カラスなどの野生動物に荒らされたごみステーションを見かけたことはないだろうか。頭を悩ませる人も多いカラス対策だが、鹿児島市の企業がネットを使わない新たなごみステーションを開発した。ごみ出しのストレスを減らしてくれるという、その仕組みを取材した。
街で聞いた「ごみ出し」の悩み
まずは街の声を聞いた。ごみ出しの時にストレスに感じることは何か。そう尋ねると、次のような声が返ってきた。
「雨などいろいろなものを含んでいる。(ネットを触るのに)少し抵抗がある」
「網をかぶせていないところは、カラスがつついて散らしている」
「網だけかけているところで、たまにカラスがつついている。汚いなと思う」
聞こえてきたのは、ごみステーションがカラスに荒らされることへの嘆きである。また、ごみステーションのネットに触れること自体にストレスを感じる人もいるようだ。

何も触れずにごみが出せる、平川町のごみステーション
そんな悩みを解決するというごみステーションが、鹿児島市平川町にある。午前7時すぎ、ごみ出しの様子を見てみると、住民たちは何も触れずにスムーズにごみを出していた。

それもそのはず、このごみステーションは普段見かけるものとは違い、ネットで覆われていない。代わりにワイヤーのようなもので入り口の一部が覆われた、独特な形をしている。これこそが、カラス対策を施した新たなごみステーションである。

この地区ではかつて、カラスにごみを荒らされる被害に頭を抱えていた。住民は「ここにカラスがいたんですよ」と振り返る。町内会長の森山裕二さんも、カラスに悩まされた日々をこう語る。
「忙しい中でゴミを出すと慌ててカラスが狙いやすい状況になっている。町内会長の立場としても悩んでいるところは対応したい」
しかし、2026年7月にこのごみステーションを導入して以降、この地区ではカラス被害に頭を悩ませることはなくなったという。

きっかけは社長の妻の「何気ない一言」
夢のようなごみステーションを開発したのは、鹿児島市の企業である。話を聞かせてくれたのは、自治体や企業向けの研修を企画するフライウォークの西倫弘代表だ。金属加工を手がけるウェルディングワークスの當田光美社長の発案のもと、開発に取り組んだ。

きっかけは、當田社長の妻の何気ない一言だったそうだ。西代表は次のように明かす。
「(當田社長の)奥様が『雨の日にゴミを捨てに行った日に手が汚れて嫌だな』と。網のない仕組みを構築してみよう」
ただ、ごみステーションのネットは、そもそもカラス対策で設置されているものである。ネットを外すなら、別のカラス対策が欠かせない。そこで當田社長は、かねて親交のあった西代表に声をかけ、開発をスタートした。
「カラスの賢さを痛感」 約7カ月の格闘
最初に行ったのは、カラスに中身をとられにくい構造を調べる実験だ。グラウンドに試作品を置き、カラスが中身を取り出せるかどうかを確かめた。

実験を繰り返す中で、カラスの賢さを痛感したという。西代表は、試作品の一部を示しながら語る。
「ここの幅も計算している。最初はもうちょっと短かった。カラスが止まったときに爪をこの下に挟み込むことをし始めた。ここに挟み込むことによって安定して中の餌を食べている。安定した足場と安全なルートを探しながら餌を食べに来ている」

カラスに中身をとられまいと格闘すること約7カ月。5つの試作品を経て、ことし4月に完成したのが今回のごみステーションである。
外枠に飛び乗る習性を逆手に
では、ネットを使わずにどうやってカラスから中身を守っているのか。実験では、カラスがごみをあさるとき、まず外枠に飛び乗る習性があることがわかった。そこで工夫されたのが、ローラーである。
「ローラーをつけているのでカラスも『飛び込みたいな』と思っても不安定な状態になる」と西代表は説明する。

住民も実感「気持ちがいい」
試行錯誤の末にたどり着いたごみステーションは、日々の生活で利用する住民も効果を実感している。
「以前はカラスとかがいてゴミ捨てに来てみたらゴミが散らかったりしていたが今はない」
「気持ちがいいですね。このあたりは清潔になった」
ごみステーションが変わってよかったかと尋ねると、「よかった」との答えが返ってきた。

ユニークな商品名にも注目
このごみステーションには、ユニークな名前もついている。大きさごとに商品名が異なり、それぞれ架空の会社「カラス取締株式会社」の肩書きと名前がつけられている。

家族の何気ない一言をきっかけに完成したごみステーションは、多くの人が「ごみ出し」で感じる日々のストレスを解消してくれるかもしれない。導入についての相談など詳しくは、フライウォークのホームページを確認してほしい。

