秋の行楽シーズン、山や草むらに入る際に注意が必要なのが、マダニ。9月に入り、福井県内でマダニ媒介感染症の患者が確認された。日本紅斑熱と診断された70代女性は、マダニに刺された自覚すらなく、診断がつくまでに約1週間を要した。致死率10〜30%とされる重症熱性血小板減少症候群(SFTS)の報告数も全国的に増加傾向にある。その特徴や対策を医師が解説する。
「ちょっと変やな」から診断まで1週間
9月4日、今シーズンで県内で初めて、マダニが媒介する感染症「日本紅斑熱」と診断された70代女性。発症当初の感覚をこう振り返る。「ちょっと変やな、みたいな…で、だんだん夕方になってきたら苦しいな、と」。初めはわずかな違和感だったため、そのまま仕事を続けていると、体調に変化が表れたという。
女性は8月、山間にある寺を訪れていた。その際にマダニに刺されたとみられているが、本人に刺された自覚はなく、診断がつくまでに1週間ほどかかった。
日本紅斑熱は、病原体を持ったマダニに刺されることで発症するマダニ媒介感染症の一つだ。発熱や全身に広がる発疹、刺された部分に残るかさぶた状の跡が主な特徴で、国内では年間500人前後の患者が報告されている。
マダニは生活圏の近くにも
そもそもマダニとは、マダニ科に含まれるダニの総称だ。国内には50種類以上が生息しており、フタトゲチマダニ・オオトゲチマダニ・タカサゴチマダニ・ヒゲナガチマダニ・キチマダニなどがその代表格である。
体長は5ミリ前後と、家庭でよく見られるダニより大きい。山ややぶの中だけでなく、草むらなど、私たちの生活圏の近くにも生息している。
マダニのうち、病原体を持つ個体に刺されたときに発症する恐れがあるのが、マダニ媒介感染症である。福井大学医学部附属病院の酒巻一平医師によると「ダニに吸着されたときに、そのダニが感染する微生物を持っていれば感染することになる」という。
ただし、山ややぶに入った人だけが感染するわけではない。冒頭の女性のように、寺の境内を訪れただけで感染したとみられるケースもある。
致死率10〜30%「SFTS」の脅威
マダニ媒介感染症の中でも特に注意が必要なのが、SFTS(重症熱性血小板減少症候群)だ。国内では2013年に初めて患者が確認され、去年は200人近い患者が報告されている。
発熱のほか、嘔吐や下痢などの消化器症状が現れ、重症化することもある。致死率は10%から30%とされており、決して軽視できない感染症だ。
県内ではこれまでSFTSの患者は嶺南で確認されていたが、去年初めて、嶺北でも確認された。酒巻医師はその背景に、地球温暖化の影響があると指摘する。「全国的にも本来は西に多い。温かいところにダニが生息するが、北にだんだんその報告される場所が移ってきている」
また、病気そのものの認知が広まり、診断されるケースが増えたことも報告数増加の一因とみられる。日本紅斑熱・SFTSともに患者の報告数は全国的に増加傾向にある。
刺されたら無理に引き抜かず、皮膚科へ
マダニ媒介感染症の予防で最も重要なのは、肌を露出しないことだ。
草むらや山に入るときは長袖・長ズボンを着用し、ズボンの裾を靴下の中に入れるなどしてマダニが入り込む隙間をなくすことが基本となる。
マダニに効果のある虫よけスプレーの使用も有効だ。
皮膚にマダニが付いているのを見つけた場合は、無理に引き抜かず、皮膚科などの医療機関で撮ってもらうことが重要。マダニが取れたあとも、しばらくは体調の変化に注意し、症状が表れた場合はすぐに医療機関を受診する必要がある。
治療については、日本紅斑熱には抗菌薬が、SFTSには抗ウイルス薬が用いられる。
酒巻医師は「ダニ媒介感染症の潜伏期は2週間程度で、その間に発熱や湿疹、消化器症状等がないかを気をつけてもらい、そのような症状があれば医療機関の受診を」と注意を促している。

