6月から愛媛県内の飲食店の時短要請が解除された。
松山市二番町で長年、店を構える老舗の中華そば店も約2カ月ぶりに営業を再開。店主の再開に向けての思いを取材した。
コロナで長期休業 約2カ月ぶりに営業再開へ
昆布ベースの優しいスープと素朴な味が自慢の中華そば。
松山市二番町で店を構えて60年、高校野球ファンや有名人らも足を運ぶ「北山軒」。
新型コロナウイルスの影響で3月末から店を閉め、創業以来初めての長期休業に。そして、約2カ月を経て店を再開することになった。
北山軒・森永良子さん：
街から（クラスターが）出たやないですか。やっぱり、皆さんがおいでてくれる街が、そんなんじゃいかんと思ってね。ものすごく助かったのが、休業手当出してくれたこと。ありがたかったですよね
店に立つのは森永良子さん。長年、夫婦2人で切り盛りしていたが、2017年に夫の正則さん(享年78)が亡くなり、今は1人で店を守っている。
約2カ月ぶりの営業再開に向けて、仕込み作業に念が入る。
北山軒・森永良子さん：
手が動かないと思ってたけど、動きましたよ
手際良く包むのは、特製あんのギョーザ。休業前まで、だしをつぎ足しながら作っていたおでんは、また新しくだしを作り直した。
そして、中華そばのスープ。
北山軒・森永良子さん：
このスープを出すために、前に残してた分と持ってきた材料を入れて煮込んで、毎晩火を入れてました
――出来はどうですか？
北山軒・森永良子さん：
いい色ができとります。明日、お客さんに出せるなと思うけど
「店からも出したくない」営業再開を前にワクチン接種
店の再開の10日前、良子さんはかかりつけの病院で新型コロナウイルスのワクチンを接種した。
看護師：
消毒します
北山軒・森永良子さん：
お手柔らかにお願いします
看護師：
ちょっとチクっとしますね
北山軒・森永良子さん：
しました
看護師：
終わりました
北山軒・森永良子さん：
上手やね
北山軒・森永良子さん：
仕事してるので。だからね、店からも出したくない、人にもうつしたくない。みんなそういう気持ちでおったら大丈夫
当初、店は6月1日からの再開を予定していたが、ワクチン接種後の体調を考慮して、10日ほど開店を遅らせた。
常連客らが続々と来店…十数年ぶりの人も
再開当日、2カ月ぶりの赤のれん。いつもより早く店の準備を整えた。
北山軒・森永良子さん：
（おでんを味見して）あ、おいしい。おいしいって、自分が作っておいしいなんて…。（お父さんが）笑顔で見よる。仏壇に「今日からやるからね」と（報告した）
開店早々、常連客がやってきた。
北山軒・森永良子さん：
お酒やろ？
常連客：
ビールちょうだいや、最初1本
北山軒・森永良子さん：
え、珍しい
常連客：
半世紀くらいのお付き合いやけん。元気なもんじゃけん、ええわい
続いて訪れた男性は、名物の中華そばを注文した。
広島からの客：
2回目なんですよ。10年くらい前に1回来て。昔ながらの屋台のね、感じのやつが一番いいですよ
偶然にも営業再開日に十数年ぶりに来店したという。
北山軒・森永良子さん：
うれしいですよ。自分の体が生き返ったよう。ありがたいです。お客さん来ないだろうって話しよったけどね
当初の心配をよそに、お客さんが続々と訪れた。
常連客：
（ギョーザを食べて）いやぁ、うまいですね。北山軒のギョーザはパンチが効いているので大好きです
店に立つと、いつもの生き生きした姿が戻ってきた。近くのスナックのママは、北山軒と同じくこの日から営業再開だった。
スナックのママ：
10日（再開）と言われるんで、うちと一緒と思って。絶対に10日にあいさつだけはのぞいておこうと思って。2カ月休んでたこと忘れる、ここに来たら
北山軒・森永良子さん：
うれしいね。会えるというのは仕事でね。のれんを出すだけでホッとしてね。2カ月くらい休んでたら、だんだん自分が年寄りがしぼんでいくような気がした。何かね、また生き返りましたよ。うれしいよね。まだ、当分は頑張ろうという気持ちに
久々に生き返った老舗の味。森永良子さんはコロナに負けず、今日も店に立ち続ける。
（テレビ愛媛）
