パソコンでウェブサイトを見ている時に、突然ウイルス感染の警告画面が出てきた。
偽の警告画面や音声で相手の不安をあおり、表示されたサポート窓口に電話をするよう促して、金をだまし取るサポート詐欺。

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騙されたフリで偽のサポートセンターに電話

その手口に迫るため、テレビ大分の記者がサポート詐欺に悪用されているという電話番号の情報を入手し、だまされたふりをして実際に電話をしてみた。

詐欺グループの男:
もしもし。ありがとうございます。マイクロソフトサポートセンター・エドワーズでございます

記者:
今、外国につながっているのですか?

詐欺グループの男:
はい。心配しないでください

記者:
日本人の方が出るのかなと思い、驚いて。日本語お上手ですね

詐欺グループの男:
ありがとうございます

電話に出たのはマイクロソフトのサポートセンターをかたる、自称アメリカ人の男エドワード。
片言だが、会話には支障がない程度の日本語を話す。

記者は「パソコンに警告画面が出た」とだまされたふりをして伝えると、男は丁寧な口調で自分の指示通りにキーボードを入力するよう求めてきた。
ただ、その内容は手元にあるマニュアルを読み上げているようにも聞こえた。

詐欺グループの男:
キーボードをご覧になってください。私が言うとおりにしてください。WWW。3つW。それから山(YAMA)のY

こうしたわかりやすい言葉で説明して、記者をとあるサイトに誘導。そこでは番号を入力すると、何かのファイルがダウンロードできるようになっていた。

「ダウンロードして」と執拗に迫る男

男は自分の言う通りに番号を入力するよう記者に告げ、さらにこう指示した。

詐欺グループの男:
ダウンロード開始できるしてください

記者:
これはどういう作業?

詐欺グループの男:
どうしたお客様?ダウンロード開始できるしてください

記者:
いや、あの…

詐欺グループの男:
ダウンロード開始できるしてください

記者:
まだ、ちょっと…

詐欺グループの男:
心配しないでください、お客様。これは遠隔操作のためです。遠隔操作がないから、私が問題を確認できない

記者が知らないファイルをダウンロードすることをためらうと、男は語気を強め、こう畳み掛けてきた。

詐欺グループの男:
だから!これは一番危ない問題です。ハッカーたちはお客様のクレジットカードの情報を盗んで、お客様の全部の情報を盗むことができます。そして、全部のお金を盗むことがあります。
だから、この問題はすぐに処理しないと、誰でも手伝うことはできない。わかりましたか?
お客様の画面が真っ暗になって、お客様のパソコンが壊れる可能性があります。サイバーセキュリティーをお客様のパソコンに入れて差し上げます。ダウンロード開始できるしてください

男は不安をあおる言葉とともに、「ダウンロード開始できるしてください」という言葉をわずか5分ほどの間に7回繰り返した。とにかく記者のパソコンを遠隔操作しようと執拗に迫ってきた。

もし、ダウンロードをして、遠隔操作を許してしまうと次のような展開が予想される。
詐欺グループは実際にはウイルスに感染されていないにも関わらず、相手のパソコンを遠隔操作して、問題が解決したように見せかける。その後、信じた相手からサポート料金として金をだましとる。

また警察によると、詐欺グループに遠隔操作を許してしまうことで、パソコンの中の個人情報を不正にコピーされたり、不正なソフトをインストールされたりする危険性もあるという。

さらに一度金をだまし取られると、さらに詐欺グループにつけこまれる恐れがある。
2020年、大分県内ではこのサポート詐欺の手口でだまされた高齢の男性が「少額のため国際銀行での引き落としができない」などと追加の支払いを求められ、電子マネーあわせて約1,300万円分をだまし取られる事件が起きた。

「外国から電話」と言っていたが…「港区から話している」

「その手には乗らない」
記者は遠隔操作を迫る電話口の男の要求をかわし、ここで自分の正体を明かした。

記者:
私は日本の記者です。みなさん自身が犯罪をやっていないですか?

詐欺グループの男:
私は犯罪していない。私はマイクロソフトから話しています。東京のミナトシティー(港区)から話しています。お客様。私はマイクロソフトの社員です。これはマイクロソフトの仕事です

男は「犯罪はしていない」と断言。
そして、当初は外国から話しているとしていたが、東京の港区から話していると翻し、自分がマイクロソフトの社員であると主張し続けた。
もちろん、マイクロソフトはこうした行為を一切行っておらず、ホームページなどでサポート詐欺に対して注意するよう呼び掛けている。

記者:
マイクロソフトは、そんなやり方をしていないと言っているんですよね

詐欺グループの男:
信じられないから電話を切ったほうがいいと思います。お客様、電話切ってもいいですか。電話切ってください

電話を切るよう促す男に対し、記者は最後にこう問いかけた。

記者:
最後に教えてください。犯罪はしていないですか?心は痛みませんか?

詐欺グループの男:

男は記者の問いかけには答えず、ここで一方的に電話を切った。

警察によると、サポート詐欺の被害が多発する一因として、新型コロナウイルスの感染拡大による外出の自粛によって、自宅でインターネットをする機会が増えたことも考えられるという。
また、全国では新型コロナのワクチン接種をかたる不審な電話やメールも確認されていて、詐欺グループは社会の不安につけこみ、金をだまし取ろうとしてくる。

そんな特殊詐欺に対して、私たちはどんな対策をとればいいのか。

まずは相手にしないこと。
パソコンに警告画面が表示されても、記者が今回の取材で行ったように表示された電話番号にかけてはいけない。
また、携帯電話などに届いた不審なメッセージについても、記載されたアドレスを開いたりするのはやめること。

そして、迷った場合は相談を。
警察では、ダイヤル「#9110」で相談を受け付けているほか、最寄りの警察署でも対応してくれる。また警察以外にも、家族や知人など冷静な第三者に相談することも大切となる。

2020年の特殊詐欺被害(警察庁)
●全国 認知件数 13550件  被害額  約285億2000万円
●大分 認知件数       40件  被害額     約2億3000万円
(※被害額は百万円の位を四捨五入)

人の不安な気持ちにつけこんでくる特殊詐欺。
まずは一度立ち止まって冷静になり、被害にあわない行動をとるよう心がけたい。

(テレビ大分)

テレビ大分
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