タレントの彦摩呂さんが1年かけて石川県輪島市の白米千枚田で育てた有機栽培コシヒカリ「彦米」がついに完成した。田植え、草刈り、稲刈りと、地元の人々に支えられながら奮闘した1年。その結晶である新米を、金沢市内の「釜炊きごはん」の名店で味わう。地震からの復興への思いが詰まった一粒一粒に、彦摩呂さんは何を語るのか。1年間のプロジェクトを追った。
彦摩呂が輪島・千枚田で1年かけて育てた新米

金沢駅のすぐそばで待ち合わせた彦摩呂さん。そこに現れたのは、彦摩呂さんとこの1年間、共に米作りをしてきた石川テレビの稲垣真一アナウンサー。稲垣アナは、彦摩呂さんと輪島市白米千枚田で有機栽培のコシヒカリ、いわゆる「彦米」を育ててきた時の作業着姿で登場した。

「1年間どうもお疲れさまでした」と労をねぎらう稲垣アナ。2人は1年間の結晶である新米を最高の状態で味わうため、羽釜で炊いた美味しいご飯が食べられるという金沢市の「釜炊きごはん 銀シャリ」へと向かった。ついに「彦米」を実食できるとあって、彦摩呂さんは「この日が来ましたね。待ってました」と期待に胸を膨らませる。
「膝が痛い…」地元の愛耕会と二人三脚

地震から3年目を迎えた輪島市の白米千枚田。今年は復興が進み、去年の約2倍となる480枚の棚田で田植えが実施され、3年ぶりに棚田のオーナー制度も復活した。この復興への大きな一歩の中で、石川テレビの食のキャンペーン「HUBEAT」アンバサダーの彦摩呂さんが棚田のオーナーとなり、自らの米「彦米」を育てる企画「千枚田プロジェクト」がスタートした。

5月に行われた田植え。彦摩呂さんはわずか5株ほどを植えたところで足元がおぼつかなくなり、「あぶねえ」と声をあげて早々にリタイア。見かねた稲垣さんから「1回上がってください」と促される始末だった。その後は、地元の「白米千枚田愛耕会」のメンバーの力を借りながら、なんとか田植えを完了させたのだった。
初めての草刈り・稲刈り

汚名返上と意気込んで臨んだのは、8月の草刈り作業。田んぼの周りにはびこる雑草を、草刈り機を使って刈っていく。初めての作業だという彦摩呂さんは、機械の重さに「箸とお茶碗より重いの久々や」と冗談を飛ばしながらも、初めてとは思えない安定した手さばきで作業をこなした。

そして実りの秋。9月に行われた稲刈り。これも本格的に行うのは初めてだという彦摩呂さんは、見よう見まねで鎌を振るうが、ここでも途中で「しんどい」と離脱。再び白米千枚田愛耕会のメンバーに手伝ってもらいながら、収穫は着々と進んでいった。

多くの人の手を借り、彦摩呂さんはついに最後の稲を刈り終えた。「本当に愛おしい。この体験と、ここの土地の歴史と、この今までの悲しいことが、なんかもう希望に変わるようで、本当にうれしいです」と感無量の表情で語った。

食に携わる者として、植えた稲が自然の中でたくましく育ち、米になってくれたという経験は心に深く響いたという。「これをみんなにも知ってもらいたいよ、本当に」と、この貴重な体験と土地の歴史、そして復興への思いをかみしめる。
プロが教える「銀シャリ」の炊き方

今回「彦米」が炊き上がるのを待つ間に、「釜炊きごはん 銀シャリ」の上田一仁さんに美味しいお米の炊き方を尋ねた。「彦米」を一目見た上田さんは、「きれいな色ですし、粒もしっかりしてそうですね。心なしか透明度もあるように見えます」とその品質に期待を寄せる。

店で美味しいご飯を炊く秘訣を尋ねると、いくつかのポイントがあるという。まず、米のうまみと香りを損なわないよう、洗米は3回ほどの工程で手早く済ませる。そして最大のポイントは浸水時間。通常は1時間ほどのところ、この店ではたっぷりの水で2時間かけ、米にしっかりと水を吸わせる。

その後、ざるにあげて20分かけて念入りに水切りをし、最後に洗米した米と同じ重さの水を加えて炊き上げる。この工程を経ることで、毎回安定した美味しい仕上がりになるそうだ。

羽釜でふっくらと炊き上がった「彦米」が、ついに彦摩呂さんの目の前に運ばれてきた。蓋を開けると、湯気とともに、つやつやと輝く白米が現れる。「うわー、いいお米の香りが立ち込める」と感動し、しゃもじで十字に切ると、さらに艶が増した。

茶碗によそわれたご飯を一口食べると、彦摩呂さんは「このお米の粒感と、甘み、あと香り。うわ、おいしい。甘みが強いですよ」と、その味を絶賛。自ら関わった米だからこその感慨、そして支えてくれた人々への感謝、地震からの復興への思いが詰まった一粒一粒を、万感の思いでかみしめた。彦摩呂さんは「このお米、悲しい出来事があって、みんなの希望になってさ、やっぱり復興しようと思ってやってきた思いがあるじゃない。それがお米、1粒1粒の中に思いが入っていて、本当に感動した」と語った。

店では人気の「銀シャリ定食」(1,680円)も提供されており、能登豚の角煮や能登鶏の卵黄醤油漬けなど、ご飯が進むおかずが並ぶ。

この千枚田の米は、輪島市の「道の駅ポケットパーク千枚田」で販売されている(11月は火・水曜定休以外)。彦摩呂さんは最後に「東京でも能登のことを伝えてください」と「彦米」を託され、復興への応援を続けることを誓った。

(石川テレビ・10月26日放送)
