秋の味覚の王様、マツタケの収穫が能登で最盛期を迎えている。おととしは豊作、去年は地震の影響もあり凶作だったが、今年は適度な雨に恵まれ、豊作への期待が高まる。地元で約40年マツタケを収穫するベテラン・中塚耕励さんに同行し、マツタケ狩りを体験。急な斜面を登り、素人目には「全くわからん」中、次々と巨大なマツタケを発見していく。採れたての味は格別だ。一方で、中塚さんは能登の松林とマツタケ山の未来に思いを馳せる。
能登マツタケが豊作の兆し 40年のベテランと探す秋の味覚
石川県能登地方のある場所で、秋の味覚の王様として知られるマツタケが収穫のピークを迎えようとしている。今年も立派なマツタケが顔を出し始め、豊かな実りの秋を予感させている。

この日、マツタケ狩りを案内してくれたのは、地元で約40年にわたりマツタケを収穫してきたベテラン、中塚耕励さんだ。長年の経験に裏打ちされた目で山の状態を見極める中塚さんは、今年の状況について「(マツタケは)ポチポチッと出て、10月19、20日頃から30日過ぎまでがピークでないかなと」と話す。これからまさに本格的なシーズンが始まるのだ。

早速、中塚さんと共にマツタケが自生するという山の奥深くへと足を踏み入れる。道なき道を進み、息が切れるほどの急な斜面をひたすら登っていく。予想通りの厳しい道のりだ。
能登のマツタケは、近年、その収穫量に大きな波があった。おととしは豊作に恵まれたものの、去年は不作を通り越して“凶作”だったという。中塚さんによると、マツタケの生育にはある程度の湿り気が必要不可欠だ。その点、今年は適度な雨が降ったため、豊作となる可能性を秘めている。
「10日過ぎから出ましたので、若干、今は走りですけど出ておりますので見つけてください」と中塚さんは期待を込める。凶作の年を乗り越え、再び山の恵みに出会えるかもしれない。そんな思いを胸に、マツタケが生えるといわれるアカマツの根本を探し始めた。
「全くわからん」はずが次々と発見

期待に胸を膨らませて辺りを見渡すものの、素人目には落ち葉と土しか見えない。「全くわからん、全くわからん」と途方に暮れていると、中塚さんが「おぉ、やっぱりあるわ!」「あそこにほら…」と指をさす。しかし、それでもどこにあるのか分からない。

中塚さんが指し示す先を凝視すると、ついに土から顔をのぞかせる巨大なマツタケの姿が目に飛び込んできた。「あーーっ、あった!これですよね?やったー!」。思わず歓声が上がる。
中塚さんから収穫の仕方を教わる。「人差し指と親指ではさんで左右にキュッキュッキュッと…」。アドバイス通りにそっと揺らすと、ずしりと重いマツタケが手の中に収まった。これを皮切りに、周辺で次々とマツタケを発見。わずか30分ほどで4本もの立派なマツタケを収穫することができた。
採れたてを堪能!至福の焼きマツタケ

収穫の喜びを味わった後は、最高の贅沢が待っていた。採れたばかりのマツタケを、豪快に山盛りの焼きマツタケでいただくのだ。

炭火でじっくりと焼かれたマツタケからは、上品で芳醇な香りが立ち上る。石川テレビの稲垣真一アナウンサーが「この香りを届けられないのが本当に残念!」とこぼすほど、その場は至福の香りに包まれた。焼きあがったマツタケを、中塚さんおすすめの砂糖醤油に絡めて一口。

「うまーい!コリコリというよりゴリンゴリンの歯ごたえですね。ひと噛みひと噛みごとに伝わるマツタケの香り、そして旨み」。その表情からは、言葉にならないほどの感動が伝わってくる。「いやー、幸せですわ…最高です」。これぞ、山に入った者だけが味わえる特権だろう。
「命のある限り」山を守るベテランの決意

至福の味を堪能する一方で、中塚さんは能登のマツタケ山が抱える課題について口を開いた。
「能登の松林は、昭和初めから20年代頃にかけて生えてきた松、すなわち『炭焼き』をしていた時分に出てきた松がほとんどなものですから、老木になりまして、だんだんマツタケが出なくなった」。

さらに、地域の人口減少と高齢化も深刻な問題だという。「能登は人口が少子化で減りましてお年寄りばかりですから、マツタケ山もいつまで続くものですかね」。
こうした厳しい現実の中で、山を守り、能登のマツタケを守っていくためにどうすべきか。中塚さんは静かに、しかし力強く決意を語る。

「私は命のある限りマツタケ山を管理しながら皆さんに能登のマツタケを賞味して頂ければと思っております」。
40年のベテランが見つめる先には、マツタケの豊かな香りと共に、未来へと繋いでいくべき故郷の山の姿があった。

(石川テレビ・10月16日放送)
