定の連携が機能した衆院とは異なり、参院側はさして機能しなかった。それだけに、「参院の信頼醸成をしたあとに合流協議をするのが普通」という合流慎重論があがっている。また衆院と違って、しばらく選挙がないことからも、参院側は合流を焦る必要がない。結局、この日の懇談会は、合流賛成論と反対論が拮抗し、意見がまとまることはなかった。

 

今後の連携への影響は…将来的な合流は可能なのか

この懇談会の最後に中堅議員は、所属議員21人の署名を添えて、改めて合流について協議する両院議員総会を開催するよう要請し、20日に総会で協議が行われることになった。

16日には、立憲民主党の福山幹事長が国民民主党の平野幹事長と会談し、20日の国民民主党の総会で、合流の可否について結論を出すよう申し入れた。結論を出さない国民側に対して、ついに立憲側の堪忍袋の緒が切れたのだ。しかし平野幹事長は「可否を問う総会になっていない」と述べていて、総会で合流について何かが決定される可能性は低い。

また政党の合流という重大な案件については、「党大会で採決する案件」との声もある。ただ1月19日に予定されていた国民民主党の党大会も、合流協議の難航で延期され、現段階では開催日時未定だ。

つまり、国民民主党の中で結論が出るめどは、現段階で立っておらず、さらに「1回で(合意が)出来なければ出来ない」と述べていた枝野代表が、玉木代表との党首会談に今後応じるかも不透明だ。

両党はすでに国会での「会派」は一緒になっていて、国会での連携には問題がないと話す。しかし、一度合流を真剣に議論しながら結局”時間切れ”で物別れになった影響は大きいといえる。

立憲民主党の幹部は「玉木がこんなにぼんくらだとは思わなかった」と交渉の失敗にため息を漏らした。一方で、国民民主党側からも「あの党は枝野さんの独裁政権だ」などと立憲側を批判する声が聞かれる。そして今後は、国民民主党の“合流積極派”議員による離党が相次ぐ事態も想定される。

今回担当記者として見えた景色は、“周辺が整えた合流準備に対し、当事者である枝野・玉木両党首の本気度が感じられない”という構図だ。本当に2人が合流したいと思っていたのか疑問が残る。それこそが今回のグダグダを招き、一体となって全力で自民党政権を倒すような体制が整えられない背景なのではないだろうか。

野党はこれまでも合流や分裂の際に混乱を繰り返してきた。直近では、民進党の希望の党への合流騒動があった2017年の混乱があったが、野党幹部は「デジャブ」だと漏らす。解散総選挙が近づいてくれば両党は再び合流に向けた協議を再開する可能性もあるが、今回の「破談」は再び両党に「壁」を作った形だ。今後の協議も難航が予想される中、国民からの厳しい視線にどう答えていくかが問われる。

(フジテレビ政治部 野党担当 柴木友和 大築紅葉 高橋洵)