「今年は重要な1年。国内では気候変動の有識者会議もキックオフし、日米首脳会談気候サミットも迫っている。国内での気候変動政策の前進の年に加えて、国際社会の野心の向上に日本が貢献したいと思う」

小泉進次郎環境相は2日の閣議後会見でこう語り、2030年の野心的な削減目標設定に強い意欲を示した。小泉氏に2050年脱炭素社会実現への覚悟とその道筋を聞いた。

小泉進次郎環境相「国際社会の野心の向上に日本が貢献したい」
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再エネの主力電源化は政府の意思

――脱炭素のカギを握る電力エネルギーですが、電源構成の見直しが始まりました。いま2030年の再生可能エネルギーの目標比率が22%から24%ですね。再生可能エネルギーの引き上げについてどう考えていますか。

小泉氏:
倍増させたいと思います。これは以前より常に言っていますが、再エネの主力電源化というのは政府全体の統一的な意思です。私はそれを本気でやりたいと思うし、そのためにはこの10年で現状と比べてせめて倍に持っていかなければ、その意思が伝わらないと思います。その1つが環境省が進めているゼロドラ(※)、EVと再エネ電力をセットにした初の補助金です。

(※)ゼロカーボン・ドライブ。再生可能エネルギーによる電力を使ったEV(電気自動車)などに環境省が補助金を出す取り組み。先月26日から申請受付開始。

「再エネの主力電源化は政府の意思」

原子力依存を低減させ地熱を活用

――再エネの比率を高める分、火力を減らすことになると思いますが、一方の原子力についてはいまどういう考えですか。

小泉氏:
菅政権は明確で、第一に再エネ。とにかく再エネを増やし、主力電源化する。原子力を含めた他の電源は活用するけれど、原子力への依存度を可能な限り低減させる。

日本のエネルギー政策を気候変動政策という視点からみたとき、ポイントになるのは間違いなく再エネです。今年は日本が再エネを主力電源化する方向に明確に踏み出した年にしなければいけない。私はこれからも政府内で意見を言っていくし、環境省として出来る限りの再エネ導入を進めていきたいと思います。

――再エネはベースロード電源にはなりえないと言われていますが、これについてどう思いますか

小泉氏:
まず再エネの中でベースロード電源として期待されるのが地熱発電です。ここで誤解を解きたいのですが、地熱の多くは国立公園や国定公園の中にあるので環境省が開発させず遅れていると言われていますが、事実としては62件の案件が国立・国定公園で進んでいます。誤解を払拭させるため、いま環境省では地域の地熱に関わる業界、例えば温泉業界の皆さんの不安を解消し、秩序ある開発が加速するよう具体的にどういうことが出来るか議論をしているところです。

「ベースロード電源として期待されるのが地熱発電」

米中と気候変動問題でどう向き合うか?

――気候変動問題では世界各国との連携や世界に向けての情報発信も求められます。アメリカはバイデン政権になって、気候変動への取り組みが一気に加速しましたね。

小泉氏:
パリ協定から脱退を決めたトランプ政権から、パリ協定復帰を決めたバイデン政権へと明確な変化がありました。ただ日本で一部誤解されている可能性があるのは、トランプ政権下であっても50州のうちの30州以上はカーボンニュートラルの方向で動いていたのです。

日本でも政府がカーボンニュートラルを決める前から、多くの自治体が動いていました。ですから今後日米で自治体間の連携を進めていきたいと考えています。ケリー特使は「脱炭素協力を深めることで日米同盟を強化したい」という意思をもって共に歩める方だと思います。

――来月アメリカ主催で開かれる予定の気候変動サミットには中国も参加します。

小泉氏:
中国は世界最大の排出国ですから、中国の取り組みがパリ協定の目標達成に向けて不可欠な要素なのは間違いありません。ただ中国は2060年カーボンニュートラルとの目標を掲げていて、国際社会の2050年とは時間軸が違います。また中国は2030年までに排出をピークアウトさせるといっています。すでにピークアウトしている日本やイギリスの立場からすれば、国際社会が結束をしながら最大の排出国である中国に前向きな関与をさせることが重要になってくると思います。

「中国に前向きな関与をさせることが重要になる」

再エネ前提の社会づくりが我々の責務

――気候変動や環境対策は次の世代への我々の責任ですね。

小泉氏:
10年、20年後のマーケットで、いまよりガソリン車が売れることはありません。早く頭を切り替えなければ、結果的には次の世代にとって不利益のほうが大きくなるわけです。これからのビジネスの前提は再エネです。

トヨタ自動車の豊田章男社長が「再エネの導入が進まなければ100万人の雇用が失われかねない」と言ったように、もう再エネの課題を言っている場合ではなくて、いかに再エネを前提とした社会を作り、次の世代が公平でグローバルな競争環境でやっていけるような社会を作らなくては行けません。気候変動を担当する大臣として、出来る限り政策の強度を高めスピードを絶対に緩めないという想いですね。

「できる限り政策の強度を高めスピードを絶対に緩めない」

――ありがとうございました。


インタビューを終えようとしたとき、小泉氏は「最後に一言付け加えると」といってこんなことを語りだした。

「大きな産業構造の転換について『コロナで大変ないまなのか』という議論が時々あるんですけど、世界はコロナの中で一気に構造転換を進めようとしています。コロナが終わった後に脱炭素型の産業構造になった国と、構造変化に躊躇したり手を緩めた国の断絶は計り知れないものになりますね。構造転換できなかった国にはV字回復はないという危機感をもって、いま絶対に前に進めないといけないと思います」

コロナというピンチをチャンスにするかどうか、脱炭素社会に向けてこの国はまさに岐路に立っているのだ。

【執筆:フジテレビ 解説委員 鈴木款】
【カメラマン:山田大輔】