バレーボールアジア選手権準決勝、女子日本代表は前回王者で世界ランキング17位のタイと対戦した。予選ラウンドから準々決勝まですべてストレート勝ちを収め4連勝、勢いをそのままに決勝進出を目指したが、タイの猛攻を防ぎきれず1対3で敗れた。日本は今大会でのロサンゼルス五輪出場権の獲得はならなかった。
鴫原が流れを変えるも届かず
対戦成績では大きく勝ち越している相手ではあるが、第1セットからサーブで攻め、スピードのあるコンビバレーだけでなくアタッカーが高い打点からパワフルに打ち切るスパイクで攻める相手に対し、序盤から苦戦を強いられた。
攻撃だけでなく、守備でも日本のアタッカー陣に対して完璧なシフトを敷いた。特にこの4試合でトータルして高い得点を叩き出してきたポイントゲッターの和田由紀子に対しては、ブロックは常に複数の枚数がつき、空いたコースにはレシーバーが待つ。ラリーになっても日本が得点を得ることができず、和田は「前半になかなか決められず、自分も強気になり切れずに守りながら攻めてしまった」と悔やんだ。
第1セットを落とし、第2セットは沈んだ流れを変えるべく、フェルハト・アクバシュ監督はスタートから宮部藍梨、栄絵里香を起用。「まずは真ん中(からの攻撃)を活かすことを意識した。バタバタするシーンが多かったので、チームを落ち着かせながら勢いを出すために気迫をこめてプレーしたいという思いで入った」というベテランセッターの栄だが、タイの勢いは止まらず、2セットを連取された。
後がない苦しい状況となったが、第3セットからスタートで起用された鴫原ひなたが奮闘。ネーションズリーグではリリーフサーバーなどワンポイントでの出場に留まったが、負けられない大一番、劣勢で投入された状況で「ディフェンスだけでなく攻撃でも貢献できる選手になりたかった」という鴫原が前衛から立て続けにスパイクを決め、25対20。このセットを奪取したが、第4セットはタイのブロックに捕まり20対25。

今季の日本代表がスタートした時から最大のターゲットに掲げてきたアジア選手権での準決勝敗退という現実に、選手たちは呆然と立ち尽くし、ミックスゾーンでは涙が止まらなかった。
相手の攻撃に「ストレスがかかった」
相性がいいと言っても決して過言ではない相手に、なぜ大一番で敗れたのか。

まず大前提として、フェルハト・アクバシュ監督が「タイが素晴らしく耐えきれなかった」と述べたように、タイの出来は素晴らしかった。多彩な攻撃を武器とするコンビバレーを防ぐべく、日本は第1セットのスタートから関菜々巳のサーブで崩す、狙い通りの展開に持ち込んだが、タイはレシーブが崩れてもアタッカーに対して高さのあるトスを上げ、体勢を整えたアタッカーが十分な助走から高い打点で日本のブロックに対しても臆することなく打ち、コースを抜いたかと思えば、ブロックに当てて飛ばす。
佐藤淑乃が「相手の16番(ピンピチャヤ・コクラム)にブロックを使われて決められることが多かったので、ストレスがかかってしまってメンタル的にも不安定になってしまった」と言うように、相手ブロックを利用するなど、決め方を工夫することで日本にダメージを与えた。

どちらもディフェンスのいいチームであり、両者の対戦は長いラリーが続く。勝利する試合では、日本が石川や和田、佐藤の攻撃で勝負所を制し、流れをつかんできたが、この日の試合ではタイの攻撃が長いラリーを制することが多く見られたのに対し、日本はスパイクミスやコンビミスも目立った。
悔しさを力に
完全燃焼には程遠い内容での敗戦。だからこそ、悔いが残る。
セッターの関は「勝ちたい、勝ちたいという思いが前に出すぎてしまって、直接失点にしてしまった。私自身もバタバタしてしまって、ただいいトスを上げればいい場面で上げ急いでトスがぶれてしまったり、自分たちが自分たちをコントロールできていない部分が大きかった」と声を詰まらせ、和田も「プレッシャーのかかるシーンでこれまで勝ってきた相手に対して自分たちから崩れて負けてしまうのはまだまだ強いチームになりきれてない証拠。立て直して、この試合を取りきれなかったのが自分自身としても悔しい」と涙をこぼした。
ロサンゼルス五輪出場権獲得という大きな目標を果たすことはできなかったが、最終日の30日はイランとの3位決定戦に臨む。世界ランキング37位、過去8度の対戦はすべて日本が勝利している相手だが、ブロックやスパイクの力をつけ、地元中国との二度の対戦でも僅差まで追い上げる勢いを持ったチームであることに加え、日本代表はモチベーションを保つ難しさもある。だがそれでも最後の試合に向けて、石川はこう言った。
「なかなかうまく切り替えられない選手もいると思うんですけど、その中でも勝ち切らないといけない試合だと思うので、今までやってきたことをしっかり出すことを意識して臨みたいです」
日本代表の最終戦、ワールドカップ(旧世界選手権)出場権をかけた3位決定戦は30日に行われる。
【執筆:フリーランスライター 田中夕子】

