福井県内でも毎年220人ほどが診断を受けるとされる「悪性リンパ腫」。がんの中でも薬の開発が最も進んでいる分野であり、種類によってはステージ3や4でも10年後生存率が80%を超えるという。県済生会病院の中山俊医師は「最も進行した状態でも治癒や長期生存が期待できる」とする。その仕組みや初期症状、受診の目安を聞いた。
「血液のがん」リンパ球の悪性腫瘍
悪性リンパ腫は、血液中のリンパ球から発生する悪性の腫瘍。リンパ球は白血球の一種で、体内に侵入した病原体を攻撃するなど、免疫機能の中核を担う細胞である。
そのリンパ球がなぜ悪性腫瘍に変わるのか。
中山医師は「多くのがんと同様に、原因は特定されていない」としたうえで、「高齢者に多い傾向がある」と述べる。
リンパ球は血管やリンパ管を通じて体中を巡り、さまざまな臓器に出入りしている。そのため悪性リンパ腫は、リンパ管をつなぐリンパ節だけでなく、臓器でも発生するのが特徴だ。
「臓器で発生した場合は初期症状が出ない」
気を付けたいのが、症状の現れ方が発生場所によって大きく異なるという点だ。
中山医師によれば、リンパ節から発生した場合は首、脇の下、股関節などにしこりとして触れることがある一方、臓器など体の内部から発生した場合には、初期症状は見られない。
病状が進行すると、発熱、だるさ、寝汗といった全身症状が現れ、さらに腫瘍が発生した臓器に応じた症状が出てくる。例えば胃で腫瘍ができた場合は、胃の痛みなどの症状が現れるという。
早期から転移しやすいため手術は行わない
悪性リンパ腫が一般的ながんと大きく異なるのが、治療方針だ。
悪性リンパ腫は早い段階から血管やリンパ管を通じて転移しやすいという性質がある。腫瘍を外科的に取り除くだけでは再発しやすいため、基本的にステージにかかわらず手術は行わない。治療の中心は薬剤療法となる。

悪性リンパ腫は、悪性腫瘍の中でも特に薬の開発が進んでいる分野だ。
注目される治療法の一つが「分子標的薬」である。従来の抗がん剤が腫瘍細胞だけでなく正常な細胞も攻撃してしまうのに対し、分子標的薬は腫瘍細胞が持つ特徴を識別し、正常な細胞への攻撃を抑えながら治療できる点が特長だ。

また、正常なリンパ球を活性化させて腫瘍細胞を攻撃させる「免疫療法」も選択肢の一つとなる。
10年後生存率が80%超え
こうした治療法によって、体中に広がった腫瘍が消え、再発しなかったケースも非常に多く見られるという。

治療薬の進歩により、種類によってはステージ3や4でも10年後生存率が80%を超えるとされており、治癒や長期生存が大いに期待できる状況となっている。
受診について中山医師は「悪性リンパ腫に特徴的な症状はないので、症状に応じた診療科を受診しご相談ください」と呼びかける。しこりがあれば皮膚科、発熱があれば内科など、症状に応じた科を受診し、早めに原因を特定することが重要だ。

