「令和の米騒動」から一転、いま米の価格が急落している。食欲の秋を前に店頭へ並び始めた新米が、2025年産の古米よりも安いという奇妙な逆転現象が起きているのだ。背景には深刻な「コメ余り」があり、消費者は恩恵を受ける一方で、農家や業者への影響を心配する声も上がっている。
5キロで1300円以上の値下がり
農林水産省が発表するスーパーの平均販売価格によると、2026年1月時点では5キロあたり4416円だった米が、最新のデータでは3112円にまで下落している。わずか数か月で1300円以上もの値下がりだ。

鹿児島市下荒田にある二之宮米穀店では、8月中旬から新米が店頭に並び始めた。その価格は5キロで2700円から2900円ほど。ところが、すぐ隣に並ぶ2025年産の米は3200円となっており、新米の方が安いという価格の逆転現象が生じていた。
街で買い物客に話を聞くと、「だいぶ落ち着いたのでありがたい」「新米、食べました。おいしかったです。安いのはありがたいけど農家さんのことを考えると…」といった声が聞かれた。価格の下落を喜びながらも、生産者への影響を案じる複雑な気持ちが垣間見える。
なぜ新米の方が安いのか
この逆転現象の原因は、深刻な「コメ余り」にある。
政府による備蓄米の放出に加え、2025年は米が豊作で供給が需要を大きく上回った。その結果、2025年産の米を消費しきれないまま新米のシーズンを迎えることになってしまった。

二之宮米穀店の二之宮行宣さんは状況をこう説明する。「在庫が膨れ上がった今の状態で新米が出てきた」。古米の在庫が積み上がっているところへ新米が加わったことで、需給バランスが大きく崩れたかたちだ。
業者への影響も深刻だ。二之宮さんは「過剰にある在庫を早く売らなければならない。業者によっては赤字が出ているところも相当あるのでは」と話す。消費者にとっての「安い米」が、流通の現場では苦しい経営を意味しているのである。

政府が2025年産米の買い戻しを決定
事態を重く見た政府は動き出した。鈴木憲和農水大臣は「政府備蓄米の買い戻し手続きを開始いたします」と表明し、2025年産のコメを備蓄米として買い戻すことを正式に決定した。

まずは2025年に放出した59万トン分のうち、21万トン分を買い戻す方針だ。市場に出回るコメの量を減らすことで、価格の下支えを図る狙いがある。
二之宮さんは「何とか農家を助けてもらい、市場の方は市場原理を働かせて、うまい具合にできないだろうか」と、政府の対応に期待を寄せつつも、農家と市場の双方が納得できる着地点を望む気持ちを語った。
生産者・消費者・売り手、それぞれの事情
米の価格下落は、立場によって受け止め方がまったく異なる。
消費者にとっては、家計の負担が軽くなるうれしいニュースだ。子どもがいる家庭では「お米が大好き」という声も聞かれ、食卓に欠かせない主食が手ごろな価格で買えることは歓迎される。

一方、生産者や流通業者にとっては厳しい現実がある。丹精込めて育てた米が安値で売られ、業者の中には赤字に陥るところも出ているという。「令和の米騒動」で高騰した記憶がまだ新しいだけに、今度は一転して値崩れが続く状況は、農家にとって先行きの不安につながりかねない。
政府の買い戻し措置がどこまで効果を発揮するか、そして生産者・消費者・売り手の三者がそれぞれ納得できる市場の姿が実現するのか。食欲の秋を迎えた今、米市場の動向から目が離せない状況が続いている。
【動画で見る▶なぜ?新米が去年の米より安い 深刻な「コメ余り」政府は備蓄米を買い戻し】

