北朝鮮は3月25日、1年ぶりに弾道ミサイルを発射。

北朝鮮に自制を求めた韓国・文在寅大統領に金正恩総書記の妹・与正氏は「アメリカ産のオウム」と罵倒し、毒舌ぶりを見せた。事あるごとに飛び出してきた北朝鮮の強烈な悪口を読み解くと、そこには狙いも見えてくる。

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FNN記者のイチオシのネタを集めた「取材部 ネタプレ」。今回取り上げるのは、ソウル支局の熱海吉和記者が伝える「本当の悪口はもっとひどい?」。

オウムに老いぼれ…北朝鮮が各国首脳を罵倒するワケ

FNNソウル支局 熱海吉和記者:
先週、北朝鮮が2020年3月以来となる弾道ミサイルの発射を行いました。そして3月30日には、金正恩総書記の妹・与正氏が、ミサイル発射を受けて演説で自制を求めた、韓国の文在寅大統領に対して「非論理的で厚顔無恥」「アメリカ産のオウム」と悪口を吐いたのです。かなり過激な表現で罵倒したわけですが、こうした北朝鮮が発する乱暴でインパクトのある言い回しというのは、これまでもたくさんあったのです

FNNソウル支局 熱海吉和記者:
普段放送では使わない言葉も入っているんですが、今回は悪口を検証するためにあえてそのままの言葉で説明していきたいと思います。まずはこちら。2017年9月、トランプ前大統領の「ロケットマン」発言。これに対して金総書記は「老いぼれ狂人を必ず火で罰する!」と応酬したのです。この独特な表現はネット上で瞬く間に拡散して、大騒ぎになりました

FNNソウル支局 熱海吉和記者:
この毒舌なんですけれども、各国の首脳にも向けられています。2019年11月、北朝鮮の外務省大使が安倍晋三前首相に対して「極悪非道な背徳者」。他にも、韓国の李明博元大統領には「しかめっ面のネズミ」、朴槿恵前大統領には「老いぼれの雌犬」とかなり過激な表現ですよね

韓国・文大統領への悪口はネットスラングに

FNNソウル支局 熱海吉和記者:
さらに、南北統一をして経済成長を目指すと夢を語った文大統領には「ゆでた牛の頭も大空を見上げて大笑いする」と言い放ったのです。どういうことかと言いますと、北朝鮮ではお祝いごとや法事などの際に牛や豚の頭をお供えする文化があるんですが、この死んだ動物ですら笑ってしまうぐらい、くだらない内容だとばかにしたわけです。この悪口、反・文在寅の間ではネットスラングとして定着していまして、牛の頭も笑うと政権批判で使われるほどなのです

加藤綾子キャスター:
なんか、どれも独特な言い回しですね?

FNNソウル支局 熱海吉和記者:
北朝鮮では住民が日常生活でもっと乱暴な言い回しを使うという指摘もあるんです。北朝鮮に30年間住んでいた、元在日の脱北者・金柱聖さんにお話を聞いたんですけど、けんかの中でこんな表現を使うそうです。「目玉を引っこ抜いて卓球してやろうか!」ですとか「あばら骨の順序を入れ替えてやろうか!」。かなりひどい表現です。さらに子供をしつける際にも、「揚げ物にして闇市に売ってしまうぞ!」と親が子供に言うシーンもあると。かなり残酷な表現が使われているわけです。公式声明もそうなんですけど、住民の言葉もよくここまでひどい悪口を思いつくなと逆に感心するほどです

目的は政策を変えさせること…専門のエリートチームも存在

加藤綾子キャスター:
ちょっと恐ろしいですけどね。今のは日常生活での悪口ですけど、公式声明でのいわゆる悪口に狙いというのはあるんですか

FNNソウル支局 熱海吉和記者:
はい。長年、北朝鮮の情報機関に所属していた脱北者のお話なんですけど、まずこの談話自体を作っている、文章作成の専門のエリートチームがいると。その作られた文言は高度に計算しつくされていたものだというんです。罵詈雑言で心理的ダメージを相手に与えて混乱させて、相手の政策を北朝鮮の都合良く替えさせることが談話の狙いだと言うんです。

FNNソウル支局 熱海吉和記者:
実際、2020年6月、北朝鮮が韓国国民の税金で作られた南北連絡事務所を爆破した直後、与正氏は談話で韓国を「下水に落ちてじたばたしている」などの表現で痛烈にこきおろしました。言葉で追い打ちをかけたわけです。

FNNソウル支局 熱海吉和記者:
すると韓国は報復とは真逆の行動に出たのです。爆破のきっかけとなった、脱北者団体による北朝鮮の体制批判のビラ散布を法律で禁じたのです。この談話が影響したと言い切ることは難しいんですけれども、結果的に韓国政府の対応は北朝鮮にとって都合がいいものだったといえるのです。北朝鮮の悪口に必要以上に反応する必要はないと思うんですが、北朝鮮の戦略を知るためには、悪口の裏に隠された意図を読み取る必要があると思います

加藤綾子キャスター:
熱海さんありがとうございました。柳澤さん、外交での言葉にはさまざまな意味合いが含まれているので、どう読み解くかというところが大事なんですね?

ジャーナリスト 柳澤秀夫氏:
一義的には関心を持ってほしい、振り向いてほしいというシグナルだと思うんですよ。ですからそこをわれわれは深読みを見せればするほど、逆に言うと相手の手の内に乗せられてしまっている。思うつぼという部分も、警戒しなきゃいけないですよね

加藤綾子キャスター:
冷静に見なきゃいけないですね

ジャーナリスト 柳澤秀夫氏:
冷静に淡々と、客観的に評価することが必要です

(「イット!」4月1日放送)

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