「今年は重要な1年。国内では気候変動の有識者会議もキックオフし、日米首脳会談気候サミットも迫っている。国内での気候変動政策の前進の年に加えて、国際社会の野心の向上に日本が貢献したいと思う」

小泉進次郎環境相は2日の閣議後会見でこう語り、2030年の野心的な削減目標設定に強い意欲を示した。小泉氏に2050年脱炭素社会実現への覚悟とその道筋を聞いた。

小泉進次郎環境相「今年は気候変動政策にとって重要な1年」
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菅総理は「イデオロギーよりも合理性」だ

――前回インタビューしたのは2020年の7月でしたが、こんなに気候変動政策が進むとは正直言って当時想像できませんでした。

小泉氏:
これは私にとっても想像以上ですが、日本の重要課題に間違いなく気候変動が上がったことを多くの方に認識してもらいたいと思います。

だけどこのスピードで日本が最速だと思ったら大間違いです。残念ながら日本がカーボンニュートラルを宣言する前から既に動いていた国や地域がありますからそこを見誤ってはいけないし、このスピードが全速だと思っていたらそうした国や地域に追いつけません。

気候変動対策によって日本はいまよりも豊かになるし、次の世代に対する持続可能な産業と雇用、日本の自然や地球環境を守り、災害リスクも下げられる。だからなんとしてもやり切りたいです。

――菅総理は以前から気候変動政策に注目していたのですか?

小泉氏:
菅総理は「イデオロギーよりも合理性」という方だと私は見ています。気候変動政策が菅総理になってからぐっと進んだのは、日本の成長のために何が必要なのかを考えた帰結だと思います。総理が「もはや気候変動政策を強化することは、成長の足かせではなく成長のエンジンなんだ」と本当に腹の底から思って、就任直後の所信表明でカーボンニュートラルを宣言された。

もしあの時の決断がなかったら政府を挙げてカーボンプライシングを議論することもなかったし、いまのような強度で政策が積み上がることはなかったです。カーボンニュートラル宣言は産業革命の前と後くらいに大きいことだったと思います。

「気候変動政策強化は成長のエンジンだと総理は思っている」

人事で大事な政策を示すのが1つの菅流

――先月(3月)気候変動問題担当に任命されました。これで環境省を超えて動くことも可能になったと思いますがいかがですか。

小泉氏:
動きやすくなりましたね。まず対外的にわかりやすくなった。アメリカにジョン・ケリー気候変動問題担当大統領特使がいるように、世界各国には気候変動を担当する大臣が増えています。こうした中日本でも初めて気候変動担当が位置付けられました。

また菅総理は重要な政策には担当大臣を任命しています。河野大臣はワクチン担当、坂本大臣が孤独・孤立担当、デジタルは平井大臣で気候変動は私です。何を大事にして政策を進めていくのかを人事で見せるのは菅総理の一つのやり方だと思います。

――今国会では地球温暖化対策推進法(以下温対法)の改正が行われます。この改正で2050年までに脱炭素社会を実現する目標が明確にされますが、この法改正にどんな想いを持っていますか?

小泉氏:
これは一内閣の閣議決定ではなく法律です。つまり国際社会に対して日本の政策が揺るがないことを示し、政策に対する継続性と信頼性が間違いなく生まれます。

そしていま脱炭素は長期的な投資が呼び込めますから、2050年目標が明記されれば長期投資の予見性が高まる。これはすごい効果がありますね。

また改正のもう一つのポイントとして、企業にとっては排出データが開示されることになるので、排出抑制の努力を社会に知ってもらい投資を呼び込みやすくなります。ESG投資(※)の観点からもプラスだと思いますね。

(※)環境・社会・企業統治に配慮している企業を重視・選別して行なう投資

「温対法改正で日本の政策が揺るがないことを国際社会に示す」

スプーンだけでなくプラスチック全体を対象

――今回の国会でもう1つの目玉なのが、プラスチック資源循環促進法(以下プラスチック新法)案ですね。プラスチック使用量を削減し脱プラ社会を目指すものですが、プラスチックスプーンやフォークの有料化に国民の関心が集まっています。

小泉氏:
この法案のポイントはプラスチック製品の一部を対象にしているのではなくプラスチック全体を対象にしていることです。スプーンについて「そんなの全体から見れば1%の話だろう。なぜ大きなところをやらないんだ」という批判がよくあります。

日本では年間約1000万トンのプラスチック生産があって、そのうち排出、つまりゴミになるのは約900万トンです。そのうち使い捨てプラと呼ばれる容器包装が約400万トンで、その中にはペットボトル約60万トン、レジ袋約20万トンが含まれます。さらに使い捨てプラにはスプーンやフォークなどが約10万トンあります。

――「スプーンやフォークは1000万トンのうちの10万トンなのに、なぜそこを狙い撃ちするんだ」と批判されていますね。

小泉氏:
まあ賛否両論出ています。ネットではボコボコ、新聞は賛成ですがテレビは賛否両方ですね(笑)。ただ石炭火力のときも当初は批判されましたが、結果的に脱炭素に向けた政策が一気に加速しました。このプラスチック新法を始め、環境政策は、一部の産業界だけが取り組むべき問題ではなく、国民全体で考えて欲しいので、使い捨てスプーンのような身近なアイテムから注目してもらおうと例に挙げました。

「なぜスプーンが狙い撃ちされるんだ」という批判に対しては、答えは明確です。スプーン狙い撃ちではありません。プラスチック全部です。スプーンは一つの例で、プラスチック製品全部が対象だと、説明を理解を広げていきます。

「スプーン狙い撃ちではありません。プラスチック全部です」

「環境版トクホ」で経済の好循環を生み出す

――プラ新法では「環境版トクホ」という、政府が環境に配慮した商品を認定する制度も盛り込まれていますが、あまりそちらは伝わっていないようですね。

小泉氏:
これも痛し痒しですが、おそらくスプーンの話題が広がらなかったらプラスチック新法の存在さえも知られなかったと思います。ただ一方でこの法案の最大のポイントは“環境配慮設計”です。

環境に配慮した商品を国が認定をするかたちで、環境版トクホのように商品が社会に出回り、消費者の皆さんがより環境に優しい商品を選択できる環境を作る。結果として使い捨てプラスチックを減らし、代替素材に置き換わるように進めていく。新しい技術や製品が開発され、結果新たな産業・雇用が拡大し、サーキュラーエコノミーにつなげていくということです。

――我々の衣食住や移動などの脱炭素化ですが、太陽光パネルの住宅への設置義務付けも検討されていますか?

小泉氏:
3月に閣議決定された住生活基本計画には住宅の省エネ義務づけも施策に入りました。住宅でも「何年以降は新しい住宅に太陽光パネルを必ずつける」とか、「断熱性能は高い水準をクリアしなければいけない」など明確になりますね。これも2050年までのカーボンニュートラルの実現に向けてすごく大きいことだと思います。

「環境版トクホはサーキュラーエコノミーにつながる」

【執筆:フジテレビ 解説委員 鈴木款】
【カメラマン:山田大輔】