慢性的なかゆみや赤い湿疹(しっしん)などを引き起こすアトピー性皮膚炎。特に乾燥する冬に悪化することが多く、年代を問わず治療を続けている人が多い。ただ近年、効果が高い治療薬も開発され、自らもアトピー性皮膚炎がある専門医の一人は、「完治も夢ではない」と話す。

アトピー性皮膚炎の原因

アトピーとは、ギリシャ語で“分類する場所がない病気”を意味する。慢性的に強いかゆみなどが生じ、子どもから大人まで幅広い年代で症状が出る。

街の人からも「皮膚が赤くなってぷつぷつができたり、切れたり。小さいころはかゆみを我慢できずにかきむしってしまい、切れたりとか結構つらい思いをしたことはあります」とアトピー性皮膚炎の症状について、苦労した経験が聞かれた。

福井市の石黒皮膚科クリニック院長の石黒和守医師に話を聞いた。石黒医師自身も、3歳からアトピー性皮膚炎がある。

石黒皮膚科クリニック院長の石黒和守医師
石黒皮膚科クリニック院長の石黒和守医師
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石黒皮膚科クリニック・石黒和守院長:
原因は今までわかっていなかったが、最近は「かゆみ」「皮膚のバリア障害」「アレルギー炎症」の3つが相互に作用し、アトピーができることがわかってきた。

大人になるにつれ症状が上半身に集中する
大人になるにつれ症状が上半身に集中する

アトピー性皮膚炎は、年代によって湿疹が現れる場所が異なる。乳児は頭や顔から始まり、次第に手足に下りてくる。大人になるにつれて症状が上半身に集中。肌が乾燥したり、肌をかき続けることで皮膚が分厚くなることがある。

石黒皮膚科クリニック・石黒和守院長:
子どもだと顔から赤い紅斑で始まり、耳切れするようになる。大人だと顔の赤みがなかなか治らない状態になる。乳児期で治るタイプもいるが、私みたいに3歳から60歳まで治らない場合もある

アトピー性皮膚炎は後天的な病気とされているが、患者の約3割に先天的な皮膚バリア機能障害があることがわかった。家族に花粉症や喘息(ぜんそく)といったアレルギー疾患がある場合も、アトピー性皮膚炎になりやすい傾向がある。

治りにくいという認識があり、県内の人たちも「大人でもアトピーになっている人がいるので治りにくいのかな」、「満月様顔貌(がんぼう)など薬の副作用が多いイメージ」と答える。

アトピー性皮膚炎 治療のポイント

ただ、この5年間で、新薬が次々と開発された。ノンステロイドの外用薬や強力な内服薬、注射薬など、石黒医師は「完治も夢ではないすばらしい時代になった」と話す。

治療の基本はステロイド入りの薬品を肌に塗る「外用療法」になる。症状や状態、年齢などによって適切な薬を選ぶことが重要だ。

軟膏をたっぷりと塗ることで薬が患部に行き届く
軟膏をたっぷりと塗ることで薬が患部に行き届く

薬を塗るときのポイントは「湿疹が現れている場所にたっぷり塗る」こと。そうすることで、患部に薬が行き届き、さらに軟膏(なんこう)が皮膚を守る役割も果たしてくれる。

以前は避けるべきとされてきた汗も、石黒医師によると、汗を出す「発汗」は症状の軽快につながるという。サウナで汗をかき、すぐに冷たいシャワーで流せば皮膚の状態はよくなる可能性があると話す。

「保湿」も重要で、朝昼晩の1日3回のスキンケアが理想だという。保湿剤が入った入浴剤を使ったり、風呂上がりだけでも保湿剤を塗ると効果があるとされる。

石黒皮膚科クリニック・石黒和守院長:
寒くなると乾燥するので、保湿がすごく大事になる。冬といっても汗はかくので、汗を洗い流すことも忘れないようにしてほしい

(福井テレビ)

福井テレビ
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