石川県輪島市を襲った度重なる災害。2024年の能登半島地震による海底隆起、そして追い打ちをかけた豪雨による土砂の堆積は、海の生き物の姿を消し、地元の海女に「海が死んだ」とまで言わしめた。しかし、豊かな海は生きていた。絶望の淵から約2年、輪島の海女漁が復活。石川県のブランド食材「百万石の極み」にも認定される極上の海女採りのサザエとアワビが、再び水揚げされている。苦難を乗り越えて届けられる“宝の海で採れた宝物”の味とは。グルメリポーターの彦摩呂さんがその力強い生命力に迫った。
「海が死んだ」絶望から2年…能登半島地震乗り越え復活した輪島の宝物

石川テレビの加藤葵アナウンサーと共に登場したのは、石川テレビのHUBEATアンバサダー、彦摩呂さんだ。8月18日に放送された石川テレビ『石川さんパレット』のコーナー「ごちそうのありか」は夏休み特別編として、なんと石川テレビ本社前から生中継。目の前にはバーベキューコンロが用意された。

加藤アナウンサーが「今回紹介する食材はこちら。輪島のサザエとアワビです」と海の幸を披露すると、彦摩呂さんは「うわあ、なんと豪華だ」と目を輝かせた。

このサザエとアワビは、輪島の海女さんが素潜りで採ったもので、石川県が認定するブランド食材「百万石の極み」にも選ばれている逸品だ。彦摩呂さんも「百万石の極みとしては多分、初めていただく」と、その味への期待に胸を膨らませていた。

「海が死んだ」…度重なる災害との闘い
輪島伝統の海女漁は、その歴史を少なくとも江戸時代まで遡るといわれ、2018年には国の重要無形民俗文化財にも指定されるなど、地域を支える“なりわい”の一つとして受け継がれてきた。しかし、その伝統は度重なる自然災害によって危機に瀕した。


2024年、元日の能登半島地震で、輪島港は海底が隆起。船が出航できず、漁の再開が見通せない状況に陥った。海女の一人は当時を「びっくりしすぎて。ショックだった」と振り返る。

さらに追い打ちをかけたのが、地震からわずか8カ月あまりで発生した奥能登豪雨だ。輪島近海の海底には土砂が堆積し、生き物の姿は見当たらなくなってしまった。「地震後もひどいと思ったけど、やっぱ今回は本当にひどすぎて」。当時、海の状態を目の当たりにした海女からは「海が死んだ」という絶望的な言葉も漏れた。

宝の海は生きていた 2年ぶりの漁再開
もう漁はできないかもしれない。そんな不安がよぎる中、一筋の光が差し込む。海底調査の結果、輪島港から約50キロ離れた舳倉島周辺の海は、地震や豪雨の影響が少ないことが判明したのだ。そして去年7月、ついに2年ぶりとなるサザエとアワビの漁が再開された。

「待ちに待ってた、サザエ漁なんで。うれしかったです」。海女たちは喜びをかみしめ、再び海へ向かう。漁が行われるのは、潮の流れが速い厳しい海域だ。海女たちは酸素ボンベなどの器具を一切使わず、水深10メートル以上を素潜りし、受け継がれてきた技で次々と海の幸を採っていく。

「宝の海で採れた宝物」海女たちの想い
出航から約7時間半後、漁を終えた船が輪島港に戻ってきた。水揚げされた籠の中には、採れ立てのサザエとアワビがぎっしりと詰まっている。資源保護のため、サザエは1日の漁で1人30キロまでという漁獲制限が設けられているが、この日は制限いっぱいまで採れたという。

海女の一人は「年々ちょっと減ってってるけど、まあ、制限しながらしてるんで、なんとか」と、海の恵みに感謝し、資源を守りながら漁を続けていることを語る。

地元の人にとっても、この海の幸は特別な存在だ。地震後はここでしか買えないと直売所を訪れた客は「輪島のサザエがね、食べられるからうれしいですね」と笑顔を見せる。輪島のアワビやサザエはどんな存在かと問われた海女は、力強くこう答えた。「宝の海で採れた宝物です」。

彦摩呂も唸る!「サザエの脱衣場や~」
海女たちの想いが詰まったサザエとアワビが、香ばしい香りを立て始める。輪島の海女によると、舳倉島付近は潮の流れが速いため、サザエは流されないようトゲが長くなるのが特徴だという。また、速い潮の影響で身のしまりがよく、歯ごたえも抜群だそうだ。

炭火で焼き上がったサザエに、能登の醤油をたらす。熱々の殻を手に取った彦摩呂さんは、竹串でくるりと身を取り出し、「うわあ。サザエの脱衣場。殻を脱ぎましたよ」とおなじみのユニークなフレーズで表現。

一口食べると、その表情が驚きに変わった。「うわあ、歯ごたえ。うまい。すご。うまっ。おいしい」。熱々ながらも、その格別な食感と味わいに感動を隠せない様子だった。

アワビは“しゃもじ”で豪快に「海女さん、ありがとう」
続いてはアワビだ。バター醤油で焼かれ、グツグツと音を立てている。ここで加藤アナウンサーから明かされたのが、輪島の海女さん流の食べ方。なんと、殻から身を外すのに使うのは“しゃもじ”だという。彦摩呂さんがしゃもじを殻と身の間に差し込むと、驚くほどきれいに身が剥がれた。

肉厚のアワビにかぶりついた彦摩呂さんは「柔らかい。うわあ。火が通ってて肉厚。磯の香りが、うわあ」と、その豊かな風味と食感に酔いしれた。そして、万感の想いを込めてこう叫んだ。「海女さん、ありがとう」。その言葉には、度重なる困難を乗り越え、この“宝物”を届けてくれた海女たちへの深い感謝と敬意が込められていた。




苦難乗り越えた味 スタジオも絶賛
彦摩呂さんたちが味わったサザエとアワビは、スタジオにも届けられた。実食したキャスター陣からは「すごい。やっぱ香りがものすごいですね。食感がとっても良くて。噛めば噛むほど、やっぱりこの香りがじわっと出てきますね」「おいしい。うまみがもう大変。ワイルドかつ、なんか繊細な」と絶賛の声が相次いだ。

彦摩呂さんは「やっぱり大変なことをね、海の環境があって、あれを乗り越えて海女さんが採ってくれたから、この味がね」と、その味の背景にある物語に想いを馳せた。輪島のサザエとアワビは、単なる食材ではない。それは、自然の猛威に屈しなかった海女たちの不屈の精神と、豊かな海の生命力の結晶だ。

輪島の海女さんたちによるサザエとアワビの漁は、9月末まで続く。旬の味覚を、ぜひ味わってみてはいかがだろうか。

(石川テレビ・8月18日放送)
