トランプ氏は出席するのか?
新しい年も明けて、20日には新大統領就任式が行われるが、トランプ大統領が出席するかどうかが今や最大の関心事だ。
通常就任式の日は、午前中に現職(この場合ならトランプ大統領)夫妻が次期大統領(バイデン)夫妻をホワイトハウスへ招き、談笑のあと共に議会へ向かう。
この記事の画像(7枚)就任式は議会議事堂西側の特設ステージで行われ、来賓の挨拶の後まず新副大統領が宣誓して就任し、次いで正午に新大統領が最高裁判事の前で宣誓し、就任演説を行う。その間に旧大統領はヘリコプターでワシントンを離れるという段取りになっている。
そこで今年の場合だが、大統領選が不正に行われたと今も主張しているトランプ大統領が、ホワイトハウスを明け渡すイベントをした上に、就任式まで付き合うかどうかに関心が集まっているのだ。
現職の大統領は次期大統領の就任式で果たす役割はなく、出席が義務付けられているわけでもない。過去にもジョン・アダムス(第2代)、ジョン・クィンシー・アダムス(第6代)アンドリュー・ジョンソン(第17代)の三人の大統領が、後任者の就任式をボイコットしている。
その一方で、今回同様に選挙結果が最高裁に持ち込まれるまで紛糾した2000年の大統領選で負けたアル・ゴア副大統領は、ブッシュ大統領の就任式に出席している。
トランプ大統領が選挙の敗北を認めないまま、バイデン夫妻をホワイトハウスにも迎えずに就任式前にヘリコプターで去ることも十分ありうる。
バイデン氏の宣誓時刻にトランプ氏は「2024出馬表明」か
そのヘリコプターはアンドリュース空軍基地に向かい、まだ大統領職にあるトランプ大統領はエアフォースワン(大統領専用機)に乗り換えてフロリダ州に行く。
そこでは大規模集会が開かれ、バイデン氏の宣誓の時間に合わせて2024年の大統領選への出馬を表明するという筋書きが考えられる。
その場合、トランプ支持のテレビ局はバイデン氏の就任式とトランプ氏のフロリダ州での集会を分離画面で中継することも考えられ、バイデン政権発足の盛り上がりを削ぎ、自らの次の選挙へ向けて気勢をあげることが計算できるかもしれない。
これとは別に、今年の就任式と関連のイベントは新型コロナウイルスの影響で前代未聞のバーチャルな形式になるという。出席者も限定し、恒例のペンシルバニア通りのパレードも縮小。途中新大統領夫妻が自動車を降り、歩いてホワイトハウスに向かうのも止める公算が高いという。
どうなる?「お別れの手紙」
そうした中でもう一つ関心を集めているのが、トランプ大統領がバイデン氏にparting letter(お別れの手紙)を残すかどうかということだ。これも公式な制度ではないが、退任する大統領は後任者に宛てた指針をオーバルオフィス(大統領執務室)の机の上に置いてゆくのが通例になっている。
1992年に激しい選挙戦を戦って敗れたジョージ・ブッシュ(父)氏は、後任のクリントン大統領に「あなたの成功は米国の成功だ。私はこれから声援を送り、支援する。グッドラック(幸運を祈る)。ジョージ」と書き残したのが有名だが、トランプはバイデン氏の成功を祈るだろうか?
「See you in 2024 (2024年の大統領選挙で会おうぜ)」と書くのではないかなどとワシントンでは噂されている。
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【執筆:ジャーナリスト 木村太郎】
【表紙デザイン:さいとうひさし】