畜産県・鹿児島が誇る牛肉ブランドへの信頼を大きく揺るがした事件が、ついに刑事事件へと発展した。鹿児島県指宿市の畜産加工会社・水迫畜産をめぐる牛肉の産地偽装問題で、元取締役の水迫政輝容疑者(55)が8月18日、食品表示法違反と詐欺の疑いで逮捕された。記者会見の場で「偽装ではない」と明言していた人物が、なぜ約4か月後に逮捕されるに至ったのか。これまでの経緯を振り返る。

農水省の勧告から始まった「5か月間」

問題が表面化したのは2026年3月のことだ。農林水産省が水迫畜産に対して勧告を行い、少なくとも2023年から翌年にかけて、県外産の牛肉を鹿児島県産と表示するなどの不正表示が行われていたと指摘した。

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その1か月後の2026年4月、水迫畜産は記者会見を開いた。今回逮捕された水迫政輝容疑者は当時、事業部長として登壇し、「九州農政局の調査で『意図して行ったものではない』という文言をもらっている」と述べ、データ入力の打ち間違いなど単純な「ミス」だったと偽装を否定した。記者から「偽装ではない?」と問われると、「はい」と明確に答えた。

水迫畜産の記者会見(2026年4月)
水迫畜産の記者会見(2026年4月)

しかし、その2週間後に事態は大きく動く。警察は意図的な偽装があったとみて、水迫畜産の複数の関係先で家宅捜索を実施。仕入れに関する書類などの証拠品を押収するとともに、関係者から事情聴取を行うなど強制捜査に乗り出したのだ。

「1人で担っていた」――逮捕の決め手

警察が逮捕に踏み切った判断の根拠として挙げるのは、水迫容疑者の業務上の立場だ。水迫容疑者は事件当時、加工場を取り仕切り、肉の仕入れや在庫の管理、商品で使う肉の指示まで1人で担っていたとみられている。

容疑の内容は具体的だ。2023年9月、他県産の牛肉を鹿児島県産と偽装して県内の企業に納品した疑い、そして2023年10月には産地を偽装した商品の代金など約145万円を事業者からだまし取った疑いが持たれている。今回の偽装が行われた牛肉は120パック、約60キロにのぼるとみられている。

押収した書類などの証拠品と関係者の供述を積み重ねた結果、警察は「故意に偽装した疑いが強い」と判断し、家宅捜索から約4か月後となる8月18日、逮捕に踏み切った。警察は今回の事件を、水迫容疑者の単独犯行とみている。

「確認不足が原因」と容疑を否認

逮捕後も水迫容疑者は「確認不足が原因で、意図して偽装したわけではない」と容疑を否認している。記者会見での発言と一貫した立場を崩していない。

しかし警察は、余罪の追及も視野に入れて捜査を進める方針だ。他の事業者への不正表示が行われていなかったか、また水迫容疑者以外に偽装に関わった人物がいないかについても、引き続き調べを進めるという。

畜産王国・鹿児島の牛肉ブランドへの信頼回復には、事件の全容解明が不可欠だ。捜査の行方が注目される。

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