女子バレーアジア選手権最終日の30日、日本は3位決定戦でイランにストレート勝ちを収めた。
今大会でのロサンゼルス五輪出場権を獲得することはできなかったが、中国・天津で10日間に及ぶ戦いを終えた選手たちの目に浮かんだのは、すべてを終えた安堵ではなく、目指す目標を叶えられずに終えた悔し涙だった。
「これが自分たちの現状だと痛感した」
予選ラウンドで対戦してきた国と同じく、世界ランキングだけを見れば6位の日本に対し、イランは38位(試合前時点)。
「勝って当然」と見られるのが大半ではあるが、国際大会の出場機会が限られるイランがアジアでベスト4に入り、最終日まで試合ができる喜びを爆発させながら思い切ってプレーするのに対し、日本は前日の準決勝でタイに敗れている。
今季最大のターゲットと掲げてきた目標が潰えた現実を受け入れる間もないまま、翌日には3位決定戦に臨まなければならない。
勝てば来年のワールドカップ(旧世界選手権)出場が決まる。ここで五輪出場権を獲得していないチームの上位3つに入れば、その時点でロサンゼルス五輪出場が決まるため、3位決定戦は消化試合ではなく、まぎれもなく次につながる試合だ。

敗れた悔しさも一度切り替えて、最終戦に臨もう。支えてくれた人たちや、応援してくれる人たちのためにも最後はこれまでやってきたことをすべて発揮するような試合で締めくくろう。
頭ではわかっていた。だが現実はなかなか容易ではない。そう言うのは、リオデジャネイロ、東京と二度の五輪に出場したベテランのミドルブロッカー、島村春世だ。
「昨日の試合を終えてから、夜にミーティングをして『今回はオリンピックの切符を取ることはできなかったけれどワールドカップ(旧世界選手権)で獲れるチャンスがあるから、次の試合はそこに向かうスタートだから最後の一戦も全員で戦っていこう』と話をして臨みました。でも、実際は切り替えられないですよね。(試合当日の)午前中もミーティングをしたけど、雰囲気は上がらなかった。理想を言えば、25対15とか、大差をつけた試合をしなければいけなかったと思います。でも、それは難しかったし、これが今の自分たちの現状なんだな、と痛感しました」
笑顔のない銅メダル 涙を浮かべた石川
第2セットこそイランを16点に抑えたが、第1セットは21点、第3セットはデュースの末に26対24で日本が勝利。イランが25点目を取ったかと思われたところからのチャレンジで判定が覆った結果の逆転だった。

張りつめていた気持ちが準決勝の敗戦で切れ、本来のパフォーマンスとは程遠い日本に対し、高いトスを伸びやかに打ち、身体能力を活かしたブロックだけでなく後方で待つレシーブ力も高く、ボールを簡単に落とさない。世界ランキングだけで格下と判断するのはあまりに安易だと言わざるを得ないほど、イランは近年で力をつけていることを目の当たりにした。

なかなか流れに乗ることができず、難しい状況ではあったが「相手も試合前から声を出して、勢いよくきた。その中で自分たちもこの試合を勝つことと、次に繋がる試合にするために、もう一度昨日の敗戦を修正して臨んだ」という和田のスパイクが立て続けに決まり、準決勝では途中交代した佐藤淑乃も「スパイクを(相手ブロックに当てて)飛ばすことを意識した」という攻撃でチームを牽引。苦しみながらもそれぞれが次へ向け、この試合をスタート、とばかりに臨む姿を見せた。

試合後にはコートでセレモニーが行われ、選手たちの胸に銅メダルがかけられたが、誰1人、笑顔はない。
主将の石川真佑もミックスゾーンで涙を浮かべた。
「嬉しさよりも悔しさ。ここにいないメンバーや、いろんな人に助けてもらったので、最後は優勝して終わりたかった、という思いでした」
求められるのは勝負強さとタフさ
目指した目標に届かなかった悔しさ。今はその感情が先行するが、アジアで勝つことができなかったという現実は少なくない課題も残した。

欧州勢のように高さやパワーを武器に戦うチームばかりでなく、フィジカルで劣るアジアの国々は独特のリズムやスタイルで戦うチームも多い。
中国、タイといったネーションズリーグにも出場する強豪国だけでなく、ベスト4に進出したイランを筆頭に、個の能力や組織力も上がっているチームは多く、これから先を見据えた時にどんな相手に対しても勝たなければならない試合で勝ち切る勝負強さとタフさが求められるのは明確だ。

フェルハト・アクバシュ監督も「いいプレーができずに優勝を手にできなかった。目標を達成できず、すべての日本のファンの方々に謝りたい」と述べると共に、これからへの決意も口にした。

「精神的にもっと強くならないといけない。戦術を実行する力も上げないといけない。このチームを信じています」 ロサンゼルス五輪、そしてその先の日本バレーがさらに強く、たくましくなるために。ここからが新たなスタートだ。

