キャンプやハイキングなどで野山に出掛ける機会も増える季節になった。ただ、夏に活動のピークを迎えるマダニに注意する必要がある。刺されると最悪、死に至るケースも。刺されないための予防法と、もし刺された場合の対処について、専門家に聞いた。

野生動物の活動範囲が広がり…

マダニは本来、野山で暮らす野生動物の血を吸って生きている。

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しかし近年、野生動物の活動範囲が人の住んでいるエリアまで広がったことで、マダニが人間に接触する機会が増加。人を刺して、病原体をうつすリスクが増えている。

福井大学病院・感染制御部の岩﨑博道教授は、マダニに刺された患者が増えていると話す。

岩﨑博道教授:
仕事で草むらに行く人は高齢者が多いため、刺されるのは高齢者が多い傾向にある。子どもでも、その場所に行けば刺されるリスクがある

危険な感染症に注意

マダニに刺されても、すべてが病気を発症する訳ではない。感染するのは、マダニから病原体が体内に入った場合だ。

危険な感染症として、高熱と同時に手足に赤い発疹が現れる「日本紅斑熱」がある。さらに致死率が最大30%ともいわれる「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」がある。ただSFTSのウイルスを保有しているマダニは、多くても3~4%とされる。

岩﨑博道教授:
日本紅斑熱の場合、正しく診断がつけば、抗菌薬でほとんど治すことができる。ただ、手遅れになると命を落とす場合もある。SFTSの治療法は抗ウイルス薬として何が適切か、まだはっきり決まったものはない。コロナウイルスでも使われていたファビピラビルという薬が有効ではないかと、厚生労働省が緊急認可を考えている

発症すると、刺されてから2週間くらいの間に症状が出る。マダニに刺された後、発熱や体に発疹ができた場合、皮膚科の病院に相談するとよいという。マダニは一週間ほどかけてゆっくり血液を吸い上げ、2mmの体長は、血を吸うことで10倍に膨れ上がる。

岩﨑博道教授:
注意しないといけないのは、口先の部分が皮膚に残らないようにしないといけない。無理やり抜くと皮膚に残り、強い炎症を起こす。また病原体を持っていた場合、そこから感染が広がるリスクがある。専門医に相談して取ってもらった方が安全

刺されないための予防法

マダニに刺されないためには、予防法が重要となる。

岩﨑博道教授:
肌の露出を少なくするため、長袖と長ズボンを着用する。それが難しい場合は、虫よけスプレーを使って、しっかりと肌に刷り込むのがいい

マダニを研究して30年以上という福井大学医学部医動物学領域・矢野泰弘博士。研究のため自らマダニの採取を行っている“マダニハンター”でもある矢野博士にその生態を聞いた。

矢野泰弘博士:
草の先端か葉の裏にマダニがひそんでいる。ジャンプはしないが、動物の身体が触れると毛に絡みつく。足の先に吸盤がある。かぎ爪があって落ちないようにしっかりくっつく

ハイキングや登山で休憩する場所では「日当たりのいいところに座るようにする」など注意が必要だと指摘する。

さらには「荷物も草むらに置くとカバンにくっ付き家に持ち帰る恐れがある」とのことで、荷物は草むらに置かないようにするとよい。

(福井テレビ)

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