「食べることが怖い」「コントロールできない」そんな悩みを抱え、食べられなくなってしまう摂食症。心と体の両面に深刻な影響を及ぼすこの病気は近年、若い世代での発症が増加している。そこで福井大学病院は2026年6月、「10代摂食症外来」を新たに設置。「チームで病気に立ち向かっていく」姿勢を広く伝えるためにも、専門的な診療体制を整えた。
「痩せすぎて命を落とすこともある病気」
摂食症とは、普段よりも食べられなくなるなどの症状が現れる病気。その影響について福井大学病院の眞田陸医師は「痩せすぎて体力がなくなってしまったり、心臓の動きや内臓の動きがゆっくりになって、時には命を落としてしまうような病気でもある」と語る。
栄養不足が全身に波及し、最悪の場合は生命に関わる事態を招くこともあるのだ。
発症の原因は人によってさまざまで、明確には分かっていない。だからこそ、周囲の理解と早期発見が重要となる。
成長期に摂食症を発症した場合、その影響は特に深刻だ。栄養不足によって身長の伸びが止まったり、骨がもろくなって骨折しやすくなったり、。女性の場合は月経が止まることもある。
10代は学業や部活動など社会生活においても成長していく世代であるため、眞田医師は「大人に向けて成長していく機会を失ってしまう」と指摘。「病気の期間が長くなることで、その子らしい10代の生活を失ってしまいやすい」と警鐘を鳴らす。
「本人も親も悪くない」病気への誤解
摂食症を疑うべきサインはいくつかある。最も分かりやすいのは食事量の変化で、ダイエットとはいえ、行き過ぎている様子が見られる場合は注意が必要だ。
もう一つ、眞田医師が重視するのが「成長曲線」だ。小中学校の身体測定で記録されるグラフのことで、これが停滞したり減少したりしているときは「もしかしたら摂食症かもしれないと、早期に疑う視点がより重要」と強調する。
摂食症をめぐっては、周囲の誤解も課題のひとつだ。医師は「病気の影響で食べられなくなっているだけなので、傍から見るとただ食べていない、本人が悪いんじゃないか、食べさせていない親が悪いんじゃないかと勘違いされがちだが、決してそうではない」と訴える。
こうした誤解を解き、患者と家族が孤立しないよう支えることも、治療において欠かせない視点だ。
福井大学病院が6月に設置した「10代摂食症外来」では、複数の医師が連携しながら診療にあたる体制を整えている。摂食症の治療は食べることが基本となるが、食べることへの恐怖と向き合うのは、患者本人にとっても支える家族にとっても容易ではない。だからこそ、専門的なチームによるサポートが必要とされる。
「1人で抱え込まず、気軽に相談を」
医師はこう呼びかける。「1人で戦う必要は全くない。かなり大きな敵なので、みんなでその病気に立ち向かっていこう、というチームで戦う姿勢が大事な病気」だと。
心と体の両面からのアプローチが必要な摂食症。発症に気づいたとき、あるいは「もしかしたら」と感じたとき、1人で抱え込まずに専門家へ相談することが、回復への重要な一歩となる。

