災害の教訓などお伝えするシリーズ「いのちを守る」。今回は、2011年3月11日、東日本大震災の津波と火災に襲われた、宮城・石巻市の門脇小学校が残した教訓。
火の手が迫る中、避難してきた住民などと校舎を脱出した当時の教頭が、あのとき何が起きていたのか、初めて話してくれた。

門脇小学校 元教頭 佐藤裕一郎さん(67):
大きなものが迫ってくる時の、ものすごい緊張感を伝えられるのは、もしかしたら、あの時、その場にいた人間でしかないのかなと

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宮城・石巻市に住む佐藤裕一郎さん(67)。震災発生当時、門脇小学校で教頭を務めていた。
海と川に近い門脇小学校。すぐ裏手には標高40メートルの日和山がある。日頃から津波を想定し、通学路の坂道を通って日和山へ避難する訓練を行っていた。

「2011年3月11日午後2時46分 大地震発生」

門脇小学校 元教頭 佐藤裕一郎さん(67):
職員室で仕事をしていて大きな揺れが始まった。横揺れというか…校舎は大きくきしむというか。ここ、プールだったが、プール脇に子供たちは避難していた。雪が降っていて寒かった。本当に寒かった。まだ大きな余震は続いていたし、もう一度、校舎に入るわけにもいかないので、さて困ったなと

「午後2時49分 大地震警報発令」

門脇小学校 元教頭 佐藤裕一郎さん(67):
ここに防災無線があったが、それが鳴り始めた。サイレンが鳴ったということは「これは津波だ!」と思った。校長にその話をして『山に避難です』と話した

校庭にいた児童224人は、校長や教職員、迎えに来た保護者などと、日和山へ避難を開始した。しかし、佐藤さんは学校に残った。

門脇小学校 元教頭 佐藤裕一郎さん(67):
どんどん保護者が学校に入ってきますよね。「子供たちがいない」となれば、保護者たちが「どうしたんだろう!?」と思いますよね。ですから、連絡要員が必要だと思った

「午後3時半過ぎ 津波襲来」

門脇小学校 元教頭 佐藤裕一郎さん(67):
対応しているときに、午後3時半過ぎだったと思うが、「空が突然、鳴り始める」というと変な言い方だが、空全体に突然ザーッと音が聞こえ始めた。何かが近づいてくるような感じで、圧迫感を感じるような音。空全体から音が響いている。海の方を見た。そしたら、学校に向かって電柱が倒れてくる…白煙を上げて。それをちょうど、私、あの位置(体育館)から見えたんです

津波は大地震の約58分後に、地区の海岸線に到達。そのわずか2、3分後には、門脇小の校舎に達したとみられている。

門脇小学校 元教頭 佐藤裕一郎さん(67):
肉声で叫んだ。「津波だー!」と。ここだと、校舎しかありませんよね。「校舎に入れー!」と、何回か叫びました。津波が目の前に迫ってくるんだが。私は最後の方だったと思う。東の入口から校舎の中に入ったのは。その時、「ああ、駄目だな」と思った。そこから2階に上がったら、今度は爆発音が聞こえ始めた。何かわからなくて2階の東側の教室から校庭を見たら、燃えた屋根が学校に近づいてきた。あちらこちらから火の手が上がって

その時、校舎内には、30人から40人ほどがいたという。

門脇小学校 元教頭 佐藤裕一郎さん(67):
どこかから避難できないか、探し回っていた状況だった。ちょうど、この位置。ここ

寺田早輪子アナウンサー:
ここは元々、校舎だったところですよね?

校舎西側の廊下にあった手洗い場の窓の外から、佐藤さんは山側から助けに来た消防団員などに呼びかけられた。

門脇小学校 元教頭 佐藤裕一郎さん(67):
こっちで受け止めるから、ここを「とび越えてきてくれ!」と。だけど、けがをした人がいたし、赤ちゃんを連れた人もいた。建物の中央の方に行ったら、教壇を見つけた人がいた。教壇を使って避難する作業が始まっていた

門脇小学校 元教頭 佐藤裕一郎さん(67):
ここです。窓まで高さがありますよね?1メートルちょっと。だから廊下側に机を置いた。机と椅子。外側にも机を置いた

机と椅子を階段替わりにし、滑らないよう、とっさに上に毛布を敷いたという。

門脇小学校 元教頭 佐藤裕一郎さん(67):
ここから中にいる人たちを降ろした。ここが一番狭かったので、ここに教壇を架けて、ここから一人一人避難した。ただとにかく非常に焦って、緊張感でいっぱいだった

南浜・門脇地区では、死者・行方不明者が500人以上に上った。

門脇小学校 元教頭 佐藤裕一郎さん(67):
みんなが助け合わなければ助からなかった。何か一つ狂っちゃうと、間違っちゃうと、きっと、あの時と違った状況になっただろうと、結果になったと思う時がある

「今、思うことは…」

門脇小学校 元教頭 佐藤裕一郎さん(67):
宮城県、東北の人は繰り返し、災害を経験している。ここで生きていくには、ある種の覚悟をしなければいけない。負けてたまるか…

(仙台放送)

仙台放送
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